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初めて握ったおむすびと、約40年後の私
「……」
幼い女の子が、あんなにも複雑な表情を浮かべるだろうか。って顔を、当時の私はしていただろう。
小学二年生。初めておむすびを握ってみたのだ。
帰国子女の私は、あまりおむすびに接する機会がなく、小学生になるまで、母の握るおむすびをあまり食べてこなかった。
帰国すると、祖母や母がおむすびをにぎる頻度が割と高い。横で見て、「これなら私もできそう!」と前のめりになった。
教わりながら握ってみる。
「熱い!」
と騒ぎながら、言われたようにするのだけど、三角にならない。
どうやって軽やかにクルクル回転させてるの? 何で手にそんなにくっつかないの? どうやったらボロボロ崩れないの?
ねえ、なんでママは三角にできるの!!!
ちょっとイライラしながら頑張ってみた。今度こそ。
今度こそ三角にするぞ。
何度も挑戦するも、出来上がったおにぎりは、ほとんどが三角どころか形として成されていない。
でっ。でも。初めて一人で作ってみたのだ。幼いながらも気持ちを立て直そうとする。
厳しいけど私には甘い祖父が、そのカタマリを見て言った。
「おっ。かせみちゃんが作ったの?」
「ウン! これとこれとこれが、かせみが作ったの!」
無理矢理元気を出してみる。いや説明しなくても、どれが私の握ったものか、見てすぐわかる。
「どれどれ」
祖父がその一つを掴みほおばる。
「ウン。美味しいよ」
ニコニコして言ってくれた。
「良かった」と言ったものの、私はあどけないはずの小学二年生のものとは思えない、複雑な表情を浮かべていたと思う。
「……。あんまり三角にならない……」
独り言のようにぼそぼそ言うと、
「ん? 初めてだから良いんじゃないか? 口に入れたら一緒だよ。美味しい」
祖母も母も気を使って、美味しい美味しいと言ってくれた。
そうだろう。口に入れたら一緒だ。おむすびなんて、言われた通りにすれば、そんなにまずくはならないってわかっている。美味しいと言ってくれるのはお世辞であったとしても嬉しい。みんなが気を使ってくれているのも感じる。でもこんな形のはずでは。もっとうまく握れるようになりたいなあ。
つい先日、ふと思い出したのだ。
私が20歳の頃、祖父は「おむすびなんて、人の握ったものじゃないか。直接手で触ったものなんか気持ち悪くて、食べたくないよ」と言っていたなあって。当時は、え~おじいちゃん潔癖過ぎ~って気持ちがささーっと引いた。
でも祖父は、初めて私が握ったおむすびを美味しいと言って食べてくれたのだった。
昨年、こんな記事を出していた。
あれ??
私、いつの間にこんなにおにぎり作るの上手になったんだろう。
お~いし~い!!
こんなに握り具合が絶妙?? よくほろほろと崩れるなんて言うけど、まさにそんな。しっかりと握れているのに、ふわっとしている。
って書いてある。誰だって数、握れば、上手になっていくのだろう。
そう言えば息子の幼少期、「お母さんの出す料理で何が好き?」と聞いたら、「バナナ」と言われてハートブレイクだった。ハートブレイクから立ち直ったしばらく後に聞いてみたら、今度は「おにぎり」と言ってくれた。まだ料理とは言えないけど、とりあえずバナナよりはと、ちょっと嬉しかった。
高校生になった今、「母さんのおむすび、どれが美味しい?」と聞いてみた。
「梅干しかなあ? まあ梅干し自体が好きだからね! うへへ」
うーん。梅干しのおかげ……。
まいっかあ。
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ガチ参加ばかりだと疲弊するため、なるべく参加しない私だけど、今回あまりにユル優しい企画なのでありがたくて、参加してみました。
ハスつかさんは、おむすび1000日挑戦中。
20年近く前の私が妊娠中、さとなお(佐藤尚之)さんの本に刺激されて、夫と香川のうどんめぐりを決行した。そのさとなおさんが近年、重度のアニサキス・アレルギーを発症し、少しずつ克服できたら良いなと、まずは1000日を目処に少しずつ克服できないかと闘っておられる。それに伴おうと、ハスつかさんの1000日おむすび挑戦中なのだ。
いつも読みやすくてほっこりな記事をありがとうございます。企画もほっこりで、気軽に参加できました。
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