何故腕が上がりづらいのか
40になったら人によっては40肩になると聞いたけど、私はならなかった。
だから50肩にもならないはずだ。
と勝手に思っていた。周りでも聞いたことないし。
なのに。なった。
元々、肩こりも腰痛も首コリもひどかった。
自律神経の調整も下手で、メニエール症状も出がち。
今年50になる。
更年期症状だって、けっこうひどくて体調も悪い。
50肩になる要素はたくさんあったじゃないか。どうしてならないと思っていたのだろう。
ならないだろうって勝手に思い込んでいたから、50肩がどんなものなのか知らなかった。
考えたこともなかった。
「肩がある日、上がらなくなるんですよねえ~」って自虐気味に半笑いな人たちを見ることはあったけど。
だけど。
へえ。
上がらなくなるんだー。
ってアホみたいにニコニコ聞いていただけだった。
ほんとアホみたいに。
アホみたいに聞いてたから、「何故上がらなくなるのか」なんて考えたこともなかった。
腕が上がらなくなるのは、激痛が走るからだ。
しかも「50肩」って言ってるのに、首や肩はそれほど痛みを感じない。
一番痛いのは、上腕。三角筋から上腕二頭筋と呼ばれている辺り。
ひねるのが特に辛い。
例えば、運転席にいて、助手席のカバンに手を伸ばすと痛い。
後部座席に置いた物を取ろうとすると、こわばった激痛が走って取れない。無理すると、しばらくうずくまり、痛みにもだえ、孤独感と闘う。
あれっ? 腕が上がらないんじゃなかったの? こんな動作が辛いの?
と驚いて、色々試してみた。
腕を伸ばしたまま、前からバンザイしてみる。
できる。
腕を直角にして挙げてみる。
できる。
頭の後ろに手を組んでみる。
できる。
そのまま反ろうとする。
激痛!!
できない!!
つまり、頭の後ろに手を組んで、芝生にひっくり返って空を見上げる「青春やわあ」ポーズみたいのができない。
コタツに座ったまま手を前に伸ばす。
できる。
その姿勢のままテレビの画面を動かす。
痛い!
背中がかゆくなって左側をかくために、右手を前から回してかこうとする。
痛い。上腕から肘回りにかけてこわばって、ちゃんとかけない。
不意に思いついて、もう古くなり始めた「ストレッチャーズ」のマネをしてみる。
……。ちょっと痛い。後ろに引いた方の腕が痛い。
ジャングルポケット斎藤でもできるはずの、あれだけの動きなのに。
前で両手を揃える。
できる。
後ろで両手を揃える。
できる。
動きついでに思いついたから「へんなおじさん」の前半をやってみる。
せっかくだから「へんなおじさん」の後半もやってみる。
両手をグルグルする。
ついでだから「へんなおじさんだからへんなおじさん」て歌ってみる。
腰もくねくねしてみる。
もう関係なくなってきている。
ここまで来たのだからわかるだろうけど、痛くない。
終盤に至るまでの、ただの完璧な「へんなおじさんの振付」が出来上がっただけだった。
我に返って検証を続ける。壁に、肘から下の腕をひっかけて前のめりになってみる。
激痛! できない!!
要するに、腕の下部分を曲げて後ろにやり、力が入ると上腕がこわばって激痛が走るようだ。肘回りもこわばって痛い。右手も左手も。
母に話したら、「えー私はヴァイオリンやってたから痛くなったと思ってたけど、なんでかせみが……パソコンとかで同じ姿勢してるからじゃないの?」と言われてしまった。なので動かせる範囲でストレッチをして、積極的に肩や肩甲骨を動かすようにしている。
痛いのは、腕でも、正式名称は「肩関節周囲炎」らしいから、やっぱり肩なんだ。
ていうか!
お母さん、痛かったんだ!! 知らなかったよ。
完全に治るかどうかはわからないけれど、少しずつ良くなっていくものらしい。
運転席から後部座席の物を取れるようになりたい。
コートに袖を当たり前に通したい。
背中から出たブラウスの裾をズボンにサッと入れたい。
早く治れ~!