タオルが大好きな種族を知っていますか
夫と知り合って一緒に生活するようになると、すぐ気になったのは、タオルの存在。
枕に巻いて寝る。
「枕カバーつけてるのに? なんで?」
と聞いたけど、特に理由がないので笑ってしまった。
すぐに思い出した出来事がある。
中学二年生の当時、仲良くしていた一人の友人が「私の宝物を今度見せるね」と言ってきた。
「枕カバーの一部やねんけどね。枕ちゃん。て言うねん」
宝物だから、名前が付いているんだな。へーどんな物だろー。と軽い気持ちで楽しみにしていたけど、彼女が持ってきたそれは、事前情報以上に薄黒く汚れていた。「赤ちゃんの時から使って今もそばに置いてるから、もう汚いねん」と恥ずかしそうに言う彼女の本気を感じた。
彼女が可愛くて、大笑いしつつ、「絶対に内緒」を守り抜いた。
夫がタオル使っていると知って、別の友人に「枕カバー以外にタオルって巻く?」と聞いてみた。すると当時、割と付き合いの長い友人が「わかる! 今は使ってないけど」と初めて教えてくれた話。
寝る時にタオルが欠かせず、ずっと使っていたら、ある時小さくなっていると気付いた。
お母さんに聞くと「アラ。それだけ使えば小さくなってくるのよきっと! だってあんなに使ったんだもの」と言うらしい。
それからタオルは少しずつ小さくなっていき、ある日、とうとうなくなってしまったそうだ。
何とかタオルから卒業してほしかった親心を感じて、また笑った。
でも夫は「なんてかわいそうな!!」と衝撃を受けていた(笑ってもいたけど)。
そして生まれてきた息子が泣き止まないある日。夫の子供なんだしと、ふとよぎって、近くにあったガーゼを持たせてみた。
すると、息子が泣き止もうとしている。タオルを握りしめ、自分の顔にパタパタあてているのだ。どうやらそうすることで慰められている様子。
必ず毎回泣き止むわけではなかったけど、布をあてがうのは時に有効だった。もう完全に、スヌーピーで言えばライナスなのだ。
大好き過ぎて、何でもない時でも布をくわえて遊んでいた。最初は喉をつまらせないかとても心配したけど、どうやら自分で調整していて、えづくこともない。口から布を生やしているかのように布と息子は一体化していた。そして時々その布の端っこを持って、顔にパタパタあててみている。「うむ。なるほど。ちょっとイライラして自分を慰めているんだな」。かんしゃく持ちの息子が、慎重に遊びながらパタパタする様子は、なんともいじらしかった。もちろん泣く時は何をやったって大号泣なのだけど。
大学のお世話になった先生に、そんな息子を見せに行った時。先生は、タオルを持つ息子を見て「安心タオルがあるのね」と、ニッコリした。
安心タオル!
なるほど。ピッタリの名前があるものだ。先生の周りにもその種族がいるのだな。或いは先生もそうなのか。
ウチでは違った呼び名があるのだけど、もっと人間臭い呼び方で、ちょっと明かすのははばかられる。「安心タオル」だと、外でも口に出せる。
息子は、高校生の今でもタオル大好きだ。
今日も夫と並んでテレビを観ながら、タオルを首にかけて端っこを持ち、それぞれの楽しみ方でタオルをもてあそんでいる。いや厳密には二人ともまだ帰ってきてないけどね。
#エッセイ #タオル #布 #安心タオル #ライナス #種族
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。