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恥ずかしい気持ちを思い起こさせた二つの出来事
中年になって、色々な感情から解放され、自由に感じられる。恥ずかしさも減ってしまった。とかさんざん書いている。でもどこを隠そう、というナイツ塙のボケが好きなのですが、何を隠そう、私は相当な恥ずかしがり。40後半にもなって、ついつい「えへへ」が顔を出してしまう。ボーカルレッスンの直後以外は、基本的に声も小さい。笑い声は大きいけど。
あくまでも私なりに、なのだ。私なりに、厚かましくなり、会話を交わせるようになったというだけで。それでも充分楽しいことです。そんなで自己主張できるのかと聞かれると、時と場合による。当たり前ですね。あと外国に行くとスイッチを変える。態度を変えざるを得ない。
基本、恥ずかしがりだけど段々その感覚が鈍っていた私が、この前、連日恥ずかしいことがあった。
***
お財布の中を常にスッキリさせたくて、小銭をため込んでいる。だいたい半年くらい経つと入れている物がいっぱいになる。銀行に入れ物ごと持って行って入金してもらう。2万円程度なのだけど、0だと思っているところにそのくらい入るとちょっとだけ得した気分だ。
2万円分の小銭って、結構な重さ。駐車場から銀行の中に持って入るだけでまあまあ大変。それを「重い~~!!」って顔して運ぶのが大金持っているようでいやだ。額が少なくたって、ちまちまと貯めたものなのだから、大事にしたい。そのため、涼しい顔をして銀行に向かう。
その日は郵便局にも用事があり、目の前の銀行に行くため、郵便局に車をとめた。銀行は目の前だけど、横断歩道を渡る。その時、横断歩道の信号が青であることに気づいた。狭い道路のちっちゃな横断歩道。このちっちゃな横断歩道のために赤信号を待つのが面倒。
小走りすれば全然間に合う。
そう思った私は小走りを始め、そのまま横断歩道に差し掛かった。余裕で間に合った。が。慌ててちょっと手前で横断歩道に入っちゃったものだから、縁石に足をひっかけた。危ない。と体勢を立て直そうとしたら、涼しい顔して持っていた鞄が、重さのために思っていた以上にぐわんぐわんと前後に揺れ、その重さに翻弄された私は体のバランスを崩した。
わあ。ダメだ。
こらえきれず、私は両手をついた。
気が付いたら両膝と両手をつき、絵に描いたような挫折ポーズになっていた。
横断歩道の中心で、挫折ポーズを取る。
信号でとまっている車たちの見世物になったようで、さすがに恥ずかしいので、むう、と痛みをこらえ、さっさと立ちあがる。恥ずかしさでしばらく気が付かなかったけど、膝がじんじんしてきて手首に痛みがある。雨も降っていたので膝は冷たくもある。そういえば傘をさしていたはずなのに、どうやって持ち直したのだろう。
前日も恥ずかしいことがあった。
「スパイダーバース」を観に行ったのだが、翌週から公開される「キャプテンマーベル」のグッズが売られていた。古い映画館なので、ショーケースとレジが離れた場所にある。どこで注文すれば良いのかなと不安になりながら、レジの店員さんに聞いたら「ここで(良いですよ)……。どれですか?」と聞かれた。改めて「どれか」と聞かれると、恥ずかしい。いい歳したおばさんが、MCUのグッズを欲しがっていることを人に知られる。という事実が。
それで、ついもじもじしながら、「あの……キャプテンマーベルのピンバッジセット」と言った。
「ピンバッジセット」「ピンバッジセット」「セット」「セット……」
脳内で自分の声がこだましている。恥ずかしい。「これ下さい」と指を差して恥ずかしさを誤魔化したいのに、言葉にしなければならない、「ピンバッジセット」。
さらには「ステッカーもなんですけど」と言ったら、「どれですか?」とステッカーの束を手にしている。
キャプテンマーベルの映画だから、キャプテンマーベルのステッカーを買うのがきっと王道なのだ。でも私は「フィル・コールソンの……」ともじもじして言った。「あっ……」お姉さんとお兄さんが慌てて探している。知らないよね、と思っていたら「これですか?」と見せてきたのは、やはりキャプテンマーベルのステッカー。色が華やかでカッコいい。ああまぶしい、でもフィルコールソン、額以外はそんなまぶしい人じゃないの。そしてステッカーもキャラにあわせて地味なの……。
「いえ、あの、白黒で地味な……」ともじもじして言った。
「ああ、あった!」
お兄さんとお姉さんは私の要求したものを見つけられて嬉しそうだ。
「そう! それです!」
ついキラキラの目で満面の笑みを浮かべてしまった。そして
「それを、あの……二枚! お願いします!……えへへ」
照れ笑いしたもののしっかりと要求した。
このお小遣いはどこから捻出しようかしら。あとで考えようっと。
そう思いながら私はピンバッジセットとステッカーを手にした。ステッカー一枚はすぐ使う用。二枚目はそれがボロボロになった時の替えだ。使う用?……どこに貼るんだろう私。それもあとで考えようっと。
二日連続、恥ずかしいという気持ちを存分に味わってしまった。久しぶりに感じた強い恥ずかしさを新鮮に思いながら、まだ恥ずかしいことはたくさんあるのだと感じた。
コケたのはいただけないけど、こういう気持ちを味わうのも、時には悪かないんじゃないかなと思ったのだった。
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