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順調な滑り出しを見せた今朝の夫

 「私とあんりは25歳で、田辺さんだけ36歳なんです」
 「はい、出たー。若さアピール~」

 って導入で始まる、ぼる塾というお笑い芸人のトリオがいる。

 またお笑いの話を。と思っても! お笑いに興味ない方も! 前半の説明部分、ちょっと我慢して読んでいただきたい。

 ぼる塾、元々コンビ同士がくっついているので本当は4人なのたけど、田辺さんの相方が産休で今3人。
 パターンはだいたい決まっていて、はるちゃんが「~になりたい」「〇〇をやってみたい」と言っては、あんりに「そんなのできない」と言われ、田辺さんが「私もやりたい」と言ったら、あんりに「やってみたら良い」と言われる。
 その理由が毎回ひどいので、田辺さんがそれを聞いて怒ると、あんりは田辺さんに、全然慰めになっていないと思われる何かしら肯定的なことを言う。でもその言葉に何となく田辺さんがごまかされて「まあいいか」と思わせられる。その繰り返し。

 その「まあいいか」の時に、田辺さんは「まーねー」と、抑揚のない言い方で、肩に下がった髪をふぁさっと後ろに払って、ちょっとドヤの感じを出す。

 だから我が家でも、何かしら褒められた時に、「まーねー」と低い平べったい声で返してみる。

 でも夫の「まーねー」のイントネーションが間違っていると、いちいち私はダメ出しをしてしまう。
 「違うよ。まーねー。だよ」
夫「うまいなあ。……まーねー」
私「まーねー」
夫「まーねー」
私「そうそう」

 あくまでも、平べったい低めの声で。

 「まーねー」

 なかなか一度でヒットしないから、何度か言わせてしまう。

    *

 今朝、夫を職場に送ったら、駐車場で降りた時にコーヒーのタンブラーを、いったん車の上に置いた。車の奥の荷物を取るためにだ。

 息子が幼稚園の頃、私は車の上に、息子の幼稚園の帽子を乗せたまま駐車場を走った経験がある。そばにいた小学生たちが、車の上部を指さして、よってたかって、わーわー何か言っているから「ナニ?」と窓を開けて気が付いたのだ。
 帽子じゃなかったら。小学生が指摘してくれなかったら。想像が膨らんでしまい、その失敗が私らしすぎてオソロシイ。

 だから車の上に何かが乗った時、私はピリッとする。

 「今、発車してはいけない」。

 こういう時は、声に出して、自分に認識させると良い。
 エアコンよし!(切った) ガスよし!(元栓閉めた) 窓よし!(全部閉めた) 鍵よし!(ドア閉めた) みたいに。

 したことないけど。

 「車の屋根に。コーヒーを乗せています」
 ちょっと堅苦しく言って自分に印象づけてみた。

 「そうだね、コーヒー、車の屋根に乗せましたよ。屋根に」
 夫も言う。そして平べったい声で、

 「やーねー」
と続けた。

 「……!!(ダ。ダジャレ!!)」

 やり直さなくて良いくらい、うまかった。

 笑いながら、窓から「行ってらっしゃい」と手を振ると、ドヤ顔の夫と目が合った。


#エッセイ #ぼる塾 #まーねー #やーねー

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かわせみ かせみ
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。