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魔の道


 何かが迫ってくる。竹田はそれは分かる。だが、何が迫ってくるのかは分からない。
 通り道。いつもの道。後ろから迫ってくる人などいないし、歩道なので、車が近づいてくるわけではない。
 ただ、車の音が後ろからすると、迫ってくるように感じるが、車道なので、関係はない。しかし、音が近づいてくるのは分かるので、安全だが迫ってくる感じはある。特に大型車の音は不気味だ。
 しかし、竹田が感じている迫り来るものは音もなく姿もない。目の前にも後ろにもないのだが、脳裏にはあるのかもしれない。それは記憶。
 迫っている事柄を思い出すと、それなりにある。今すぐやらないといけないものではないので、放置していたりする。
 それがそろそろ何とかして欲しいと迫ってくるのだろうか。その可能性はあるが緊急性はなく、もっと別のもの。
 得体の知れないものがのしかかってくるような、または迫ってくるような。近づいてくるような。そしてピークに達すると、それがやっと分かる。
 だが、その迫り来るものの気配、ずっと気配のままで常に後ろから付いてきている。
 そしていつ何かを起こそうとしている。そうなってからでは遅いような。
 その正体が分かると謎が消えていいのだが、きっと難儀な目に遭うはず。その難儀をクリアすれば、もうその迫ってくるものは消え、スッキリするかもしれない。
 だが、どうも驚異的なものではなく、じわっと締め付けてくるようなタイプだと竹田は憶測する。
 何処か体の調子でも悪いのかもしれない。迫ってくるのは外からではなく、内からだったりする。または神経的なものかもしれない。
 しかし、この迫ってくるもの、これは予告。警告のような。お知らせなのだ。
 だから早くその原因を思い出したいのだが、気になることは少しはあるが、ドンピシャという感じではない。これだったのかという合致感がない。
 それは、その通り道を歩いているときに、そう感じただけで、別の通りに入ったとき、その感じは消えた。
 あそこのあの通り、何かおかしいような気がする。何かいるのか、そういう場なのか、それは分からないが、あまりいいものではないだろう。
 竹田はその後、その道を避けるようになる。別の道を通ることにした。
 すると、もうあの感じはその後、起こっていない。
 
   了
 

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