太ったことを自覚した話
太った。
完全に太った。
周囲から「あれ?太った?」と言われるようになったのは、
高校2年生の時にマクドナルドのアルバイトを始めてからだ。
当時働いていたマクドナルドは、店舗型ではなく
フードコートの中にあるようなお店だったので
毎日20時に閉店していた。
閉店後は、洗い物や在庫確認などの閉店作業をして、
事務所に戻り、タイムカードを切って、着替えをして、
全ての業務が終わるのは大体22時頃だった。
そこから、自転車で家に帰って、
母が用意してくれていた夜ご飯をチンして22時半頃に食べる。
そんな生活を続けていたからか、
高校2年生の頃から「太った?」と頻繁に聞かれるようになった。
しかし、当時の僕はそんな周囲からの声に
あまりピンと来ていなかった。
若手芸人だったの頃のバナナマン日村さんは、
周囲から「デブ」といじられても、
みんな冗談で言っているんだと思っていたという。
毎日自分の体と一緒に生活していると、
その変化に気付くのはなかなか難しいことなのかもしれない。
例にもれず僕も、どれだけ周囲から「太った?」と言われても
「言うほど太ってないじゃん」とさえ思っていた。
しかし、そんな思いとは裏腹に
僕の体重は年を重ねるごとに増加していく。
そして「太った?」と言われ始めたあの日から7年経った今、
僕は、「俺、なんか太ったな」と思うようになった。
主観というものは恐ろしい。
周囲からの指摘があってから、7年もの月日を経ないと
自分が太った事実を自認することができないのだ。
そうして、自分が太っていることに気付いた僕は、
LサイズではなくXLサイズを選ぶようになったし、
ちょっと歩くだけでも息切れしちゃうし、
足の爪を切る時は呼吸ができなくなるし、
よくわからないけどなんか右足がずっと痛いし、
寝る時に鼻に空気を送る機械を装着して寝ている。
しかし、「自分をデブと認めた男」は無敵だ。
自分が太っていることをネタにすれば、笑って貰えるし、
この見た目で意外と大食いじゃないことを活かして、
「僕がっかりデブなんですよ」って言えば、
場がちょっと盛り上がるし、
ちょっとしたミスをしても、「へへへ」みたいな顔をすれば、
「お前はしょうがない奴だな」と思って貰えるし、
「ほのぼの のろまキャラ」として
周囲に認知してもらうことができる。
こうして僕は、最強の男になった。
…あれ?
これでいいんだっけ?
俺、そんなに自虐ネタを言うようなタイプだったっけ?
俺、「ほのぼの のろまキャラ」になりたくて
今まで頑張ってきたんだっけ?
高校2年生の時に思い描いていた将来って
こんな将来だったっけ?
もっと、色々と自制できていたら、
こんなことにはなっていなかったのではないか。
あの頃思い描いていた、
スマートで仕事のできる、素敵な大人になれていたのではないか。
もっと僕には、何かできることがあったのではないか!
そんなことを考えながら、UberEatsで注文した、
倍ダブルチーズバーガーセット(ポテトL、コーラL)を頬張った。
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