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[ライブレポート]11/19 SUPERNOVA KAWASAKI かわさきジャズ PREMIUM NIGHT

新しい「音楽のまち・かわさき」の拠点からプレミアムな一夜。
かわさきジャズのクライマックスを華麗に彩る唯一無二のカルテット

11月19日(日)、10月にグランドオープンしたライブハウス「SUPERNOVA KAWASAKI」で、かわさきジャズ2023を見事に締めくくる素晴らしいライブが催された。
 
「PREMIUM NIGHT」と題して行われたこのライブに出演したのは、類いまれな歌唱力を武器に世界各地のジャズライブハウスやイベントに出演する日本屈指のトップジャズボーカリストShihoと既存の枠にとらわれない独自の音楽を追求し続けるジャズ・ピアニスト桑原あい、多くのアーティストのツアーサポートやレコーディングを手がけるベーシスト鳥越啓介、ジャンルを超えたプレイスタイルで活躍するドラマー山内陽一朗の4人。木の香りが漂う新しいステージで、前方席にはテーブルが設けられ、観客は紫色のライトの下でグラス片手に開演までの待ち時間を楽しんでいる。
 
 鳥越が、ベースでハイトーンサウンドを刺激的に響かせ、桑原のエレクトリックピアノがエレガントなイントロを奏で、ステージが始まった。Shihoがパワフルな歌声を響かせる。曲は『As If you read my mind(Stevie Wander)』。桑原の複数のコードを組み合わせて打ち付けるように演奏するアグレッシブなインプロが素晴らしい。続いて『I can’t help it(Stevie Wander)』。Shihoの色彩豊かなボーカルが会場を魅了する。
 
 その後Shihoがメンバーを紹介する。「基本エレピはやらないよね。でもここに来て欲しかったから頼んだ。」とShihoが言うと「Shihoねえさんのためなら何でもいきます!!」という桑原のレスポンスに大きな拍手。鳥越に「(ベースは)この人がいい!!」と叫んでまた拍手。そして、ドラムの山内が、スティック回しはTOKIOの松岡昌宏を見て覚え、憧れのアーティストはYOSHIKIであると話すと、また一段と会場が盛り上がった。

鳥越啓介

 ここからはShihoのオリジナル曲が続く。はじめにShihoの2枚目のアルバム「COLOR」から『You’re My World』をソウルフルに歌い上げる。会場に魂を揺すぶられるような力強い歌声が響き渡り、胸を打たれる。次に、福岡の中州ジャズのテーマソングにもなっている『HAPPY SONG』。3年間コロナのために行わなかった観客の振付やコーラスも解禁し、Shihoの歌にレスポンスする。中間部での山内のソロはツインペダルのキックが冴えるハードなノリでパフォーマンスに華を添えていた。続いて、アルバム『A Vocalist』に収録されている『Nothing』を気高く歌い上げた。

Shiho

 1部最後は「ジャズフェスだけど、スタンダードな曲をやってなかったので」と、『Take Five(Dave Brubeck)』。心地よい5拍子にのって、Shihoのスキャットも交えた多彩なパフォーマンスが光る。曲を引き立てるインタープレイからも目が離せなかった。
 
 2部最初はロックナンバーモトリー・クルーの『Dr.feel good』。桑原のハモンドオルガンのインプロが冴え渡る。ハードにビートを刻むベースやドラムに乗っかってエネルギッシュにShihoの歌が響く唯一無二のロックスピリッツを聴かせた。
 
 次に、桑原のオリジナル「When you Feel sad」。桑原が好きな歌人で劇作家の寺山修司の「少女詩集」からの一節を英訳し、曲をつけた珠玉の一曲だ。冒頭の口笛とウィスパーボイスで歌うテーマから惹きつけられる。曲前に紹介があった詩の一節「人生はいつか終わるが 海は終わらない」を思い出しながら静かに聴いた。次にガラッと雰囲気を変えて『BAD(Michael Jackson)』を歌う。このカルテットの幅広い音楽性を示す粋なチョイスだ。

桑原あい

 そして、『Lawns(Carla Bley、Steve Swallow)』。原曲はインストだが、Shihoが詩をつけてソロアルバムに入れたいと思っていたところ、ふとしたきっかけで作曲者であるCarla Bleyらとつながりをもつことができ、ソロアルバムに収録することができたエピソードを披露。Shihoの卓越した歌唱力が際立つ、心にしみるバラードで、Carla Bleyが「この曲に新しい命を吹き込んでくれてありがとう」と言った気持ちがよくわかった。
 斜に構えたようなシンコペーションのリズムが印象的な『:Pamela(David Paich, Joseph Williams)』を、激しいスキャットやハイトーンも交えてソウルフルに熱唱した後、いよいよトリとなる『Tambo misturada(Hermeto Pascoal & Airto Moreira)』。コアなラテンファンにはお馴染みのブラジル音楽の名曲だ。ここでも、観客の振付やコーラスが解禁。前半7拍子の部分は聴いていて、サビは立ち上がって、踊り歌う。Shihoは、7拍子はテクニカルかつ華麗なスキャットを披露、サビに入ると観客と一体となって熱い歌声を聴かせる。そこに絡む桑原、鳥越、山内のインタープレイも熱い。山内はボイスパーカッションやツインペダルを駆使した高速キックもソロで披露し、よりクライマックスを盛り上げた。SUPERNOVA KAWASAKIでのPREMIUMな夜は、主客一体となった興奮の渦の中、こうして幕を閉じた。

山内陽一朗

 「音楽のまち・かわさき」に新たに加わった新しい音楽拠点での充実のライブ。カジュアルなステージで、リラックスして音楽を楽しみ、余韻に浸りながら会場を後にする観客は、誰もが清々しい表情をしていた。この日、かわさきジャズ2023の全イベントが終了したが、年々盛り上がるかわさきジャズの今年のクライマックスを見事に盛り上げてくれた格別なイベントになったように思う。来年以降、この場所でのジャズライブがもっと増えることを願うと共に、再びこのカルテットの唯一無二の演奏を聴いてみたいと思いながら帰途についた。
 
TEXT:小町谷 聖(かわさきジャズ公認レポーター)
PHOTO:RYUYA AMAO

●公演情報

【SUPERNOVA KAWASAKI かわさきジャズ PREMIUM NIGHT】
日時:2023年11月19日(日)開演17:00
会場:SUPERNOVA KAWASAKI
出演:Shiho、桑原あい(pf)、鳥越啓介(b)、山内陽一朗(ds)
 
<SET LIST>
01. As if you read my mind
02. I can’t help it
03. You’re my world
04. Happy song
05. Nothing
06. Take5
07. Dr feel good
08. When you feel sad
09. Bad
10. Lawns
11. :Pamela
12. Tombo misturada