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子どもの思考力を飛躍的に伸ばす「連想力」トレーニング

問6
三人の中学生(リクさん、マイさん、レンさん)は、クラスで中米アメリカの国々についてインターネットで調べながら話している。三人の会話文を読んで、あとの(ア)~(ウ)の問いに答えなさい。

会話文
リク:2023年の春はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で大いに盛り上がったね。日本が決勝の( トーナメント )に進んでからは目が離せなかったし、優勝したときは大興奮だったよ。
マイ:そうだったね。ニカラグアやパナマなど野球の盛んな中米アメリカの国々(図1)も出場していたよね。ニカラグアやパナマってどんな国なのかな。どちらもスペイン語が公用語みたいだけど、どうしてだろう。
レン:大航海時代以降、スペインが植民地支配を受けた国は、言葉や宗教などスペインの影響を受けたんだって。独立してから200年以上たっているけど、今はどんな状況だろうね。
リク:どうやら、ニカラグアは1980年代にアメリカ合衆国の軍事介入をきっかけに、10年ほど内戦状態が続いていたみたいね。それに加えて、ハリケーンの被害や社会経済の影響もあって、今も経済は低迷したままなんだって。
マイ:そうなんだ。パナマのほうは、パナマ運河で有名だけど、運河をもっているくらいだから、経済は発展しているのかなあ。
レン:今の中米アメリカの中では経済レベルは高いみたい。でも、パナマ運河はアメリカ合衆国によって建設されたんだって。運河から得られる収入は大きな通航料は、すべてアメリカ合衆国が得ていたから、パナマは経済的な恩恵はあまりなかったみたい。
リク:アメリカ合衆国は通航料を得るためにパナマ運河の建設をしたのかなあ。

マイ:それだけではなくて、このあたり(図1の☆)に運河があることで、アメリカ合衆国にとっては【      】が可能だという点で、戦略的に重要だったのだそうだよ。

レン:1999年にパナマに運河が返還されてからは、運河の通航料がパナマ経済の中心となって、観光や金融などが順調に伸びて、今やパナマは国内総生産の約7割を第三次産業で稼いでいるんだって。最近は鉄鉱石も輸出していて鉱業や建設業も重要な産業として拡大してきているそうだよ。
マイ:ニカラグアとパナマは近くにある国だけど、ずいぶん状況が違うね。同国の間に位置するコスタリカは、ニカラグアとパナマのどちらに似ているのかなあ。人口は三国とも500万人前後なんだよ。
レン:コスタリカは非武装中立国だと聞いたことがあるよ。「兵士よりも多くの教師を」スローガンに、憲法で軍隊を廃止したんだって。
リク:ということは教育水準も高そうだね。コスタリカは果物の栽培が盛んなイメージがあるけど、どうなんだろう。
レン:今はバナナやパイナップルの栽培が盛んなようだけど、工業化も進んでいるそうだよ。外資企業が参入して、果物よりも医療用機器のほうが多く輸出されていると聞いている。そういえばコスタリカは、( 生物多様性が高い )ことでも有名だよね。
マイ:多様性が高いってことは、いろいろな種類の生き物が多くいるのかなあ。行ってみたいな。

(ウ)
会話文の【      】に、前後の文章の内容をふまえて、18字以上22字以内の語句を書き、文を完成させなさい。ただし、「物流」という語を必ず用いること。

【模範解答例】
「物流の要所を確保して支配すること」(19字)
「物流を短期間で行うことができること」(20字)
「物流の円滑化と支配が可能になること」(21字)
「物流を効率的に管理し支配できること」(22字)
「大西洋と太平洋間の船舶による物流の時間短縮」(21字)

神奈川県公立高校特色検査<記述型> 2024年度共通選択問題問6より

はじめに:なぜ今、子どもに「連想力」が必要なのか?

まずは上記の問題を解くための手順を考えます。

1. 会話文の内容から「物流」に関わるヒントを探す
リクの発言:「アメリカ合衆国は通航料を得るためにパナマ運河を建設したのかなあ。」
→ パナマ運河は「船が通るための重要な水路」であることがわかります。
レンの発言:「今やパナマは国内総生産の約7割を第三次産業で稼いでいるんだって。」
→ 物流や運輸業が経済の中心であることが示されています。
2. パナマ運河の役割を考える
パナマ運河は「大西洋と太平洋をつなぐ短い水路」であることは地理的知識として押さえておくべきポイントです。
運河があることで、船が南米最南端(ホーン岬)を回り込む必要がなくなります。
3. 文章中に直接書かれていない情報を「常識」や「知識」から補う
地理の知識として「パナマ運河=大西洋と太平洋を最短で結ぶ航路」と結びつけることが重要です。
物流において、距離や時間が短縮されることは、コスト削減や効率化に直結します。
4. 「物流」+「戦略的に重要」という言葉から導くべきもの
「物流の戦略的な重要性」とは何か?
→ 物流が「早く」「効率的に」「安く」できることは、どの国にとっても重要です。

会話文の中で「アメリカ合衆国にとって重要だった」とあるので、「物流がスムーズにできる」「移動時間が短くなる」という要素を想像できます。

今回の文章から「時間短縮」に結びつける思考
「運河」=「海をまたぐ航路の近道」という知識を活用。
アメリカ合衆国は広い国で、大西洋側と太平洋側に港があります。
パナマ運河があることで、これらの港の間での船舶輸送の距離と時間が大幅に短縮されることは、物流を語る上で最も大きなポイントです。

考え方のポイントまとめ

文章中で明記されていないが、

  • 「物流」→「運河」→「距離の短縮」→「時間短縮」という因果関係を想像する力が必要。

  • 地理的知識:「パナマ運河は大西洋と太平洋をつなぐ」という基本情報が頭にあるかどうか。

  • 物流における重要性:時間短縮=輸送コストの削減=戦略的な価値、という考え方を持つ。

解答へのプロセスは上記のようになります。
ただ、「与えられた情報から因果関係を想像し、関連する情報を引き出していく作業はむずかしくないか?」
それが本論執筆のきっかけです。

通常、子どもたちは英語や国語の試験問題を解く上で、本文に書いていることを元に思考することを学んでいます。そのため、書かれていないことや言われていないことを解答することは苦手にしている子が多いでしょう。
しかし、特色検査が実施されている高校は偏差値60以上の所謂トップ校と呼ばれる高校に限定されています。求められている力は課題文から連想し、思考を組み立てていくことだと言えるでしょう。

変化の激しい現代社会において、知識の詰め込みだけでは太刀打ちできない問題が山積しています。子どもたちが将来、社会で活躍するためには、知識を「活用する力」、つまり思考力が不可欠です。そして、思考力の基盤となるのが、今回焦点を当てる「連想力」なのです。

日々の授業、定期テスト、そして受験…子どもたちは常に「考えること」を求められています。しかし、多くの子どもは、
「問題文を読んでも、何を問われているのかピンとこない」
「知っている知識を、どう結びつければ良いのか分からない」
「新しいアイデアが全く浮かばない」
といった悩みを抱えています。

これらの根本原因の一つが、連想力の不足です。

例えば、歴史の授業で「ペリー来航」という言葉が出てきたとき、単に「黒船が来た」という事実を覚えているだけでは不十分です。「なぜ、この時期に?」「日本はどう変わった?」といった、関連する情報を瞬時に引き出し、結びつける力が求められます。これが連想力です。


本記事では、塾講師の皆様が子どもの連想力を効果的に引き出し、思考力を飛躍的に向上させるための具体的な方法と、指導のポイントを詳しく解説していきます。

1. 連想力とは何か?:子どもの思考力を解き放つカギ

連想力とは、ある言葉や事象から、それに関連する情報、概念、イメージなどを芋づる式に思い浮かべる力です。この力が高ければ高いほど、

  • 知識の定着率が向上する(記憶がネットワーク化される)

  • 問題解決能力が向上する(多角的な視点から解決策を導ける)

  • 発想力・創造性が豊かになる(独自のアイデアを生み出せる)

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