アジャイル/スクラムと『マイケル・ポーターの競争戦略』

スクラムガイドは開発者にやるべきことを示そうとしない。指針となるフレームワークとどんな事例にもあてはまる一般論を示すから、あとは創造性を発揮して自分なりの答えを見つけよというのだ。

違和感ない文章かと思う。これは書籍『マイケル・ポーターの競争戦略』にある一節を一部書き換えたもの。本来はこちら。

ポーターは経営者にやるべきことを示そうとしない。指針となるフレームワークとどんな事例にもあてはまる一般論を示すから、あとは創造性を発揮して自分なりの答えを見つけよというのだ。

マイケル・ポーターの競争戦略

バイアスが効いてるからこそ気づいたことだが、マイケル・ポーターの考え方は非常にアジャイル/スクラムと親和性がある。これなんてまさにアジャイル。

ポーターがいいたいのは、将来的に重要になることを最初からすべて把握するのはまず不可能ということだ。したがって変化を避けて通ることはできず、変化への対応力が決定的に重要になる。しかし方向性を継続することで、変化に効果的に対応できる可能性が高まるのだ。

マイケル・ポーターの競争戦略

完璧な計画作りは現実的ではなくゴール(方向性)を明確にしながらも変化していくことが大事だと説く。

また、「戦略の本質は、何をやらないかを選択することだ」とポーターはトレードオフが重要と言う。アジャイルでもコスト/納期/スコープの三角形や優先順位付けとスコープ管理、まさにトレードオフスライダーなどトレードオフを扱う場面がある。そして戦略が優先順位を明確にする。優先順位を重視するアジャイルにおいてどのように優先順位付けをしたらよいのか?が話題になることが多いが、戦略があれば優先順位は明確になるのだ。戦略がありそこに繋がる目的がある。「自社の目的をきちんと理解している社員は変わろうとする意識やすぐやろうという意識が高い」アジャイルやスクラムを導入しようとして失敗するケースがあるがそれは、戦略が明確ではないからではないだろうか。

さらに、ポーターは企業の指標として ROIC(投下資本利益率)が重要だと言う。資源を有効に利用することが組織の本来の務めであり ROIC を指標とすることで資源の有効活用度を測るというのだ。スクラムにおいてもチームの活動という資源を有効に利用してプロダクトの価値を最大化、つまり ROI(投資利益率/投資対効果)を最大化していくのがプロダクトオーナーの責務と言われている。資源の有効利用に着目している点が同じでその対象が企業かチームかの違いなだけである。

内製化により『バリューチェーン』の『適合性』を高め持続可能なスクラムが戦略を強化/拡張する『継続性』を高める。『トレードオフ』を意識した戦略で『独自の価値提案』を行いその価値を最大化していく。マイケル・ポーターの言葉を借りて DX を説明するとこのように言えるのではないか。言語化できていない部分もあるが非常にマイケル・ポーターの競争戦略とアジャイル/スクラムは親和性が高い。

そして、この本の最後の最後に僕をさらに興奮させる展開がある。書籍には巻末に別の本の紹介が載っているものだが、それがなんとジェフ・サザーランド著『スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術』なのである。これはもう、マイケル・ポーターの競争戦略を学んだ人はそのままスクラムを学ぶべしと言っているようなものである。最初見た時は amazon のリコメンドかと思った。意図した流れであるなら早川書房にいいねである。(余談、竹内弘高さんがポーターの競争戦略論を訳されてますね。)

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