『ファシリテーション入門』の入門

ファシリテーションうまくなりたいという声を聞くと「『ファシリテーション入門』読めばいいよ」と言いたくなるんですけど、本を読むのが苦手な人もいるし、入門とはいえ情報量が多いし、もっとお手軽にファシリテーションのコツを伝えられないかなと思い、僕が意識していることを簡単にまとめてみました。(意識してるからといってできているわけじゃない。意識することで少しずつうまくなれる。)人が一度に覚えられるのは4つまでということで、4つにまとめています。

  • 最初と最後を大事にする

  • 話の変わり目を大事にする

  • 沈黙を恐れない

  • みんなの力を借りる


最初と最後を大事にする

最初を大事にする

まず最初に、この場はどういう場なのかを明確にします。なんのために集まっているのかの共通認識を作ります。そうしないと参加者は「なぜここにいるのか?」と悩んでしまいます。「今から◯◯についての話し合いを始めます。よろしくお願いします。」で始めます。このとき「よろしくお願いします。」が返ってこなかったときは参加者がこの場に参加する準備ができていないかもしれません。そういうときは丁寧にフォローします。

次に、ゴールを明確にします。意見を出し合うだけなのか?結論を1つに決めるのか?またはいくつかある案から3つに絞るのか?短期的な視点で考えるのか?長期的な視点で考えるのか?ゴールがないと話がどんどん拡がって収拾がつかなくなってしまいます。最初にしっかりゴールの目線合わせをします。そして、できればホワイトボードなどにゴールを書き出します。脱線して戻ってこれなくなったら書いてあるゴールを指差して「この場のゴールはこれですよ」と伝えます。(脱線は思わぬ気づきが得られたりするので良しとします。戻ってくるためのゴール設定ですね。)

最後を大事にする

最後は、話し合いをきちんと終わらせて終わります。話し合いに夢中で気がついたら時間がきた。次の予定があるから途中だけど解散。さて、この話し合いはなんだったのでしょう?何が得られたのかわからない話し合いばかりだと「会議が多い、減らさないと」となりがちです。知的労働が多い現代で話し合うことは大切なことです。この話し合いを価値あるものにするために、話し合いの最後に得られたものをしっかり形にします。

残り時間が少なくなってきたらまとめに入ります。何が決まって何が決まらなかったのか明確にし参加者で目線を合わせます。これを怠ると同じ議論が蒸し返されることにつながります。たまには何も決まらないということもあります。そういうときはネクストアクションをしっかり決めておきます。次の話し合いの予定を立てたり、宿題を決めるなどします。必ず何かしらを決めるのです。

また、仮置きというテクニックもあります。意見がまとまらず誰もが納得できる結論が出せなかったとしても、一番確度の高そうなアイデアで仮置き(仮決め)します。そうすることでモノゴトを前に進めることができます。仮置きで進めて新たな課題が出てきたら、それはそのときに対処すれば大丈夫です。何かを決めて進んだことで得られた具体的な情報があるので、仮置きする前より良い判断ができるようになっています。

話し合いをきちんと終わらせることができたら「この場は以上にします。ありがとうございました。」と締めます。みんなが笑顔で「ありがとうございました。」と返してくれたら満足度の高い話し合いでした。そうでなければ満足できていないかもしれません。話し合い後に個別に話すなどフォローしておきます。

話の変わり目を大事にする

ファシリテーターとはなんでしょうか?司会者でしょうか?僕が読んできた本には「プロセスを管理する人」とありました。話し合いの進め方をうまいことする人ですね。話し合いには流れがあります。例えば、課題の共有→議論→結論や、Aについての報告→Bについての報告→Cについての報告など。この流れがプロセスです。話し合いをしているときには話の変わり目があります。この変わり目を大事にします。

まず、変わり目をはっきりさせます。そうすることで今何を話すべきかが明確になります。例えば、去年の話をしていて、今年の話に切り替わったときに、それが曖昧になると去年の話を続けてしまう人が出てきます。「去年の話はこれくらいにして、ここからは今年の話をしましょう」など変わり目を強調します。

また、変わり目ごとに次の話題にいってよいか確認します。まだ話し足りないのに次の話題に切り替わってしまうと、もやもやが残ったままになったり貴重な意見を聞けずじまいになったり。そうするとその話し合いの満足度は低下します。「言い忘れたことはないですか?」「気になってることはないですか?」「次の話題にいってもいいですか?」と問いかけて参加者の話したいことをしっかり聞き切ってから次へいくようにしましょう。

沈黙を恐れない

沈黙を恐れてついつい自分で喋ってしまうことはないですか?自分ばかりが喋っていて誰も喋ってくれない、そんなことはありませんか?

ファシリテーターが喋っていたらどうなるでしょう?喋るのが得意な人なら割り込んででも喋るでしょうけど、喋るのが苦手な人はタイミングが掴めず黙ったままになってしまいます。相手の話を聞く(傾聴する)にはまず自分が黙る必要があります。つまり意図的に沈黙を作ります。そうすれば相手は相手のタイミングで喋りだします。

また、沈黙があったとして、その沈黙はどういうものなのでしょうか?真剣に考えてくれる人がひとりもいないのでしょうか?それとも逆に真剣に考えていて各々で考え込んでいるのでしょうか?ずっと沈黙が続いてこのまま誰も喋らないかもと不安になることはあります。そんなときは「この沈黙は何ですかね?何を考えているんですか?」と問いかけます。きちんとした意見を出さないといけないと思い込んで意見を口にするのを渋っている人もいます。思っていることをそのまま話すように促すことで、思っていることをそのまま喋ってくれて、それがきっかけで話し合いがより活発になることもあります。

みんなの力を借りる

ファシリテーターは話をまとめる人、もしくは課題を解決する人だと思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、必ずしもファシリテーターがまとめたり解決したりする必要はないと思います。

facilitate とは支援する/手助けするという意味です。みんながまとめたり解決したりすることを手助けします。なので自分1人で解決しなければと思う必要はありません。みんなの力を借りて一緒に解決します。例えば、タイムキーパーを誰かにお願いしたり、板書を誰かにお願いしたり。話の進め方がわからなくなったら「次はどのように進めるといいですか?」とみんなに聞いてみます。話し合いがうまくいくように支援するのがファシリテーターの役割なのです。

ファシリテーターが別にいるとき、話し合いがうまくいってないなと思ったら「この場のゴールってなんでしたっけ?」「今は今年の話をしてるで合ってますか?」とさりげなくファシリテーターを支援します。これを隠れファシリと呼びます。みんなで力を合わせて話し合いをより良いものにするのです。ファシリテーションに自信がないうちはまず隠れファシリから始めるといいのかもしれません。


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