新入社員(#ショート#小説#シーン#短編)
ジメジメした季節で、私の心もどんよりとしている。会社に入って早8年。昼は相変わらず一人でオタク小説を読んでいる。趣味は戦い系オンラインゲーム。同期はどんどん結婚していく。どうやったら結婚まで行きつくのだ。30過ぎまでに仕事結婚して出産するなど、どんなゲームよりクリアするのが難しいではないか。短い期間で、どうやったらそこまで行きつくのか。実に人生はハードモード過ぎる。
まず第一に彼氏を作らなければならない。オタクにどっぷり浸ってきた自分にとって、理想の男はこの現実にはいないに等しい。妥協しろとはよく言うが、体が拒否反応をするので近くに行くのでさえも出来ない。手をつないで歩くというのがどうしても出来ないのである。よく友人が新しい彼氏ができたから紹介するね、と会ってみるとどうしてこんなのと付き合っているんだ、というような彼氏がいる。(失礼ではあるが)付き合うということは、アレOKという事だろう。どうにも納得がいかない。
そんな悶々としていた時、新人の教育係になる事になった。
入社したばかりの彼は、背が高くガタイがよく、元高校球児で色黒に白い歯がキラリと光る。
「よろしくお願いしますっ!いろいろとご指導下さい!!」
「ウッス!」
声だけはデカイ
「ああ… う、うん、よろしくね…」
目の前に反り立つ壁があるように、大きい体を折り曲げて一礼された。素直ないい子そうではあるが、運動部の陽キャか。
一番苦手なタイプではないか!