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もしも「さるかに合戦」の出演者が大阪人だったら 第一話
むかしむかし、あるところに猿とカニがいました。
ある日、道すがら、猿は柿の種を拾い、カニは川のそばで、おむすびを拾いました。
カニは猿におむすびを拾ったことを自慢します。
「見てや、このおむすび。めっちゃデカない?」
「ほんまやん。それ、どないしたん?」
「さっき、川のそばで拾てん」
「川のそば? そういや、さっき、川のトコにお巡りさんおったで。なんかオオカミが溺れて、死んどったんやて」
「なんか、赤いずきん被った女の子の仕業らしいで」
「え?そうなん。なんか物騒な世の中やな。人間には気ぃつけんとな」
「ほんまやで」
ムショ暮らしが続く赤ずきんは動物界ではすっかり悪者扱いである。
「ワシはな、柿の種、拾てん」
「柿ピーか。ビール欲しなるな」
「柿ピーちゃうねん。ほんまもんの柿の種や」
「なんや、ほんまの種かいな。それやったら役立たんな」
「何をおっしゃるウサギさん」
「あたし、カニやねんけど・・・」
「柿の種は蒔いて育てたら柿ができんねんで。そっちの方がええやん?」
「なるほど、そういう考え方もあるな」
「おむすびと交換したろか?」
「なんで、そんな上から目線やねん。おむすびが欲しいだけやろ?」
「ちゃ、ちゃうわ。ワシは長期的な展望から親切で言うとるんや」
「ほんまかいな」
「チャンスは今だけ!」
「要らんて」
「今なら、柿の種をもう一つプレゼント」
「だから、要らんって」
「今なら、金利手数料はジャパネットたかたが負担します」
「おまえ、たかたぢゃなくて、猿やろ」
こんな会話があったかどうかはわかりませんが、カニは持っていたおむすびを、猿の柿の種と交換しました。
家に帰ったカニは早速、柿の種を庭に蒔きます。カニは水をやりながら
「はよ芽を出さな、しばくで」
すると、すぐに芽を出した柿。
「はよ木になれよ。ならんかったら、どつくで」
どつかれては困ると、みるみる木として成長した柿。
「はよ実をつけんかい。つけんかったら、いてまうで」
痛いのは嫌なのか、あっという間にたくさんの実をつけた柿。
「よっしゃ~、じゃあ柿を捥いで食べるとするか~」
と木に登ろうとしたカニ。しかし・・・
「あかん。あたし横歩きしかでけへんから木に登られへんこと忘れとった」
カニにとっては柿を育てて実がなっても収穫ができないという痛恨のミス。
「なんか道具を探そか」
と、周りを探すも適当な道具が見つからない。
そんな折、テレビを見てると
「みなさ~ん。高いところの木、切れなくて困ってませんか~。今日は高枝切りばさみのご紹介で~す」
なんてタイムリーなテレビ通販CM。
「おいくらですか? このハサミだったら1万円くらい?」
「いやいや、高くは売れません。安すぎて驚かないで下さい。税込で3千円でのご紹介です」
「え? 安い。やす~~~い」
値段も演技もチープなCMを見て、高枝切りばさみを即買いしたカニ。
すぐに届いて、高枝切りばさみで高いところの柿の実を採ろうとしたが、
「あたし、手がハサミやから、この高枝切りばさみ、持たれへん」
自分の手がハサミなんだから、自分が高いところに行く方法が大切と今更ながらに気付くカニ。
すると、またもテレビ通販CM。
「みなさん。これ、じっくりご覧ください。凄いですよ。充電式高所作業車」
「高いところの柿を採るのもお手の物」
「お値段、なんと29万8千円・・・ですが・・・」
「今ならなんとなんと、10万円引きの19万8千円」
「さらにさらに今だけ、高枝切りばさみを3万円の高額下取りで・・・」
「お値段、なんと16万8千円」
「分割払いもOK。金利手数料はジャパネットたかたが負担します」
魅力的な商品ではあるものの、16万8千円も出せば、成っている実よりもたくさん買えるので、これは断念。
話が脱線しすぎて、「さるかに合戦」ではなく「夢グループとジャパネットたかたの戦い」みたいになってきましたが、そうこうしているうちに、猿が現れました。
第二話に続く