夏の日
目覚ましはまだ、どうして、諦めてくれない。
寝落ちの淵で無意識にかけた5つのオマジナイは、願ってもないほどの雑音で私を眠りの国から引き戻す。
「毎朝、毎朝、ご苦労なことで」口につく言葉もイマイチ、清々しい朝とは程遠い。
右の奥歯に僅かな鈍みを覚える。
昨日外れた詰め物のせい。
今日は仕事を休み、私を悩ます右の奥歯を治療しに行くと決めた。
歯医者。いつぶりだろ?
歯医者は実に不思議で、病院に行くより緊張感がある。
日進月歩進んでいく技術や機能の故、「いたくない歯医者」なる看板を掲げている所もあるにせよ、子供の頃の平成前期の思い出が今でも足踏みをさせる。
「痛かったら右手あげてね~」
「今、ちょっと危ないから、手うごかさないでね~」
「痛いね、もうちょっと、も…ちょっと、も~ちょっと」
大人も嘘つきだ。
少し憂鬱な心とは裏腹の雲ひとつない晴天で、テレビでは注意報を流す。
今年はなんだか蝉も多いし梅雨明けが遅れたせいか、夏が「これでもか!」っと立ちはだかり、ステイホームに一役買ってるなとも思う。
迷惑ではあるが、四季は四季らしく、夏は夏らしくが一番いいと私は思う。
口の中は独特の恥ずかしさがある。
恥部と言うほどではないけど、てへへっ、くらいの恥ずかしさ。恥部なのかな?
痛みでぼやっとする顔面の右側は食欲すらもうばって、昨夜からなんにも食べれちゃいないのに、耐えに耐え、無心で歯磨きをする。
人間の身体って強い!って、思う時もあるけど、脆いなっても思う。
間違いなく昨晩からは後者。
歯一本、それだけで人はこんなになるのだ。
食事も洗い物も、洗濯物も片付けも、どうしようも無くなる。
同じ症状の恋煩いなどとは比になりません。
これを機に色々調べてもらって、ダメな所は全部治すんだ。とか、よし!って。
頭では切り替えるんだけど、心ってやつが上手くいかんのです。
もう、いかなきゃ。
いやだなあ。
こわいな、痛いかもしれない…
そうだ、治療が終わったら今日はハーゲンダッツだ。
治療のご褒美は、ハーゲンダッツ…ハーゲンダッツ、ハーゲンダッツ。
男は灼熱の夏の昼に歩き出した。
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