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AIの強化学習はQ関数から・それではQ関数とは何か?

強化学習とエージェント

孫正義氏は、SoftBank World 2024の特別講演で、AIの進化における強化学習とエージェントの重要性について語りました

強化学習のメカニズム

強化学習は、AIエージェントが試行錯誤を通じて学習するプロセスです。

  1. エージェントが様々な行動や考えを試す

  2. 良い結果が得られた場合、エージェントに報酬が与えられる

  3. このプロセスを繰り返すことで、エージェントの行動が強化される

「こんな行動や考えはどうだろうとエージェントが試行錯誤し、うまくいったら報酬を与える。これを繰り返すことで強化学習されていくわけです」

強化学習はQ関数

強化学習のプロセスでは、Q関数と呼ばれるメカニズムが重要な役割を果たします。
Q関数は、どのエージェントのどの行動が最も高い報酬を得られるかを学習します。
この機能により、AIモデルは自己進化し、より高度な目標を設定することが可能になります

複数エージェントによる学習

OpenAIが発表したo1モデルでは、数千のエージェントが同時に強化学習を行います。各エージェントは数億から数十億回もの試行錯誤を行い、最適な解決策を見つけ出そうとします

Q関数と自己進化

強化学習のプロセスでは、Q関数と呼ばれるメカニズムが重要な役割を果たします。
Q関数は、どのエージェントのどの行動が最も高い報酬を得られるかを学習します。
この機能により、AIモデルは自己進化し、より高度な目標を設定することが可能になります

AIエージェントの未来

  • パーソナルエージェントが個人の代理として機能し、日常的なタスクを自動化する

  • AIエージェント同士が連携し、人間の介入なしにスケジュール調整などを行う

  • 自動車などの物体にもエージェントが搭載され、相互に連携する

これらのエージェントは個人のライフログや感情を理解し、最適なアドバイスを提供する「パーソナルメンター」として機能する

報酬関数の重要性

報酬関数は強化学習の核心部分です。適切に設計された報酬関数により、エージェントは望ましい行動を学習します。

即時報酬: 行動直後に与えられる報酬(例:障害物回避)
遅延報酬: 長期的な目標達成時に与えられる報酬(例:ゴール到達)
報酬関数の設計は、タスクの性質や目標に応じて慎重に行う必要があります。例えば、ロボットカーの制御では、速度と安全性のバランスを考慮した報酬設計が重要です。

Q学習を含む強化学習は、複雑な環境下でのロボット制御や自動運転技術の発展に大きく貢献しています。エージェントが試行錯誤を通じて最適な行動戦略を獲得する過程は、人間の学習プロセスとも類似しており、AIの発展において重要な役割を果たしています。

具体的な迷路の例を使って、Q学習とε-greedy方策をもわかりやすく説明しましょう。

簡単な迷路の設計

まず、以下のような3x3のシンプルな迷路を考えてみましょう:

[S] [ ] [ ]
[ ] [X] [ ]
[ ] [ ] [G]

S: スタート地点
G: ゴール地点
X: 壁(通れない)
[ ]: 通れるマス
ロボットの行動と報酬
ロボットは上下左右に1マス移動できます。各行動に対する報酬を次のように設定します:

ゴールに到達: +100点
壁にぶつかる: -10点
それ以外の移動: -1点
Q値の学習
Q値は、「あるマスである方向に動いたときの価値」を表します。最初はすべてのQ値を0に設定します。

ロボットが動くたびに、以下の式でQ値を更新します:

新しいQ値 = 古いQ値 + 学習率 * (報酬 + 割引率 * 次の状態での最大Q値 - 古いQ値)

ここでは、学習率を0.1、割引率を0.9と設定します。

ε-greedy方策

ロボットは以下のルールで行動を選びます:

90%の確率で、最もQ値が高い行動を選ぶ
10%の確率で、ランダムな行動を選ぶ
学習の流れ
ロボットがスタート地点に立ちます。
ε-greedy方策で行動を選びます。
選んだ行動を実行し、報酬を得ます。
新しい状態でのQ値を計算します。
ゴールに着くまで2-4を繰り返します。
ゴールに着いたら、また1からやり直します。
具体例
例えば、ロボットが右に動いたとします:

報酬は-1点です(普通の移動なので)。
新しい状態での最大Q値を調べます(まだ0です)。
右への移動のQ値が-0.1になりました。
これを何度も繰り返すと、ゴールに近いマスほどQ値が高くなっていきます。

ロボットは試行錯誤を繰り返しながら、どの行動が良いかを学習します。
Q値は「その行動がどれくらい良いか」を表す数字です。
ε-greedy方策により、ロボットは探索(新しい行動を試す)と活用(学んだ良い行動を選ぶ)のバランスを取ります。
この方法で、ロボットは徐々に最短経路を見つけ出し、効率よく迷路を解けるようになります。

ロボットが実際に迷路を進んでいく様子を、Q値の計算とともに具体的に見ていきましょう。

まず、迷路を再確認します:

[S] [ ] [ ]
[ ] [X] [ ]
[ ] [ ] [G]

ロボットはスタート(S)からゴール(G)を目指します。

1回目の移動:右へ
スタート地点から右に移動します。
報酬: -1 (通常の移動)
迷路の状態(Q値を表示):

[S:-0.1→] [ ] [ ]
[ ↓ ] [X] [ ]
[ ] [ ] [G]

2回目の移動:右へ
右端のマスから更に右に移動します。
報酬: -1 (通常の移動)
迷路の状態:

[S:-0.1→] [ :-0.1→] [ ]
[ ↓ ] [ X ] [ ]
[ ] [ ] [G]

3回目の移動:下へ
右上のマスから下に移動します。
報酬: -1 (通常の移動)
迷路の状態:

[S:-0.1→] [ :-0.1→] [ ]
[ ↓ ] [ X ] [↑ ]
[ ] [ ] [G:-0.1]

4回目の移動:下へ(ゴール到達)
右中央のマスから下に移動し、ゴールに到達します。
報酬: +100 (ゴール到達)
迷路の最終状態:

[S:-0.1→] [ :-0.1→] [ ]
[ ↓ ] [ X ] [↑ ]
[ ] [ ] [G:10]

説明

最初の数回の移動では、Q値はほぼ同じ低い値になります。
しかし、ゴールに到達した時点で、ゴールの直前のマス(右中央)の下への移動のQ値が大きく上昇します(10)。
この学習を繰り返すと、次第にゴールに近いマスほどQ値が高くなっていきます。
例えば、何度も繰り返した後の状態might look like this:

[S:8.5→] [9.0→] [9.5↓]
[7.5↓ ] [ X ] [10↓ ]
[8.0→] [9.0→] [G:100]

このように、ゴールに近いマスほどQ値が高くなり、ロボットはQ値の高い方向に進むことで最短経路を見つけられるようになります。

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