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元物理学者が分かったことを解説: 量子コンピュータの量子ビットとは何か

私の知識レベルと知りたかったこと

今から60年前私は名古屋大学理学部で量子力学を学び、その後名古屋大学工学部大学院で半導体を研究していました。半導体を液化ヘリウムで冷やし、原子炉内で放射線を当ててradicalを作り半導体の内部構造を調べていました。
名古屋大学工学研究科物質科学専攻でした。

半導体に放射線を当てるために放射線を発生する原子炉の内部に入ります。
重い鉛のドアを暗証番号で開けて、ガイガーカウンターを持って放射線を当てる場所に進みます。手には魔法瓶も持っています。中には液体ヘリウムに浸かった半導体が入っています。1日放射線を当てると半導体にradicalができ発酵していた記憶もあります。

ガイガーカウンターはジージーを音をたてるのであまり気持ちの良いものではありませんでした。
radicalを調べるのにはESR(電子スピン共鳴)を利用していました。


『素粒子とスピン』解説:量子数、磁気モーメント

  1. スピンとは何か

    • スピンは素粒子が持つ固有の核運動量で、物理的な回転とは関係がない。

    • スピン量子数は整数値(ボース粒子)または半整数値(フェルミ粒子)。

  2. スピン量子数の役割

    • スピン量子数は、素粒子の磁気的特性やエネルギー状態に影響を与える。

    • 電子のスピン量子数(1/2)が磁場との相互作用によるエネルギー分裂を生む。

  3. 磁気モーメントとの関連性

    • スピンは磁気モーメントと密接に関係し、物質の磁気的性質に影響を与える。

    • 電子や陽子、中性子などは固有の磁気モーメントを持ち、磁気特性に影響。

  4. スピンと統計

    • 整数スピンの粒子(ボーズ粒子)は同じエネルギー状態に無限に存在可能。

    • 半整数スピンの粒子(フェルミ粒子)は同じエネルギー状態に2個。

電子スピン「上(↑)」が「N」
電子スピン「下(↓)」が「S」と理解しています。

ESR(電子スピン共鳴)を簡単に説明します。
ESRとは、電子の持つ小さな磁石の性質を利用して、物質の性質を調べる方法です。
もう少し詳しく説明すると:
電子は磁石: 電子は、小さな磁石のような性質を持っています。これを「電子スピン」と呼びます。
磁場の中で: 物質に磁場をかけると、電子スピンは磁場と同じ向きか反対向きのどちらかの状態になります。
マイクロ波で: この状態で、特定の周波数のマイクロ波を当てると、電子スピンが状態を反転(共鳴)させます。
吸収を検出: この時、マイクロ波が物質に吸収される量を測定することで、物質の中にどのような電子があるか、その電子がどんな状態かを知ることができます。

ESRでは不対電子を持つ「ラジカル」を検出できます。ラジカルは化学反応で重要な役割を果たすため、反応のメカニズム解明などに役立ちます。
物質中の電子の状態から、半導体の構造や性質を調べていたのです。

つまり量子個体物性学を研究していました。その後半導体とは遠ざかっていますが最近量子コンピュータが話題なので知りたくなりました。
そこで、量子コンピューターとは何かをGPT4o様に聞くことにしました。

数10回の応答ののち私が知りたいのは「量子ビットとは何か?」と「理研の量子コンピュータの仕組みは?」であることがわかりました。

量子ビット(Qubit)の物理的な実態を詳しく解説

量子ビット(qubit)は、量子力学の基本原理に基づく情報単位です。
60年前に量子力学を学ばれたとのことで、シュレディンガー方程式や波動関数についてのご理解があると仮定して、現代の量子コンピュータにおける量子ビットの物理的な実態を詳しく説明します。

量子ビットの物理的な実態

量子ビットは、量子力学的な状態を持つ物理系で表現されます。具体的には以下のようなシステムが使われます:

1. 電子のスピン

電子のスピン状態は、量子ビットとしてよく利用されます。

  • スピン「上(↑)」が古典的な「0」

  • スピン「下(↓)」が古典的な「1」
    ただし、スピン状態は量子力学の重ね合わせにより「↑と↓が同時に存在する」ような状態も取ることが可能です


2. 光子の偏光

光子の偏光方向(例えば、水平偏光と垂直偏光)を量子ビットとして使うこともあります。

  • 水平偏光 → 「0」

  • 垂直偏光 → 「1」
    これもまた、重ね合わせ状態(例えば、45度偏光)が可能です。

3. 超伝導回路

超伝導回路内で発生するジョセフソン効果(トンネル効果を利用した現象)を使い、量子ビットを構成します。

  • 超伝導量子ビットは、2つの異なるエネルギー状態(基底状態と励起状態)で「0」と「1」を表現します。

  • これらの状態も重ね合わせが可能です。

超伝導量子ビットは長時間コヒーレンスを保てるのか?

超伝導回路に基づく量子ビットは、現在最も実用化に近い量子ビット技術の一つとされ、多くの企業や研究機関(IBM、Google、Rigettiなど)が開発を進めています。  一方で、「コヒーレンス(量子状態が崩れずに維持されること)」をどの程度長く保てるかは、量子コンピュータの性能を左右する非常に重要な指標です。

コヒーレンスを保つための条件

  超低温環境:マイクロ波領域の量子レベルのエネルギーを扱うため、10mK(ミリケルビン)程度の極低温環境で動作させ、熱雑音を抑制。  

  シールド技術:外部電磁波を極力カットするための金属シールド。

デコヒーレンス要因1:誘電体損失

   超伝導体や絶縁体層(ジョセフソン接合付近など)の材料に含まれる不純物が、マイクロ波エネルギーを吸収することで量子ビットの状態を乱します。

デコヒーレンス要因2:外部磁場・電場からのノイズ  

  ノイズが状態のエネルギー差や位相を変化させ、重ね合わせを壊してしまいます。

典型的なコヒーレンス時間

 数十マイクロ秒から100マイクロ秒オーダーまで

エネルギーと量子ビットの関係

量子ビットの物理的状態は、エネルギーの観点からも説明できます。

状態とエネルギー準位

量子ビットは、通常2つのエネルギー準位(基底状態と励起状態)を利用します。

  • 基底状態(低いエネルギー準位):状態「0」

  • 励起状態(高いエネルギー準位):状態「1」

量子力学では、これらの状態間で重ね合わせが可能です。
例えば、電子が基底状態「0」と励起状態「1」の両方に存在する重ね合わせ状態は以下のように記述されます:
∣ψ⟩=α∣0⟩+β∣1⟩
ここで、αとβ は量子力学的な確率振幅で、α^2 と β ^2 が観測される確率を示します。

観測すると状態が決まる(波動関数の収縮)

量子ビットの状態は、観測するまで明確には決まりません。
これが「量子力学の測定問題」と呼ばれる特徴です。

  • 観測前:
    量子ビットは重ね合わせ状態にあります。この状態では、エネルギー的に基底状態でも励起状態でもありません。

  • 観測時:
    観測することで波動関数が収縮し、「0」または「1」のどちらかの状態に決まります。この結果は確率的に決まります。
    例:
    観測すると、スピンは「上」か「下」のいずれかになります。この結果は量子力学的確率に基づきます。

量子力学を学んだ方にとってのポイント

  1. 量子ビットは量子力学の基礎的な概念(重ね合わせ、確率振幅、測定時の波動関数の収縮)を物理的に具現化したものです。

  2. 「量子ビットが観測されるまで状態が確定しない」という特性は、シュレディンガーの猫のパラドックスと同じような考え方です。

  3. 量子コンピュータの革新性は、量子力学的な並列計算の可能性を最大限に引き出す点にあります。

私が理解したこと

私の専門であった電子スピンによる量子ビットの説明は具体的に理解できます。しかし、電子スピンの制御は難しく現在は超伝導のトンネル効果を利用した量子ビットが主流のようです。理研、名古屋大学の量子コンピュータも超伝導の量子効果を量子ビットとして利用しています、

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