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DBR-12 ロマンスをもう一度
DBR
既に教員になった男が「大学生の頃はよかったな~」と回顧する記事。大学生貧乏旅行記。
第12回目の今回は、突然の引退発表に戸惑いながら、人生最大の決心をするお話し。
ロマンスカーVSE、引退発表。
あれは2021年12月。小田急のプレスリリースにて、VSEが定期運行から引退することが発表された。自分が「ロマンスカー」というものを知ったきっかけとなり、鉄道車両に「美しさ」を感じるきっかけとなった車両。これは乗りに行かなくては。乗り鉄の血が騒いだ。
理由は諸説あるみたいだが、連接台車であるが故にメンテナンスに費用がかかることや老朽化などが公式には発表されている。独自の機構を多く積んでしまったが故にそれが引退を早めるというのはなんとも皮肉なことだ。
引退は3月11日。皮肉にも「あの日」だ。
ラストランの指定券
ラストランの日付が判明した。指定券の発売は1ヶ月前の10時。いわゆる「10時打ち」だ。今までやったことないがやってみることにした。
相模大野駅前のネットカフェに宿泊し、翌朝。6時に窓口に行くと何と既に椅子に座り寝ている人が。
しまった。先取られた。
そう思った私は駅員さんに聞いてみた。
私:「あのー、すみません。ここって窓口は1つですか?」
駅員さん:「そうなんですよー。もしかしてVSEのラストランの指定券取りに来たの?」
私:「はい。」
駅員さん:「そしたらね、各駅しか止まらない駅ならチャンスあるかもしれないですよ」
私:「本当ですか!?ありがとうございます!」
こんな感じの会話をした記憶はある。しかしどの駅にも先客がいる。
ダメ元で降りた栗平駅で10時打ちを試みることにした。
駅員さんに伺ったところ、有人窓口は既に先客がいたそう。しかし、券売機ならいけるかもと言われた。
別の駅員さんに操作方法を教えてもらい、いざチャレンジ。
ところが9時50分頃に他のお客様が切符を買いたいと券売機の所にきた。もちろん私のようなマニアが優先なわけはないため、私は譲ろうとした。
すると駅員さんがこう言ったのだ。
「今ね、引退する特急のきっぷ買おうとしてるのよ。この紙渡すから、降りた駅で精算してください」
何と私を優先して頂いたのだ。そして無事に取れた指定券がこれ。
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そんなこんなでラストランの指定券を抑えることができたのであった。
1日乗ってみよう
また別の日。1日VSEに乗り続けるというチャレンジをしてみた。
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初めてスーパーはこねにも乗った。
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もう営業をやめてしまったカフェカウンターには乗務員さんのメッセージが。
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そしてこの写真。VSEの美しいアングルの1つなのだが、実はこの窓に映り込んでいる運転士さんはそばにいる小さな子と写真を撮っていた。とても嬉しそうだったその子の顔が今でも忘れられない。
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少し考えてみた
なぜVSEはこんなにも人気なのだろうか。もちろん沢山理由はあるだろうが、私なりに考えてみた。
①デザイン
それまでのロマンスカーとは一線を画すデザインは見る者全てを魅了す
る。ましてや白を基調とした列車は珍しいし、目立ちやすい。
②ホスピタリティ
ロマンスカーのブランドを保つ1つの要素がこれ。乗務員さんの丁寧なアナウンスなどがある。通勤列車とは異なる「非日常」を演出するのはいつでも「人」であることを証明している。
とある車掌さんは「特別急行ロマンスカーはこね号」と言い、ある車掌さんは「皆様、こんにちは。本日も一日のお出かけに小田急ロマンスカーをご利用くださいましてありがとうございます。」と言う。そんな言葉1つとっても旅行に付加価値をもたらす。
VSEのコンセプトは「ときめきを、ご一緒に。」。旅という「ときめき」をロマンスカーと共に味わう。ただの移動ではない列車の旅を楽しめるロマンスカー。そのアイドル的存在がVSEだったに違いない。
復活したミュージックホーン、展望席、喫茶室。未来から来たようなデザイン。大人が本気で考えて作った傑作がVSEなのだ。
まとめ
VSEは引退が近づくにつれて人気になっていく。
そして訪れた2022年3月11日。VSEは引退引退の日。
私は上りラストラン「えのしま2号」、そして下りラストラン「ホームウェイ87号」に乗るのであった。
続く。