ケルン_day29_ヨーロッパ建築旅行2018
181207_we_day29
今日の目的地はペーター・ツムトア(ズントー)設計の〈ブラザー・クラウス野外礼拝堂/Bruder Klaus Field Chapel〉と〈聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館/Kolumba〉。
どちらも名作と名高い建築なので、とても楽しみだ。
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ベルリンからケルンへ
二夜連続の夜行バスに乗り、ベルリンからケルンへ移動。だが、細かなミスが重なりずいぶんてこずりへとへとになった。
まずベルリンからケルンへ直接向かうバスは本数が少なく(僕はFLIXBUSをずっとつかってた)、一旦ケルンの北に位置するレバークーゼンへ向かい、そこから電車でケルンを目指す行程をとる必要があった。
その上、バスに乗っているうちに、SIMカードの通信容量を使いきってしまい、早朝レバークーゼンに着いたものの、地図がみれなくなってしまった…。
ただ、保険で前日のうちにレバークーゼンからケルンへ向かう電車は調べていたので、そのメモを頼りに電車に乗って移動。
メモの通りKöln Messe/Deutz駅で降りたものの、期待していたケルン大聖堂はどこにも見当たらない。
メモの降車駅を間違えていたのは後から分かったが、この時点で、ネットも繋がらずいま自分がどのあたりにいるのか完全に分からなくなってしまい途方に暮れる…。
「何とか野良wifiを拾うしかない!」とiPhoneをかざしながら駅前を彷徨う…。すると、かすかなフリーwifiを拾うことができ、どうやら自分はライン川をはさんで、ケルン中央駅の東側にいるということが分かった。
ケルン中央駅まで一駅なのでとぼとぼ歩いて向かう。大聖堂のシルエットが見えた時にはすこしほっとした。
ホーエンツォレルン橋を渡って対岸へ。いわゆる愛の南京錠がフェンスにびっちり付いていて、申し訳ないけどちょっとグロテスク…と盛り下がりながら、ようやくケルン大聖堂に到着したのだった。
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前置きが長くなったが、気を取り直してまずは〈ブラザー・クラウス野外礼拝堂〉に向かう。
〈セント・ベネディクト教会〉、〈彫刻の家〉に続き僻地に建っている、「ぽつんと系」の建物なので、行くのが少し手間なのだが、いくつかある手段の内Euskirchen駅からタクシーを使うことにした。理由は、移動時間の短縮。今日の内にオランダのアムステルダムまで移動したかったし、夜行バス続きで2日風呂に入っておらず、とっととホテルに行きたいと思っていたから。汗だくにならずに済むのでつくづく冬で良かったなと思う…。時間がある場合は、最寄り駅からゆっくり歩いていくのもよかったなと思う。
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〈ブラザー・クラウス野外礼拝堂/Bruder Klaus Field Chapel〉
周りは開けた農耕地でおだやかな起伏がどこまでも続いていくような風景が広がる。遮るものがほとんどないのでEuskirchen駅側から向かうとずいぶん離れたところから視界にその姿を認める。しかし、実際に建物の前に着くまでにはまだまだ時間がかかるので、今まで体験したなかでも、もっとも長いアプローチのシークエンスといえるかもしれない。
敷地の入り口でタクシーを降り、迎えにきてほしい時間を伝える。
先ほどよりは随分近づいたが、ここからは歩き。この間もずっと礼拝堂は見えていて、たっぷりと時間をかけて建物が近づいてくる。
〈ブラザー・クラウス野外礼拝堂〉はその工法が特徴的なことで有名である。丸太を隙間なく扠首のように組み、その周りを版築で突き固めた後、中の丸太を焼くことで、内部空間をつくり出す。
23層の版築の積み重なりは地面からせり上がったような佇まいを持つ。
工法を一から組み立てることで建築に付与される強度というのものがあるんだなと思わされる経験だった。
内部は実は撮影禁止なのだが、みんな写真を撮りまくっており、なぞの反骨精神を発揮したため、写真はないのであしからず…。
検索していただければ、いくらでも良い写真が見れますし…。
「祈る」という行為を日常的に行っていない自分であっても、自然とそういった状態に心身が向かっていくような、空間の質がある。
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〈聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館/Kolumba〉
〈ブラザー・クラウス〉の後は市街地に戻って〈聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館/Kolumba〉を見る。
丁度、修繕が終わりかけで一部足場が残っているものの、普通に入館できた。
今回の旅で見てきたツムトア建築は以前の日記を見てもらえればと思うが、その中でもコロンバはかなり複雑な機能、コンテクストを持っている。
上の2枚の写真は現在コロンバが立っている場所の写真だ(ケルン大聖堂を目印に同じ場所であることがよく分かる)。
〈St. Kolumba Church〉は第二次世界大戦で破壊され一部が遺構として残り、戦後にゴットフリート・ベーム設計のチャペル〈Madonna of the Ruins〉が建てられた。そして、同じ場所にローマ時代の遺構も存在した。
これらの既存建物や遺構を飲み込み、遺構見学の機能、〈Madonna of the Ruins〉を引き継いだチャペル、美術館の3つの機能が並存してできているのがコロンバだ。
既存建物や遺構をを飲み込むといっても、そんなに簡単なことではないので、モノシリックな外観から想像できないアクロバットな構成の建築だ。
既存建物や遺構部分の上部に美術館が覆いかぶさる部分は、遺構を避けながら建てた独立柱と外周の壁だけで構造を成立させ、2層分の高さを確保し、展示室が遺構の上に浮かぶような断面構成。
外形も遺構や既存建物のアウトラインをなぞることで〈Madonna of the Ruins〉のファサード、中世の教会の古い外壁が新しい外壁に埋め込こまれたように残っている。
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美術館の入口から中に入り、遺構の見学と美術館の展示を両方見ることができる。展示作品はキリスト教関係の美術品が主な展示作品で、一部現代美術も置かれている。
相変わらずのクオリティーで目に入る全てがぬかりなく造り込まれている。展示空間としては、大きく開口が取られ、自然光とケルンの街並みが飛び込んでくる。
サインやキャプションについては〈ブレゲンツ美術館〉よりもさらに徹底され、入口でもらう冊子に作品情報がすべて載っており、作品自体には数字が振ってあるだけ、という仕組み。恐らくツムトアが口を出していると思うが、空間に不要なサインが現れないよう徹底的にコントロールされている。
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コロンバについて、結果から言うととんでもなく精巧につくられているが、大感動するタイプの建築ではなかった(自分は)。
ただ、以下の点で面白い建築だと思う。
・美術館、遺構部分、チャペルの3つの部分は空間的に明確に分けて計画されていて、あまり互いのアクティビティを近づけようとする作為がない。
「共存させるぞ」ではなく、単に「並存してればいいよね」というスタンスに感じられ逆にリアリティがあるなと思った。ただ、それゆえの単調さももちろんあった。
・遺構の外形をなぞって建物を設計しているように、敷地に既にある線を使って設計することの面白さはやっぱりあるなと思った。これは単に日本でそういった状況が少ないことも理由の一部かもしれないが、歴史的な蓄積がある線が既に存在し、それを使って設計するというのは日本人からするとリノベーション的な発想なのかなと思う。
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この日はコロンバを見終わったら既に17時を回っていて、ケルン大聖堂はまた来るだろうということで、ケルン中央駅で安めのアジアごはんを食べて、アムステルダムに電車で向かう。
電車に揺られて2時間半で念願の〈LLOYD HOTEL〉に到着!
ホテル内の探検はまた次回の話に。
20221010@東京
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