アムステルダム_day30_ヨーロッパ建築旅行2018
181208_th_day30
アムステルダムにはたまたまだが、絶対に泊まりたい2つのホテルがあった。
〈LLOYD HOTEL〉と〈SWEETS HOTEL〉。
どちらも外に出歩くのが勿体無くなるくらい最高なので結局のところアムステルダムではほとんど建築を見て回らず、ホテルでゆっくり過ごしてしまった。
ということで、今回はおすすめホテル紹介という体でいきたい。
〈LLOYD HOTEL〉
昨晩はドイツのケルンから電車に揺られアムステルダム中央駅へ。そこから路面電車に乗り換えて15分ほどいくと〈LLOYD HOTEL〉に到着する。
〈LLOYD HOTEL〉にはひとつ星から五つ星までの部屋があり、多種多様な人が宿泊し、そこに居合わせることがコンセプト。
その外観から分かるように、建物の歴史は古く、もともと1921年に船舶会社のホテルとして建てられる。その後、二度の大戦を経るなかで、移民用のホテル、難民シェルター、拘置所などいろいろな用途として使われてきた。その後はホテルとして改修されるまで、アーティストのスタジオとして利用されていたが、1996年にコンペが行われ、大規模な改修を行い、2004年に〈LLOYD HOTEL〉としてオープンした。
ホテル全体の設計はMVRDVによるもので、それ以外に、各室やレストランのインテリアなどをリチャード・ハッテン、ヨープ・ファンリース・ハウトなどオランダの代表的なデザイナーが手掛けている。
僕はそんなにお金に余裕もなかったので、ひとつ星で予約していたのだが、着いてみるとひとつ星の部屋がいっぱいなので三つ星に変えといたよ、とのこと。どんな部屋だろう…とわくわくしながら部屋に入る。
スケッチにかいたように部屋の半分は鮮やかなオレンジのバスルーム、もう半分がベッドルームになっている。部屋のデザイナーはダッチデザインの巨匠リチャード・ハッテン。
いわゆるホテルの部屋におけるバスルームが巨大化することで部屋全体の関係ががらっと組み換えられている。その大きな一手でデザインを成立させることの清々しさとユーモアにあふれている。
それにしてもラッキーな部屋のランクアップ…!
興奮冷めやらぬまま、晩飯を食べていなかったのでホテル内を探検しつつレストランへ。
古いものと新しいものとが共存し、そのバランスをめくるめく変えながら、しかし楽しそうなデザインのノリがきちんと通底している。しかも、それがデザイナーを超えて共有されていることが、とても面白い。
ごちゃ混ぜだけど、とても洗練されている感じがホテルのコンセプトをピタリと体現していて素晴らしい。
階段を登っては下り、ぐるぐると巡ってレストランで夕飯にありつく。
この日は、前日、前々日の2夜連続夜行バスの疲れもあって、なんとか部屋のお風呂(恐る恐る使った)に入って就寝…。
✳︎
〈SWEETS HOTEL〉
〈LLOYD HOTEL〉を後にして、この日はSIMカードを探したり、電車を乗り間違えて明日行く予定のロッテルダムにいってしまったりとあまり成果のない日中をすごして、早々に〈SWEETS HOTEL〉の101.GERBEN WAGENAARBRUGにチェックインする。
これがホテル?といった建物だが、〈SWEETS HOTEL〉は少し変わったホテルで、いわゆる一つの建物にたくさんの客室がある形式ではなく、アムステルダムの街中に散らばる一棟貸しの客室の集合体なのだ。
なぜ、そんな形式のホテルになっているかというと、一棟貸しの各客室はもともと、水の街アムステルダムにたくさんある可動橋の管理棟(ブリッジハウス)だったものだからだ。
可動橋には、それぞれ管理人がいて、その人が過ごすブリッジハウスが橋毎に設けられていた。その後、橋の開閉が集中管理になるとブリッジハウスが必要なくなってしまい、空き家になったそれらを改修してそれぞれ客室としている。この街特有のブリッジハウスを鮮やかにホテルに読み替えるとても面白いプロジェクト。
街中に散らばるブリッジハウスをホテルとして捉えなおすアイデアもとても面白く魅力的だが、ブリッジハウスの建物そのものも、それぞれ建設時期もデザインも多種多様で、コンプリートしてみたくなる魅力を持っている。なかにはアルド・ファン・アイクが設計したものもあったりする。
今回泊まったのは小さな塔状の建物で客室部分だけで4階分の高さがある。普段なかなか体験できなさそうなスケールにわくわくしたので、ここに決めた。
断面を切りたくなる建物だったので、説明用に断面スケッチを描いてみた。
小さな部屋が積み重なり、階段がそれを上下につないでいる。部屋が開かれる方向が、階段との関係で変わるよう設計されていることが分かる。ベッドルームには昔の橋の制御盤が置かれていて、可動橋と川に向かって開かれ、最上階のキッチン、ダイニングは、ベッドルームとは反対の方向へ開かれている。
とても小さな建物なのに使い勝手の悪さを感じさせないのは、適切な寸法で設計されている証拠だ。ここまで小さいと大きな家具のように感じられ、人の動きにフィットする感じが居心地が良い。
泊まった日は夜から翌日まで少し雨が降っていたのだが、落ち着いた雰囲気と相まって、ずっとここにいてもいいなと思ってしまう。
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最後に何故このふたつのホテルに行きたいと思っていたかについて。
僕は大学院生の頃、スキーマ建築計画と明治大学門脇研究室が協働した木造住宅の改修のプロジェクトをずっと担当していた。
実務をやるようになってからそれなりに時間も経つと、あのときなんであんなに時間が掛かっていたのか不思議だが(今思えば寛大な心で特に急かされることもなく見守られていたように思う)、設計期間と施工期間含めて1年以上、当時まだHAPPAにあったスキーマの事務所に通っていた。正直、何も生み出さない学生を、しかもデスクまでいただいて、よく置いていただいていたなと、今思い返すと本当に恐縮する。しかし、僕にとっては、とても刺激的な日々だった。
長坂さんの仕事は、ダッチデザインの影響を受けている部分が少なからずあることや、LLOYD HOTELとのつながりも昔からあって、その名前やそこに関わるデザイナーたちは良く話題にあがっていて、いつのまにか、いつか訪れたい!と思うようになっていたのだった。SWEETS HOTELについても、スキーマの人たちがアムステルダムに出張に行く際に宿泊しているのを見て、これもアムステルダムに行くことがあれば必ずや泊まってみたいと心に決めていた。
とまあ、まとめるとスキーマに通っていたときに噂に聞いた憧れのホテルに宿泊しにいくというのがアムステルダムの大きな目標だったのだ。そしてどちらも大きな期待をさらに上回る素晴らしいものだった。
アムステルダムに行かれる際はどちらのホテルも是非訪れてみてほしい。
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〈SWEETS HOTEL〉を出発して、向かうはオランダ第2の都市ロッテルダムへ。
これもずっとあこがれの建築であったOMAの〈クンストハル〉を見に行く。
20230326@東京
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