「こんな歳で・・・」って、誰が言ったの?
僕は来年40歳になります。
父が40歳を迎えた時に、10歳だった僕は、
「ああ、父ちゃんはもう30代じゃなくなって40代になるんだ。しかもその次はさらに50代になるんだ。」
と、人間の年齢はどんどん増える一方なのだ、という当たり前なことに気づき、なぜだかものすごく寂しいよな切ないような気持ちになりました。
そして、40歳というのは、ものすっごくおじさんで、自分たち子供とは遠い別の世界に暮らしているように感じていました。
ところが、です。
いざ、自分が40歳を目の前にしてみると、思いの外、楽しいのです。
もっとも、モノを覚えるのに時間はかかるし、血圧は高めになるし、白髪も増えるし、駅の階段は駆け上がれなくなってくるし、身体は確かに正直に歳を重ねてるんです。
また、若い人を見て「ああ、やっぱり若いっていいなぁ。羨ましいなぁ。頼もしいなぁ。」と思うこともたくさんあります。
かといって、10歳の頃とも、20歳の頃とも、また違った新しいことや楽しいことが起こっています。もしかしたら、増えているかもしれない。自分や周りがレベルアップ?変化?している感じは、(それが客観的にどうかはともかく)ものすごく実感としてあるんです。
嫌なことやしんどいことも増えている気もするけれど、そればっかりじゃないのです。
これは僕だけが楽天的なのかな、と思ったらそうではないようです。
HI-FIVEの塾生さんには、僕よりも年上の生徒さんも何人かおられます。
その誰もが最初は、
「こんな歳になってから勉強なんてできませんよね・・・。」
「私でも今から勉強はじめていいものなのでしょうか・・・。」
と、なぜだか申し訳なさそうに、あるいは恥ずかしそうに、相談をされます。
一体、誰に対して申し訳ないんでしょう。誰に対して恥ずかしいんでしょう。
そして最初はそんな風だった生徒さんが、
「勉強ってこういう風にするもんだったんだ。」
「学ぶことってこんなに楽しいことだったの!」
「次はこの試験にチャレンジしてみようと思ってますが、一緒にやってもらえますか?」
と、一応教える側の僕があれこれ言わずとも、次から次へと、新しいことを知って、身につけて、さらに別の一歩を踏み出して・・・と、どんどん進んでいかれるので、僕が置いていかれないように慌てるほどです。冥利に尽きます。
年齢はもらう一方で返すことはありません。一方通行です。
トイレットペーパーは引っ張らないと出てこないし、出しすぎたら戻すこともできますが、
時間の流れは勝手に流れ続ける一方通行です。
だから、経験も増える一方です。シワも増える一方です。
当然、物事の捉え方も感じ方も変わっていきます。
世の中だって、どんどん変わっていきます。
それって、若い方がいい、歳をとったほうがいい、昔が良かった、今がダメだ、という話ではなく、
人生のその時々で、あるいは時代時代で、「変わる」のだ、ということ。
そう考えると、
「勉強が嫌いだった。」
「苦手だから手をつけなかった。」
「自分に合った方法がなかった。」
「勉強をするチャンスそのものがなかった。」
といったことも、「変わる」ことは、当たり前のことです。
もっと言えば、学齢期は、どこかで「やらされている」「やらなきゃいけない」と感じていた勉強も、
大人になると、誰に「やらされる」こともないし、そこまでやらずに生きてきたんだから、「やらなきゃいけない」ってこともありません。
今さら因数分解ができなくても、誰にも叱られません。
塾をやっているくせに、僕はよく思うんです。
勉強なんて「やらなくてもなんとでもなる」ことです。
歯を磨く、とか、ご飯をたべる、とか、仕事をする、とか、そういったことからすると、勉強なんてうーんと優先順位が低いことですから。
そしてそれは、年齢を重ねるとともに、どんどん優先順位が下がっていくようです。
やらなくてもいいことなんだから、好きな科目ばっかりやって構わないし、
小学生の内容だろうが、1年かけても3日で飽きても、誰もなーんにも困らないし、迷惑もかけない。
なのに、大人になってからちょっと勉強やるだけでも「立派やねぇ」「大したもんだ」「尊敬する」なぁんて言われるかもしれません。
こうなってくると、もはや、小中高校・大学と「勉強しなくちゃいけない」とされている人たちに申し訳ないくらいです。
彼らの年齢の頃には、(それが良い悪いじゃなく)テストや宿題に追いかけ回されて、これでもか!ってくらい勉強してもテストは不合格だったりしたのですから。
入塾前の相談で、
「こんな歳になってから勉強なんてできませんよね・・・。」
「私でも今から勉強はじめていいものなのでしょうか・・・。」
と、言われるたびに、
「それって誰かに言われたんですか?誰かが決めたんですか?」
と、聞き返すようにしています。
仮に誰かがそう言ったとして、仮に誰かがそう決めたとして、
その誰かさん、自分でもやってみたの?って。
僕の好きな言葉に、
「今日が残りの人生で一番若い日」
というのがあります。
勉強の話ばかりになったけれど、スポーツでも、趣味でも、なんでも。
「若い時にやってれば・・・」っていう割に、
今この瞬間も、10年経ったら「若い時」になることには気づかないもの。
10年後、いや、1年後の自分に、
「よくぞあの時に始めたもんだ!」
って言ってもらえるかもしれないよ。
少なくとも、
「なんであの時に始めたんだ!」
なんて言われるようなことは、滅多にないように思うのです。