日刊県民福井5月「池田暮らし きゅん便り」
日刊県民福井で、月1掲載している池田暮らしのエッセイをnote(web)で公開しています。今回は、5月に綴った温度感と出来事です。
山菜も時季を終えて、山へ行くこともぼちぼち少なくなってきた5月である。ここ数週間を振り返ると、天気について池田町民とよくしゃべったと思う。「今年は、山菜の始まりが遅かったけど終わるのが早かった」とか、「夏のような暑さだ」とか、「川の水が干上がりそうなくらい少ない」とか。こんな会話をする度に、私の心はひそかに踊っている。天気の話を頻繁にすること自体が、豊かに思えるからだ。
土に触れる暮らしをしているからこそ、自然をよく観察して、どのタイミングで何をすべきかを考えて手足を動かす。天気の会話を交わす時、地に足ついた人間らしさを育んでいるな、と思うのである。
池田町のゴールデンウィーク(GW)は、人がごった返した。去年の秋に岐阜とつながる「冠山峠道路」が開通したことと、4月27日に観光施設の「道のオアシス フォーシーズンテラス」がオープンしたことが要因だろう。車の行き交いは止まることを知らず。施設の前で渋滞ができたほどだった。
そんな忙しないGWに、私の友達が首都圏から何人か遊びに来てくれた。私も外から来た身ではあるが、やはり友達が遊びに来てくれることで池田を再発見できることも多い。
友達Sは、五感で感じる全てが心地よく「副交感神経が優位になるから、ずっと眠い」と言っていた。私の写真フォルダーには、そんなSの寝顔が何枚か収まっている。
また別の日には、友達Nと山菜採りに山へ行った。慣れていないNは、時折山の斜面で足がすくんだようだった。家に帰ってきてからは、「自然に対して謙虚にならないとダメだと思った」と言った。どうやら山歩きで感じた恐怖がそう思わせたらしい。「山に行くと人間がコントロールできるような対象じゃないって気付くよね」と私も共感した。
山にいたのはほんの数時間だったが、Nが身をもって学んだことは、とても大事なことだったと思う。そして、少しの間で「謙虚にならないとダメだ」と感じ取った感性も素敵だと思ったし、そんなことに気付ける場がすぐ近くにあるということの贅沢さと有り難さを改めて再認識した。やっぱり、良い環境だ!
友達と町を歩いていると、いつも仲良くしている池田町の人たちと出会う。その度に「よく来たね」「ゆっくりしてね」と歓迎してくれる。時にはいつも以上に多くのお裾分けをいただくこともあって、みんなで喜んだ。
友達SとNは、ハグをする習慣があって、2人は池田町の人とも何度かハグをした。私とも「普段はしないね!」なんて笑い合いながら、その流れでハグをした。とても、ぬくかった。
言葉ではどうとでもごまかせても、ハグではごまかせない。その人の本当に思っていることが、そのまま伝わってくるような気がして。「ああ、本当に温かいなぁ」と思った。思わず涙がこぼれそうになる。友達が遊びに来てくれたからこそ、私は何事にも代えがたいこの町の人の温かさを再発見させてもらった。