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「団地は巨大なシェアハウスだ」
はじめに
私が代表を務めるGoldilocks社が手がける団地の中のコワーキングスペースがいよいよ2週間後の5月13日(土)に開業を迎えます。
なぜ?オワコンと烙印を押されてもおかしくない団地というニッチな場所にわざわざ新たなワークスペースを作り出そうとしているのか?背景について少し詳しく書き残しておこうとおもいます。
<熱い思いを書いたら相当な長文になったので最初に結論を書きます。クラウドファンディング!ぜひお願いします。>
ゲリラ飲み会
まずこの写真を見ていただきたいのです
![](https://assets.st-note.com/img/1682725625371-7NGqwHz76e.jpg?width=1200)
やもすると路上で飲みだすマナーの悪い住民と捉えられなくもないのですが、この写真が表す団地の豊かさに注目してほしいとおもいます。
当社が団地内にコワーキングスペースを開設するということで、「今年コワーキングスペースを開設するものでございます!」というご挨拶代わりに団地の中心部に位置するショッピングセンターの一角にあるカフェの前で、焼酎を振る舞うというゲリライベントを開いてみました。
夕方あたりからカフェの方がほんの少し声をかけただけでこんな温かい賑わいが生まれました。
通り過ぎる人に「僕の地元(鹿児島)の焼酎をふるまっています。いかがですか?!」
都心でこんな声がけをしたら下手すると通報されるかも知れないですが、しかしこの団地では多くの人が「飲みたいけどこの後、車で・・・」「飲みたい!けどこれから家で夕飯」などと笑顔で挨拶してくれました。これまで様々な場所でコーヒーやらビールやらを振る舞うイベントをしてきたのですが、大抵の地域は 目も合わせず、関わろうとしないという人がほとんど(それが普通)なはずが何故だかここの通りではみなさん反応してくれました。これがとっても新鮮でした。
団地フェス
路上のコミュニケーションがこんなにも血が通って残っているこんな場所が首都圏にまだあるのか?という感覚でした。なぜこうなるのか?必死で答えを探そうとしていましたが、翌日このカフェで開かれた団地フェスで答えがみつかった気がしました。
ゲスト登壇者の一人、公団ウォーカーの照井さんと団地居住のGoldilocks社員小山くんとのやりとりに答えを見出せました。
照井さん「団地には1つの同じ場所に住んでいる集団という意識が芽生えますよね」
小山くん「団地は巨大なシェアハウス と言えますね」
団地は巨大なシェアハウス、まさにそれを感じさせる出来事だったと思います。
<2023.03.18に開催された「団地フェスvol.0」の様子はこちら>
団地の真ん中を通るショッピングセンターは買い物をする場ではありますが、ときに通学路でもあり、お祭りのメイン会場でもあります。情報交換の場でありまさに井戸端会議の中心地。みな団地の中は公道ではあるが共用部の感覚が根付いているのだろうと思いました。
話をもとに戻すと、そんな団地になぜコワーキングスペースをという話です。
左近山団地について
まずこのコワーキングスペースを開設する左近山団地について少し紹介したいと思います。
公団の黄金時代と言われる1960年台に計画された団地であり、賃貸2104戸、分譲2620戸、合計4724戸を誇る非常に巨大な住宅地。相鉄線の二俣川からバス便立地の団地で、団地だけで一つの街を形成しています。国交相のデータを調べてみると40ha以上の住宅の集積地は民間開発のものも合わせると全国に1600以上あるらしいんですよね。つまりこの左近山団地クラスのものが日本全国津々浦々に点在しているということになります。
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団地内ワークスペースの事業者公募
昨年横浜市旭区は区内でシェアオフィスなどの「働く場」を創出するため、左近山団地内で開設する事業者を2022年7月7日に募集開始。当社は創業初年度ながら団地居住のGoldilocks社員である小山くんの熱い思いもあり事業者に選ばれました。
住むと働くの融合
応募した時点から「住むと働くの融合」は念頭におきながらプランニングしていましたが、いざ選定事業者になり、本格的に企画をすすめていく中でいよいよこの融合が進んだコロナ後の世界について深く考えるようになりました。
コロナ後の世界においてオフィス回帰はもちろん鮮明です。しかしながらコロナ前と全く同じ風景には戻らないというのもまた事実。これを書いている2023年4月26日時点の昨日の報道では、今年のGWの旅行はコロナ前の2019年に比べて102%と完全に回復軌道にのり、かつ拡大しているということです。しかし我々の「働く」は2019年の元にはそっくりは戻らないと感じています。
事実、最近の報道を拾っても、
コロナ後も、オンライン会議は積極活用65.0%! 特に「情報サービス」「人材派遣・紹介」「広告関連」で顕著に
エンジニアの44.8%、在宅勤務から出社回帰の影響を受けて転職を検討
在宅勤務型はコロナ禍前の5倍超!11の生活タイプに見る変化
出社鮮明!の報道の裏に、60年くらい続いてきた出社して働くという概念がコロナという黒船で転換点を迎えたことが表れていると思います。
みなさんも、なんで無理していままで会いに時間をつかっていたのか?という業務の見直しを経験されているとおもいます。必要な場では顔をあわせるけどもわざわざ同じ場所に集う意味を考える時期に来ています。
そんな影響がいよいよ団地という場所にも表出したということと認識していました。
単なるテレワークのためのコワーキングスペースなのか?!
左近山団地の高齢化率は40%を超えており全国平均に比べると高いのですが、それでも8000人の居住者のうち生産年齢人口は3000人以上いる街です。コワーキングスペースの需要は確かに一定数はあると推察されます。
ただしテレワークが可能なホワイトワーカーが多いエリアかというとそうではない。だとすれば収益性の面からやはり成り立たないのだろうか?という議論を延々と社内でもしてきました。
街でやりたいを叶える
そんなおり、この古い団地でできることはなんだろうか?というブレストをしているうちに様々な隠れたニーズがあることに気付き出しました。これまでは働くのためのベットタウン的位置付けだった団地。働くと住む(生活する)で手一杯だった生活スタイルから、世の中全体にゆとりが出てきて、人々のやりたいが多様化しまたそのやりたいのハードルが下がってきたように思います。
そこで「団地でこれをやりたい!」という社内でのブレストを軽くしてみました
ミニハーブ園を作りたい
完全なオフグリットハウスを作りたい
街に小さな映画館を作りたい
バスケチームを作りたい
わんさかアイデアがでてきました。思考を街で遊ぶという観点に切り替えると僕らはまだ”まちの余白”を使いきっていないのでは?と感覚が芽生えました。
ワークショプ
これはいける!と思った我々は2022年12月18日に近隣の方々を集めて街でやりたいことを発想するブレスト大会を行いました。そこで出てきたアイデアは本当に多様性を表す様々な住民の希望の種ように感じました。
子供と昔の遊びをしたい
世代をこえた交流をしたい
スポーツ大会を開きたい
フリーマーケットがないので作りたい
地元の歴史を勉強する有志を募りたい
プロジェクションマッピングに挑戦したい
エレキギターを始めたが人前で演奏したい
友人が団地に泊まれる仕組みをつくりたい
ヨガ教室をひらきたい
ポッドキャストをやりたい
![](https://assets.st-note.com/img/1682810325253-lyZFKmpuML.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1682810325229-qP3EIR512Q.jpg?width=1200)
何かを始める作戦会議を開く場所
こんな話をずっとしているうちにコワーキングスペースはテレワークの仕事のためだけの場所ではないのでは?という意見が社内でではじめました。
何か思いのある人々が妄想をしたことを仲間を集めながら少しつづ形にするための作戦会議の場所、寄合所のような場所。
これまでは公民館や自治会館がそれを担ってきたのだと思います。
しかしながら、大きな机、Wifi、ディスプレイ、ホワイトボード、心地良い空間、コーヒーなどを備えたコワーキングスペースこそがその場所になり得るのではないか?!そんな思いが芽生えさらなる研究が始まります。
3人組でまちで何かをはじめる
そんなコワーキングスペースに新たな価値を吹き込むために我々は、人が何かを始める時のハードルや離脱要因について考えを巡らせました。
そんな議論の中でふと出てきたアイデアに3人組=トリオというものがありました。
1人では点、2人だと線、3人だと面になる。
1人だと孤独、2人だと対立が、3人だとうまく議論が逸れる。
誰かがこの指とまれと差し出し指にフォロワーがついて、もう一人賛同者が現れると急にプロジェクトが動きだす。
感覚的にわかっていた話ですが、実際の活動に当てはめるためにもこの団地のコワーキングスペースで実証をはじめようということになりました。
それをトリオシステムと命名して仕組みを作ることにした。
トリオシステム
我々が具体的に仕組み化しようとしているものは以下のようなものです。
まず思いついたやりたい種・事柄をこの地域に表明できる掲示板のような仕組み
気になった種にいいねができる、または一緒にやりたいという意思表明ができる仕組み
3人集まると自動的にトリオが結成され、トリオ左近山の会議室が一定時間無料で使える権利が付与される仕組み
トリオが育っていけばトリオ左近山でPJ発表ができたり、イベントも可能である。
上記のようにまちの中のやりたいWANTSを見つけ出し、賛同者をつのり、育てて、アクセラレートするような仕組み全体を構築しようとしています。
仕組みの確立と拡大
というわけで長々と思いを書き殴ってみたが、要するには・・
単なる団地の中のコワーキングスペースの開設!という箱ものの話を超えて、住むと働くの融合、さらにはまちの中でのやりたいを増幅していく仕掛けとしてトリオ左近山を位置付けることになったという話です。
開設費用や年間の賃料は旭区から補助をいただいているので、このトリオという仕組みをもっといいものにして、団地という場所で街の再生をしかける切り札としてクラウドファンディングで応援資金を募らせていただくことにしました。
現在オープンに向けて絶賛募集中です。ここまでお読みいただき共感いただいた方はぜひ応援お願いいたします。
ビジョンミッション
最後にコワーキングスペースでは珍しいビジョン、ミッションを定めているの紹介させていただき結びとさせていただきます!
ビジョン
生きたいように生きられる人に溢れ、個々の能動的な役割の集合で地域機能を維持発展する、持続性のある地域社会づくり
ミッション
たくさんの人が、素早く、楽しく、地域で小さな役割を持つ・自分の価値観で豊かさを感じられるようになるプロセスを開発し、あらゆる地域での展開を目指す
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川路武プロフィール
1974年鹿児島生まれ。上智大学経済学部卒業後、1998年三井不動産入社。官・民・学が協業するまちづくりプロジェクト「柏の葉スマートシティ」や新しい働き方を提案する法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」を立ち上げる。2011年にはNPO法人「日本橋フレンド」を立ち上げ、次の100年を見据えた日本橋でのまちづくり活動を行う。2022年に24年勤めた三井不動産を退社し、新たに「半径100mの人と人をつなぐ」ことをミッションとした株式会社GOLDILOCKSを起業。
座右の銘は「それもあり」。