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星野源さんに対する愛について①
星野源さんが好きだ。
と言うより、彼は命の恩人である。
2016年の年明け早々、私はどん底にいた。
単身赴任から帰省中の夫に、離婚話を持ちかけられたのである。
あと3ヶ月で任期が明けて、我が家に戻ってくるというタイミングでの青天の霹靂だった。
理由は明白。女性だった。
自分で言うのもアレだが、自他共に認める仲のいい夫婦だった。
娘が生まれてもずっとラブラブだったし、彼の単身赴任が決まって某離島へ行ってしまってからは泣いてばかりいた。
彼は、家を建てれば拠点ができるので、あちこち転勤しなくてよいこと、自分が転校を繰り返して寂しい思いをたくさんしたため娘に同じ思いをさせたくないことを挙げ、単身赴任が決まってから家を建てた。
私は正直、家族で付いて行きたかったのだが、家長である彼の意志を尊重することにした。
両実家は遠く、縁もゆかりもない地に建てた家。
そこに根を張るため、私はひたすら頑張った。
所謂コミュ障だが、幼稚園の役員も小学校の役員も子供会の役員も引き受け、地区の行事や奉仕活動にも積極的に参加し、人との繋がりを作ることに奔走した。
一人でいっぱいいっぱいになりながらも、周りに助けられてなんとか乗り越えられるはずだった3年間は、目の前でがらがらと音を立てて崩れた。
話し合いの決着もつかぬまま、彼は赴任先へ戻り、それから数日、私は虚無の塊になった。
死ぬことばかり考えていた。
どこで首吊ったらいいだろうか、私の体重でも耐えられるだろうか、と宛もなく家中をさ迷った。
泣きながら電話をかけた先の義母は
「離婚するなら孫は任せられないから私が引き取って育てます」
と言い放った。
私が死んだら、娘は義母のとこに行くんだ。
そして彼は、あの女性と結婚するのか。
私がいなくなったら、丸く治まるのか。
八方塞がりだった。 ふと思い立った。
「どうせ死ぬんなら、好きなことしてから死んでやる」
Amazonを開いて、星野源さんのアルバム「YELLOW DANCER」をポチった。
星野源さんを知ったのは、2012年。
NHKの「LIFE!~人生に捧げるコント~」という番組で初めて源さんを見た。
当時は「駆け出しの俳優さんかな?」としか思わなかった。
気になったことは何でもWikipediaで調べるマンの自分がなぜ源さんをスルーしてしまったのか。
この判断が数年後、激しい後悔の原因となることも知らずに…。
その後すぐ源さんはくも膜下出血で療養に入り、LIFE!でも見かけなくなってしまった。
復帰後も『LIFE!の人』というイメージしかなく、不幸にも彼の曲に触れるタイミングすらなく、ラジオで「SUN」を聞いた時にはびっくらこいてしまった。
「え!?LIFE!の人、歌手だったの!?」
当時の私は、節約に励むパート主婦だった。
そのため、CDアルバムなど贅沢品に他ならなかった。
「SUN」がとてもいい曲だと思ってはいたのだけれど、CDを買うまでには至らなかった。
それが含まれたアルバム「YELLOW DANCER」が発売された時も、なかなか買うという決断ができなかった。
だけど、私は死ぬのだ。
死ぬ前にやりたいことをするのだ。
3000円など惜しくはなかった。
Amazonは思っていたより随分早く源さんを手元に届けてくれ、私は早速プレイヤーにCDをセットした。
「あぁ、死んだらこの人の曲、もう聞けないんだ」
私はあっさりと手のひらを返した。
長いので次回に続く→