
Art meets people
芸術の力で国おこし
“Art meets people”とは、「芸術は人を集わせ、触れ合わせる」とでも訳せばよいのでしょうか。
実は、 “アートミーツピープル:Art meets people”というのは、法人名でもあります。芸術の力をパブリックアート(公共芸術)で広める運動をしている一般社団法人で、頭文字をとってAMPと通称しています。
AMPは、京都・大阪など近畿地方を中心に、公共建物、とくに、若者が集まる大学に優れた芸術作品を寄贈してこられました。これらの作品は、AMPの趣旨に賛同した当代の芸術家、たとえば、わが国を代表する芸術院会員、日展・行動展・新制作など美術団体の会員/役員、国内外の主要な美術館に作品が収蔵されている芸術家の厚意によって無償で提供されたものです。
欧州の町々を訪ねると、美術館や博物館、教会で絵画や彫刻が楽しめます。イタリア・フィレンツェやローマの広場や通りを歩いても、美術の教科書で習った芸術作品を直接目の当たりにすることができます。市民は日常生活のなかで芸術に接し、その歴史と文化の恩恵を受けて暮らしています。観光客にも恩恵を与え、結果として、町の活性化や経済の強化につながっているのではないでしょうか。
AMPは、「芸術の力で国興し」というビジョンをかかげ、わが国の公共教育機関、特に大学を中心に芸術作品の寄贈を続けています。住民が「心にゆとりを持ち、自然への人間らしい感受性と他人への思いやり、そして元気が出て、創意が湧く国」にするため、芸術を活かす運動です。
京都大学思修館の人づくり
AMPを通じて、京都大学大学院総合生存学館(思修館)には35点に及ぶ芸術作品を寄贈いただきました。思修館本館(東一条館)のロビーは一般市民にも開放されていて、科学雑誌などの読書を楽しめます。建物内外の空間には日本画、油彩画、漆芸、陶器、染織、彫刻など、多様な芸術作品が並び、学生、教職員はもとより、市民にも楽しんでいただいています。
思修館は、リーダー人材の育成を教育目標に掲げています。国際社会において課題に挑戦する実践力のあるリーダーを育てることを目標にしています。そのため、個別分野の専門教育を行うこれまでの大学院とは、異なるカリキュラムを備えています。たとえば、国内外インターンシップや海外武者修業などの実践型科目のほか、茶道、華道、書道など、実習を伴う文化・芸術科目があります。本館や施設に京都/日本の芸術作品を展示するのも、このような教育目的があるからです。
AMP代表理事のF先生(大阪大学名誉教授)をはじめ、染織作家のHさん、事務局のUさんには、思修館の教育理念を理解いただき、ありがたいことに本館ばかりでなく思修館の研修施設にも、たくさんの芸術作品を選んでいただきました。おかげで、京都大学の大学院には珍しく、多くの芸術作品が収蔵され、日本文化の中心都市「京都」に培われ受け継がれてきた多様な芸術と伝統を日々の暮らしを通じて親しみ、思索と学習に励む環境が創られています。
東一条館は、明治期に京都市美術工芸学校(のちの京都市芸術大学)が置かれた地でもあり、ロビーは地域住民に開かれた公共空間ですので、誰でも展示作品を鑑賞いただけます。東一条付近を訪ねられた折には、立ち寄って楽しまれてはいかがでしょうか。