和して同ぜず、が通用しないとき
和して同ぜず、という言葉があります。
出典は論語・子路篇で、「人と協調しつつも、安易に妥協したり同調したりはしないこと」を意味します。
確かにいいことを言っているなと思います。
しかし一方で、いつもその方針が成り立つとは限らない、とも思います。
たとえばクラス全体で誰かをいじめていて、それに異を唱えたらみんなと「和する」ことはできない。
逆にみんなと協調しようと思ったらいじめを黙認するしかない。そういう状況もあり得ると思います。
こういう場合、和して同ぜず、は通用しません。
むしろ、私たちが直面するこの種の問題の多くはそうなのではないかと思います。
よほどすごい資質なり行動力なりがあったらともかく、普通の人ならそうなってしまいます。
つまり、和することがすなわち同ずることになってしまう。
だから難しいし、私たちは悩むのだと思います。
でもそういう状況にあって悩んでいる人に対して、「和して同ぜず」みたいなことを言ったらいかにももっともらしく聞こえるじゃないですか。
この言葉に限らず、もっともらしい助言は往々にしてそういうものです。
言葉の響きは識見があるようでもその実、空疎で実態にそぐわない。
答えがない状況では、下手な助言はかえって裏目に出ることもある。
ただ、黙ってその思いに耳を傾けるしかない、そういうこともあるのではないかと思います。
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