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運動会にはリアルな人間ドラマがつまっている

またまた運動会に行ってきた。今日は幼稚園だ。昨年はコロナがあったので、マスクして応援も最低限の人数で、みたいなルールが厳しかったんです。

今年は誰でもウエルカム。すばらしい。

あおぞらもいい感じ、気持ちのいい朝に園長先生の開会宣言がひびいた。

いなかの運動会は地域のひとにとってはまさにお祭りで、家族だけでなく近隣の住人、小学生もたくさんやってくる。

この園の卒業生は全員が同じ小学校にいくので、パイセンは先輩風をふかせながら初めての恩師との再会もできるというわけである。ちょっとエモいシーンもちょくちょく目にとまる。

ちなみに、うちのムスメの場合は運動会の応援は友達と遊ぶ口実になっている。

ムスメは敷地に入るやいなや、クラスメートと合流してあっという間にいなくなってしまった。途中で校舎の中を走っているという目撃情報が入ってきたので捜索に行ったら先輩風が暴風になっていた。

女子軍団は笑い過ぎて顔がおかしくなっていた。

そんな感じで、笑いと冷や汗にこと欠かないイベントなんだけど、もちろん胸熱のシーンもたっぷりあったので、印象的だったものを紹介しようと思う。

その①友情とライバルとの心のシーソーゲームな徒競走

この運動会のイチオシは、かけっこだ。年長から年中、年少と全園児が4人1組で直線40mくらいを走る。選手はひとりづつ名前を呼ばれたら大きな声であいさつをして、陸上競技用のピストルでスタートする。

パパママの前で走るのって緊張するよな…

年少のムスコはクラスメートの仲の良い子と同じ組で走っていた。一位になりたいと家でも言っていたので、ライバルに負けたくないという気持ちがそだっているのかもしれない。たのもしくなってきた。

ちなみに結果は堂々3位だったけど、本人の中では1位ということになっている。彼はそのあと一日中、ゴキゲンでお風呂もハミガキもスムーズだった。

一方、小学生のムスメは仲良しの子と競いたくないとよく口にする。いつも一緒に遊んでいる子が競う相手になるってフクザツだよね。


さて、競技は進み、目の前では女子4人組が走りだす。

あの子たちも仲良しメンバーなのかもなぁってながめていたら、あらら、前を走っていた子がころんでしまった。

おどろいたのか、ショックなのか、その子は立ち上がれないでいる。

ほかの3人はそのとなりを抜いていく。

あ~最下位だ。あの子大丈夫かな…。


すると1秒くらいのあいだに、3人は友達の異変に気がついた。

前を走っていたはずの友達が視界から消えたのだろう。


なんと、もともと2番手だった子はTOPになったのに、首を左右にふると、走るのをやめて振りかえった。同じタイミングで他の子も振りかえる。

観客席はその様子を固唾を飲んで見守った。

しばらくすると、ころんだ子は複雑な表情を浮かべながらゆっくりと顔をあげる。

そこには3人の友達が駆け寄っていた。
その後、仲良し4人組はいっしょにゴールを目指したのだった。

観客席からは「え?なんでとまっちゃったの?」という声があがったけど、4人組がゴールする頃には、その表情にすっかり魂が浄化されていて大きな拍手がおこったのだった。

そうだ、競争を生んだのはオトナだよなぁ。
子どもの友情はオトナの思惑に勝利したのだった。

最終種目、年長リレーのエースの涙

運動会のさいごを飾るのは年長さんのリレーだ。

こちらはクラス対抗なので、仲良しがチームメイト。自ずと熱も入る。

子どもたちは何日も前から、走る順番をじぶんたちで相談して決めて、練習をかさねて挑むらしい。なんと朝練も毎日のようにやっており、僕がムスコをおくりにいくと必ず目にするほどである。

年少、年中の子どもたちはそんな先輩の姿を毎日見ているので、あこがれの競技になっている。

当日知ったんだけど、このリレーはクラスの人数差をうめるために、2回走る子がいる。どうしても勝ちたい子どもたちは当然、足の速い、いわゆるエースに2回走ってもらう作戦を立てているようだった。

最終種目だけに観客席にも緊張感が走る。
年長さんのパパママも真剣な表情だ。
遊びまわっていた女子軍団もいつのまにか最前列に陣をとる。

第一走者がスタート位置にならぶと大歓声がおこった。

毎年見ているのでわかってはいたんだけど、幼稚園のリレーってけっこう差がつくんだよね。

ひとりひとりの発育さがあっても、全体でみるとバランスがとれるだろうと思いきや、全然バラバラだったりしてね。

さて、レースのほうはTOPの赤チームが半周差で独走。他の2チームは必死で追いつこうと応援にも熱が入る。

しかし、このタイミングで赤チームはダメ押しと言わんばかりにエースの1回目の出番になる。容赦ないな。

さっき、かけっこでめちゃ速かった子が赤チームのアンカーにいなかったので、おそらく彼女が2回走るのだろう。

エースはバトンを受け取ると期待通りにその差を広げていく。観客席から歓声があがる。



そのとき、事件がおこるのである。



エースは第3カーブでバランスをくずすと、減速してしまったのだ。

よく見ると、、靴が片方ない!!!


どうやら、途中で脱げたらしい。
エースはけんけんをしながら靴を探した。

その間数秒のうちに、半周遅れていたはずの2チームが抜き去った。マジかよ!!あせっているので靴もうまくはけないようだった。彼女が靴をはくころには逆に半周差がついてしまったのだった。


会場の誰もがエースの姿にくぎづけだった。
なんとかがんばってくれと応援にも力が入る。

エースは1回目の出番を終えると、そのまま順番を待つ選手たちの一番後ろについてタスキをうけとった。やはり、2度走るらしい。



レースはTOP2チームの接戦で終盤を迎えた。

年長のパパママは子どものチームを応援し、それ以外のギャラリーは赤チームを応援する。あのエースがもう一度走ることにも気づいているはずだ。

先生はエースにかけよると、靴のベルトをもう一度しめて、何か声をかけているようだった。

TOP2チームのアンカーに遅れて、赤チームのエースがバトンを受け取る。

残酷にも、その差は彼女自身が生んだ差のままだった。

エースはみるみるうちに差を縮めていく。因縁の第3コーナーにさしかかるころには祈るような姿が観客席にみられる。


最後に彼女にチャンスを…。


そのとき、ピストルが鳴った。順位が決まった瞬間だった。

エースは健闘したものの思うような結果につなげられず、ゴールとともに泣き崩れた。すぐに何人かの先生はとびだしていく、この姿を想像できていたかのように。


ああああ、最後の運動会をこんな思いで終わらせてしまうのかぁぁ。
まぁ、途中でとめるわけにもいかないし、勝負だしなぁぁ。

かけよった先生も泣いていた。
チームメイトも泣いていた。
もちろん観客席も泣いていた。

たくさんのハンカチがぬれて、多くのパパが涙を見せまいと背を向けた。
ぼくは観客席から目をそらすために思わず空を見た。


こうして、最終種目は幕を閉じたのだった。
この気持ち、コロナ禍では味わえてなかったな。

そのあとエースを見かけても僕は声をかけることはできないだろう。
けれど、あなたのことは忘れないよ。
来年、小学校の運動会で待ってるね。

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ということで、今日も読んで下さりありがとうございました!
それでは引き続き、ステキな週末を。

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