MMTメモ1 国債発行は国の借金ではない
勉強がてら、アウトプットした方が理解早いかと思ったので、メモ感覚で吐き出してみる。今回は国債発行(赤字国債)は抑えるのではなく、むしろ拡大させるべきという話。
【国の借金問題に関する疑問点】
テレビ、新聞ではよく使われる"国の借金"という文言だが、日本語的にも実際の動きについても間違いである。
また、形式上借金という形をとっているが、返済できなくなるケースは日本においてはあり得ないため、"国の借金で財政破綻する!"なんてことはあり得ない。
①政府と国の関係について
貨幣発行の説明の前に、政府と国をごっちゃにしているケースをよく見かけるので整理する。ここがわかってないと財政破綻論にごまかされてしまうため、雑にまとめてみる。
・国 : 人(国民)のあつまり=グループ
・国民 : グループに属する人
・政府 : グループの管理者
物凄く抽象化して書いているが、重要なのは、国≠政府ということで、政府は単なる人の集まりの管理人に過ぎないという点だ。
②"国際=国の借金"が文言としてあり得ない点
いわゆる国の借金というのは借り手側に実態(人でも組織でも)がある必要があるが、①で記載したように国はグループ、つまり概念でしかないため、借り手にはなりえない。この時点で既に用語としては誤りと言える。
また、国民が国債発行と引き換えにお金をもらうこともない(そんな経験をした人はいないはず)ため、消去法で考えても、借金をしているのは政府である。
実際に日銀(中央銀行)が国債を引き受けることで政府へ資金提供を行っているため、実務的にも借金を行っているのは政府である。
③"財政破綻"の発生確率はゼロである
よく、借金が膨らんで財政破綻するという話を聞くが、おそらく民間での借金と同じように考えている。
民間と政府での借金では大きく分けて2つ異なる点がある。
③-1.国債は担保が不要
民間の場合の借金の返済プロセスとしては、給与で返済していくのが基本ではあるが、それで賄えない場合には別のところで借金を行い、その金で返すという話をよく聞く。その際、民間であれば担保が必要となるが、借金のたびに利子で膨らんでいる分大きな担保が必要になり、どこかで用意できずに破綻してしまう。(実際はブラックリスト化などでもっと早く詰みそうだが、借金したことないのでわからない。)
ただし民間と違い、国際発行における担保は存在しない。無担保債として扱うため、返済しきれない分を借りて返すことが無制限に可能である。
*注意 この話は、現在日本の国債が円しか取り扱わないため成立する。例えばドルを借りている状態(日本では不可だが)では、日本円を渡して返済しようとしてもできないため、政府が自力で稼ぐしかなく破綻の可能性が発生する。なので、100%円建ての仕組みが崩れない限りは借り換えれば返済不能にはならない
③-2.返済の負担がほぼない
この話は、国際の買い手ごとに場合分けする。
・日銀に借りている分
日銀は、株の大多数を日本政府が持つ、つまり日本政府の子会社であるため、そもそも返済の必要がない。日銀は非営利であるため返済を求める必要もなく、要望(国債引き受け)の度にお金を発行しているため、日銀の予算を渡しているわけでもない。そのため日銀側に負担もなく日銀が破綻することもない。
なんなら、政府が日銀に払っている国債の利息に関しては必要経費を除いた分つまり日銀の利益は国庫へ返している(国庫納付金)。そのため、日銀は利益自体放棄している。日銀は単に借金という形式でお金を発行しているだけなので日銀にかかる負荷はなく、政府は政府で負担はない(または後で戻ってくる)。
・日銀以外の銀行の場合
ここに関してはそもそも返済を求めてくるケース自体がめったにない。負担となるのはせいぜい利息くらいになる。
国債を引き受ける目的は、銀行融資を会社が受けてくれない、つまり会社からの利息を得られないため、代わりに国債の利息を目的に引き受けている。なので好き好んで返済を要求するケースがほぼなく、また期限が切れたとしても銀行側は利息目当てに再度引き受けるだけなので、状況が変わらない。
なお、別に返済を求められた際に足りなければ、日銀に国債を引き受けさせて用意すれば問題ない。日銀側が無制限引き受けをすると言っているのもあるが、本来政府子会社のため断れない(というより、中央銀行の役目が貨幣発行なので、断る選択肢があること自体おかしいはず。)
③のまとめ
以上2点より出費自体が少ないため、当然負担もほぼない。足りなきゃ日銀に国債を引き受けさせればいい。この状態で返済しきれずに破綻することはまずありえない。
このよう、国債発行による資金準備は負担がほぼなく無担保のため、"政府が"財政破綻することは仕組み上あり得ない。必要に応じ、国債発行で資金を用意するのが際限なく可能であるため、返済できなくなるケースがあり得ないからである。(実際に無制限に行った場合、その資金を市場に流した際に過剰にインフレしかねないので、量は調整する必要がある)
なお、金利が上がって返済負担が上がった場合をなぜか考慮している記事がたまにあるが、いくら上がったとて、足りない分を国債で補うだけなので負担の大小は何の制約にもならない。
④もうちょい簡単に
正直難しい話を万人に理解してもらうのは難しいし、完全な理解は必要ないと思うので、もっと簡単に。
①で書いたグループの話になるが、ここにお金の概念を組み込むと以下になる。
お金 : グループ内でのやり取りの都合で作っている紙。グループの管理者が作っている(現実には日銀経由)
お金製造所 : グループの管理者が持っている、お金を作る場所。
この状態で政府が借金を返しきれないというのは、自分のグループの都合で、自分がもつ製造所で作っているお金を返しきれなくなる、と言っている、つまり自分で作れる紙なのに、その本人が返済しきれなくなる、というおかしな話になる。せめてここだけでも疑問を持ってもらいたい。
なんなら、貸手であるお金の製造所はグループの管理者が持つので、そもそも返済を求められない。別にしてもいいが、製造所が政府のものである以上、お金が政府か製造所のどこに集まっているかの変動でしかないため意味はない。
【ハイパーインフレは極論】
何かあるたびにハイパーインフレを持ち出されるが、これは完全に極論でしかない。1円発行したところで影響がないが、9999京とかいきなり発行して市場に流すようなら大きなインフレになるのは想定できると思う。
実際にやってみた場合、1円の場合民間の状況は何ひとつ変化しないが、9999兆流してみた場合は民間の供給能力で生産できるものをすべて買い切っても余る額を政府が市場へ流すことになる。ここまで行くと需要に供給が追い付かず、高くても買ってくれるため、民間側は値上げを行う(市場価値が上がる)。
このように、単に発行額の違いで影響が異なるだけの問題なので、発行量を調整してインフレになりすぎないようにすればいいだけのこと。
おまけ ハイパーインフレになった場合のイメージ
本来1000倍近くのインフレのことを言うが、規模はいったん10倍くらいで考える。(額が大きいと想像しにくいのと、戦後くらいしかそこまで膨大になったケースがないので実際あり得そうな範囲)
物価が10倍になるというのは、単に買い物に困るというものもあるが、給与も極端に上がる。ここで、給与が見合うだけ上がるならいいじゃないかと思うかもしれないが、今まで貯金していたお金の量は変わらない点が問題となる。要は貯金の価値が下がるのが問題で、今まで稼いでいた積み重ねより給与の方が高くなってしまう。
度が過ぎると貯金のお金で買い物ができなくなるくらい物価が上がってしまい、家賃や食事含め給与で払うことになり、その日暮らしの労働者が増えてしまう。そうなると治安も経済も当然悪化してしまう。
つまり、貨幣価値が急激に上がるとその国の国民の貯金がリセットされるようなもので、当然経済、治安、生活すべてめちゃくちゃになってしまう。これが過剰なインフレの弊害である。
そもそも国債発行でハイパーインフレが発生するか
1.現状デフレ下である
政府の投資により急激に物価が上がる程度にお金が政府から民間に流れる、つまり買い手がいなくて余っていた供給能力が使われる、ということになるが、現状過剰なデフレのため、民間に資金を流さないといけないしそれでようやっと正常化に近づく。
少なくとも、給付金で12兆円国債発行を行ったが、コロナ下とは言えインフレ目標2%なんて届いていない。絶対額が全く足りていないためである。2年間給付金を毎月発行した場合にも2%には届かない、というシミュレーション結果もある。この結果より、ハイパーインフレを気にするより、まずインフレにすることを考えないといけない
2.仮にインフレにできた場合、税金で調整される
よく聞くのが、インフレしすぎないように調整できるはずがなく、ある程度過剰になってしまう、という意見ですが、調整できる範囲でしかインフレはしない。というよりよほど変なことしなければできない。
日本の場合、所得税で勝手に調整される。所得が大くなればなるほど、所得のうち税金で支払う割合(額じゃない)が大きくなるので、よほど急なインフレでない限り、所得が増えても税が大きくなり、全体的には微増(多くても給与が1~2割増えるくらいになるんじゃないかな)する程度に収まる。
いわゆるビルドインスタビライザーといって、税金の累進課税性によって所得格差を自動で調整してくれる。そのため、インフレが目標を大きく超えてしまうようなことは、よほど発行しすぎない限り起こりえないか、起きても数年で収まる程度のインフレにしかなりえない。
【まとめ】
結局のところ、財政破綻になるプロセスがなく(あえてやろうとしない限りは)、またハイパーインフレもインフレ率を見つつ発行量を増やせば発生しないのはちゃんと検証すれば明らかである。
財政破綻を訴える人は、おそらく借金だから、で思考が止まっていると思うが、借金だから、○○して破綻する、っってところまで本来は考えないといけない。
国債は借金という形式をとっているからおかしな認識を持たれているのだと思うが、国債発行は、国内にお金をどれだけ流したかの量を負債という形で管理しているだけなので、実際は借金でも何でもない。
個人的な考えではあるが、経済政策はどうやったところで実験にしかならず(どの程度成長するかが結果論にしかならない)、試すしかない。ただ現状、ハイパーインフレだとか財政破綻だとか極論のリスクを過剰に恐れ、他の選択肢を探そうとせずに誤った政策(緊縮財政)を取り続けている。
過剰なインフレになるかもしれないが(発行量で調整できるが)、確実にインフレにできる手段(国債発行し、政策で民間、市場へ流す)がある以上、そちらをベースに考えるのが正しいと思う。