MMTメモ2 税で支払うわけではない

ちょこちょこ聞く、税は財源ではない、といういわゆるスペンディングファーストの話。たぶんペイントで雑に描いた絵入れたほうがわかりやすいので気が向いたら書く。

1.税が先にあるのはあり得ない

現在政府や国民含めた一般認識としては、税金で集めたお金で政策を取っている。ただ、実際には逆である。

なぜ順番が問題なのか

先に税金として民間のお金を回収することになるが、前提として民間がお金を持っていることになる。ただ、お金自体は政府(紙幣は中央銀行)が発行する、という点が問題になってくる。

お金を発行して、ただ素直に民間に差し出す、ということは政府もしない(特殊な事情で給付する場合は別)。基本的には政府が公共事業や公共投資、政策などの形で民間にお金を流している。

(クーデター等で国自体が変わった場合にお金は流用するケースもあるかもしれないが、基本的には国家設立の際は新規の通貨を作成している。)

そのため、国ができて最初に政策を取る際にはその国で使用できるお金は存在しない。

備考 明治時代の日本のケース

実際、明治政府は成立直後は古い貨幣を流用していたが、のちに古い貨幣を回収して明治通宝という貨幣を発行している。

一応交換という形で対応しているので先に集めるのも可能と言えなくはないが、その交換用のお金はどこから用意したの?って話になる。交換が前提とはいえ、民間から回収する前の段階でお金を用意している。税金で集めないと使えないというならば、この段階で用意ができないはずだからである。

2.最近(2020)の給付金は先に支払っている

実際に、現政府でも、手元にお金がなくても、税で回収せずとも貨幣を発行して政策を取ることは可能である。直近の例として給付金を挙げておく。

給付と財源確保の時系列について

特別低額給付金、総額12兆円の支出は全額国債発行で賄われた。給付金決定日(第一次補正予算の成立日)は4/30で、以後地域ごとに時期は異なるが約1,2か月で給付されている。

ただし、その財源となる国債発行は7月(第一次補正予算の閣議決定日)であり、この時点まで発行の了承が得られないため、国債は発行されていない。(公的機関とはいえ引用していいのか不明のため記載はしていないが、日付に関しては令和2年度予算のところに記載がある。)。

そのため、給付金に限っては、通常の国債発行すらせずに支払いを済ませ、あとから財源として国債発行を行っている。

どうやっているのか

支払い時点で使用したものは国庫短期証券(財務省証券)というもので政府が日銀に引き受けさせて予算を確保して実施した。

国庫短期証券は一応国債の一部ではあるが先述した"通常の"国債発行とは異なり、当年度で返済しない。そのため、予算というより、発行を待ってられない場合に支払いを済ませるために発生する仮のお金とみるとわかりやすい。一年間限定でしか存在していない以上、消えるお金を財源としては扱えない。

そのため、この資金は財務省の決算としては記載がなく、実際の支払い原資は7月の国債発行と記載される。なお、財務省証券もプロセス自体は国債と同様の流れで資金を確保しているので、単に対応が早いかの違いしかない。

3.まとめ

今まで過去の事例で色々説明してきたが、要するに、政府は税で予算を確保しているのではなく、先に政府がお金を使い(支払い)、その結果変化した格差や過剰な景気を調整するため、税金という手段を取っているだけである。

税金で帳尻を合わせているだけなので、政策の財源として税金を使用しているわけではない。極端な話、帳尻合わせを放棄すれば税金を取らず、政策だけを実施することだって可能ではある。(格差が拡大するのでおすすめはしないが)

まとめると、"税金は財源ではない"というのは、税で集めて使うのではなく、政策の影響を税金という形で調整(格差を調整)しているから、という話でした。


2021/04/13 追記

1.の備考として書いたやつ、よくよく考えたらとんでもない話だったので追記

既存の紙幣を新規通貨に交換する対応の部分、1回1回は個人や企業が相手なので微々たるものだけど、交換の目的が国に流通するすべてのお金の総とっかえなので、交換額=国に存在するすべてのお金となる。(交換漏れは考慮外)

額的にも莫大だし、何より国のお金全部と同じ額発行してるので、どうあがいても先に税でとるという対応なんてできるはずがない

何が言いたかって、要は交換には、事前にお金を用意しておく必要があるが、その際に国に存在するお金全額分、税金で収集する以前に用意している、という点がMMTの理屈が正しい何よりの証拠なのではないか、という話。

明治政府がやったように、日本政府だってその気になれば現在の日本国にある日本円全額分、税でとらなくても用意できることの裏付けだと思う。

上記から、MMTの理論でいう

・インフレ率を考慮する限り無制限に国債発行は可能

・スペンディングファースト(支払いが先)

というのを明治政府で既に実証済み、ということになる。

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