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理想の収入になって初めてわかったこと #子育てフリーランス 17話

【#子育てフリーランス これまでのお話】
夫が会社を辞めたことをキッカケに、さらにフリーランスとして軌道に乗ったカワグチ。しかし、夫が無事に転職したあとは、お互いに仕事が忙しくなり、育児と家事の負担も重なり、二人の仲はだんだんと険悪になってしまいました。夫と話し合いを試みるも、うまくいかず…!?

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夫が会社を辞めたことがキッカケとなり、フリーランスとして軌道に乗ったものの、夫婦関係は険悪に…。夫が無事に転職したあとは、お互いに仕事が忙しくなり、育児と家事の負担も重なり、二人の仲はだんだんと離れて行きました。

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このままじゃダメだ…夫と話し合いをしなければ…


夫が何を考えてるのかわからない。

考えていることを知るのも怖い。

もういっそ離れてしまいたい。

今頃は、そう思いつめることもありました。

​悩んでいても、答えは出ない。
だからと言って、この状態を無視をすることもできない。

夫のこと、息子のこと、仕事のこと、悩んで、悩んで、悩みすぎた結果……


夫との問題をいったん横に置くことにしました。

そして、仕事に集中して、お金を稼ぐことにしました。
それは、自分の力を試すことでもありました。

当時の私の収入は、夫の収入の手取りとほぼ同等。
フリーランスは、年金も税金も自分で支払うし、定期的に仕事が来るとも限らない。

例え同じ収入でも、夫と同じ収入とは言えない。


それが当時の私の目標になりました。

私の頭の中で、ゴングが鳴り響きました。

話し合いに応じてくれない、夫への宣戦布告のような気持ちもありました。


そんなことは夫は、つゆ知らず。

そうと決まってからは、私はとにかく思いつく限りの行動をしました。

それまで通りやっていた、営業、発信の量を増やし、実績をどんどん増やしました。

今まで、「家族の時間」「育児のため」と、大切にしていた時間を全て、仕事に費やしました。

夫との会話は、相変わらずほとんどありませんでした。


たまに話すことはあっても…


重い空気が流れていました。

​以前よりもっと…

家が荒れていく。

心も荒れていく。


その渇いた心を、仕事の充実感で埋めようとしました。
それは原動力となり、収入は、増えていきました。

フリーランスは、波に乗れば乗るほど、成果が返ってきます。


私は、一切休むことなく、働き続けました。

本来は寝るのが大好きな性格なのに、この頃の睡眠時間は、3〜4時間ほど。

朝起きて、子どもを幼稚園に送迎し、子どもが家に帰ってくるまでひたすら働き、家事をして、育児をして、寝かせた後も、深夜まで仕事をし続けました。

「好きなこと」で働き、お金を稼ぐことは、大変ではあるけど、やりがいも一際大きく、働いてる間は、辛い現実を忘れることができました。


夢中になって、周りが見えなくなるほど、働きました。


私は、「お金」に取り憑かれてしまいました。

お金があれば、何かが変わるはず…!

今の、この現状から抜け出せるはず…!

そう信じて。


ーそんな、ある日ー



フリーランスママの友人Iさんからランチに誘われました。

友人のお誘いに私は…

一瞬、駆け出しの頃に行った、怪しいセミナーのことを思い出してしまいましたが…。


私は、Iさんと一緒に、Hさんに会いにいくことに決めました。

ー当日ー


待ち合わせ場所は大阪市内のお洒落なカフェ。
ゆったりできる雰囲気です。

家事育児に追われている身にとって、こういう空間に来れるだけで癒されます。

お店の奥のテーブル席に、デザイナーの友人Tと、デザイン会社を経営しているHさんが、先に着いていました。




私たちは、取り留めもない話から、育児、仕事の話まで、話し続けました。
「働くママ」同士、会話がとても弾みました。

​Hさんのブログには、仕事の活動や、デザインの発信、他にも、家族とお出かけする日記も書かれていました。

​不思議で仕方がない…

どうしても聞きたい…

よし、聞いちゃえ…!

すると、Hさんの答えは……



意外なものでした。

私はHさんと初対面にも関わらず…

仕事と夫婦の関係について、質問しました。

​Hさんはどんな質問にも、気さくに答えてくれました。

待って…なんだかこの話は……

Hさんの仕事と家族の話は、まるで今の私の状況と同じものでした。Iさんも…。




共感しすぎて、お店で大きな声をあげてしまいました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


私はそのHさんの言葉に…
なんとも言えない、「諦め」の気持ちが湧きました。

なぜなら、夫との話し合いなら何度も試みようとしていたからです。

でも夫は話し合いをしようとすると、私を避ける…
その態度に、私もぶつかってしまう…。

Hさんと私は、そもそも人間的な器が違うのかもしれない。
この人くらい、器が大きくなったら、見えてる世界も変わるのだろうか。

正直な思いをHさんに話しました。

するとHさんは…

その言葉に、心が少し軽くなりました。


「仕事を頑張ってみたい…。」そう思いました。

それは、目の前にある問題にフタをしているのかも知れない。

だけど…今は目の前にある「やりたいこと」に集中してみよう。

もしかしたら、その先に今は見えない何かが、あるのかも知れない。


仕事や育児、夫婦関係のことまで話は尽きず、私たちは夕方まで話し続けました。

Hさんも、友人のIも、夫婦関係について問題があったなんて…
夫婦危機は共働き夫婦では珍しくないのかもしれない。

ただ、言い辛いだけで…。

本当は、私みたいに、ずっと抱えている人たちがいるのかもしれない。
問題は解決していないけど、人と「話す」ことで、悩みを「離す」ことができたように感じました。

ーそれから1年後ー


私たち夫婦の関係は相変わらずでした。

会社員の夫も、家に居づらいのか、以前よりも泊まりがけの仕事や、残業する日が増え、家で夫と顔を合わす機会も、随分と減りました。

その分、会話そのものが減り、ぶつかり合うこともなくなりました。

私は、一年前に比べて、体に小さな不調が出ていました。
睡眠不足で肌は荒れ、偏頭痛が酷く、胃の調子が悪い日々が続いていました。

だけど、生活に差し支えはないくらい。
それに、好きな仕事をしていたら、そんなことも気になりませんでした。


ーそんなある日のことー


その日は、夫が珍しく休日出勤をしていない日でした。
私は、自分の部屋に閉じこもり、仕事の売り上げを確認していました。


すると…

​​

収入が夫の2倍になり、それが3ヶ月継続していました。

1年前に目標にしていたことが叶ったのです。


あの時の……!


それは、自立をするために、夫と離れる選択肢を増やすために 立てた目標でした。


ですが、それ以上に溢れてきたのは……




妊娠、出産、育児を通して、

好きな仕事を諦めてしまってきた思い。

それが、ようやく叶えられたことに……


つい


バン!






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


あろうことか、私は満面の笑みで夫に話しかけてしまいました。
昨日まで、事務的な会話しかしていなかったのに。



そう例えるなら……



夫だって…私の仕事に、興味なんてないはず…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。


おそるおそる夫を見てみると…






・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。





・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


夫が、何を思っているかはわからない。

世の中には、妻の収入が自分を超えると、嫉妬する夫もいるという。

夫にももしかしたら、私に対して、悔しい思いもあるのかもしれない。

見せないように、隠しているだけかもしれない。

だけど、そうであったとしても…

​​






・・・・・・・・・パリン

・・・・パリン



その瞬間、私の中の、硬くて大きな殻が割れたような感覚になりました。


ずっと望んでいた目標の収入に到達することができた。

私は、もう一年前の私じゃない。

夫に頼らなくても一人で生きていける力がある。

あれだけ望んでいた「離れる」ことも選択できる。

なのに…

こんなもんなんだ…。

実際、こんなもんなんだ…?


私は……………。


ずっと……………………。



出産しても、好きなことをして働き続けられると思ってた。
周りを見たら、働いてるお母さんたちが普通にいるから。
私も、そうできると思い込んでた。


だけど私は、妊娠をキッカケに仕事がなくなってしまった。

それまで培ってきたものも、なくなってしまったような気がした…。

夫は働き続けた。変わらずに働き続けた。

それはそれで大変なことだとわかってる。

大黒柱のプレッシャーだって、経験して知っている。

産後しばらくして、ようやく働けるようになったけど、思い通りに働くことができない。


焦りと不安、家庭と仕事を両立できないことから、子どもと夫への罪悪感。



その思いを飲み込み続けてきた。

飲み込んだだけで、消化はできていなかった。

頭で理解することができても、心で納得していなかった。

その気持ちを素直に伝えることができずに、歪んだ態度で表してしまっていた。


私だけが、「仕方ない」って、諦めて……



その「羨ましい」の、もっと、もっと、奥底には「違う」思いが隠されていたんだ。



本当は………





・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


それに夫とは、まだちょっと普通に話せただけで、根本的な解決はしてない。

彼は以前にも増して、休日出勤も残業もしている。

私が働きたい気持ちをわかってもらえるかは、まだわからない。


話し合わなきゃ。


今なら、ちゃんと話し合える気がする。


ーその夜ー



ズキン。

​お腹が痛い。

ズキン。ズキン。


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


ズキン。ズキン。ズキン。ズキン。


ズキン。ズキン。ズキン。ズッキン。




ズッキン。ズッキン。ズッキン。ズッキン。ズッキン。




ソウちゃんの声が、だんだんと、遠くなりました。

つづく

読んでくれてありがとうございます!今のカワグチです〜!イヤァ三年前のお話ですけど書いてるとまた腹痛い。この「子育てフリーランス」シリーズ、友達のエッセイストさんに「腹痛エッセイ」って名付けられました。気に入ってます!今回は私が「夫婦関係の問題を一旦横に置いて、仕事に明け暮れてカネゴンと化したお話」です。これ、一見どうしようもない感じなんですけど、 振り返ると夫婦関係を見直すポイントだったなって思います。問題を見ないフリするのは、あんまり良くないことに思えますよね。見ないフリしても、結局そこに問題はありますから。だけど、「悩み」って、その時点での「自分」では解決できないです。問題に対して真っ正面に向き合って、「うーん…うーん…」って悩みまくってる自分では、解決できないんです。じゃあ、どう解決するのか?それは、悩んでいる自分を俯瞰して、客観的に見れるようにすること。そのためには、悩んでる自分から、つまり「悩み」から、一旦離れて見てみることなんですね。問題から離れるために、「ちょっと違う」ことをしてみる。「悩み」の対象に焦点を合わせるのをやめてみる。一旦、そこに置いておく。ヨイショ〜って!ここで、「ちょっと違う」ことが、ネガティブなことだと、もっと悩みが増えちゃうので要注意!ギャンブルしたりとか〜夜遊びしちゃったりとか〜。私の「ちょっと違うこと」は、「お金を稼ぐ」「仕事をする」でした。これはポジティブなことだったと思います。だって、私にとって、好きなことをして働き稼ぐことは、「ワクワク」、「ドキドキ」することだったから。 楽しくてしょうがなかったです。ただ、「体調を崩すほど」っていうのが問題でした。お金を稼ぐって、罪悪感を持ってしまいやすいんですけど、いざ、好きなことで稼ぐととても楽しいです。そして、「お金を稼ぐ」ことは、ただ「お金が増える」だけじゃないです。その人が、成長して、器が大きくなるから、お金が増えるんですよね。それは、仕事も家庭もうまくいっている人に、出会って気づいたことです。私が理想とする働き方、稼ぎ方をする人は、共通して、「実力があって、素直で、誠実で、自分(作品やサービス)の価値を知っている人」でした。ただの「いい人」だけじゃない。お金との付き合い方が上手い人。自分の価値を理解している人。そういう人たちと出会い、話を聞き、一緒にいる時間が増えると、自然と自分も、そういう人たちに似てきます。人の感情、思考、言葉は、伝播します。「類は友を呼ぶ」って本当なんだと思います。人との付き合いが、自分の環境を作ります。ここ、フリーランスで大事なこと!私は、人や本との、いいご縁のおかげで、仕事も夫婦関係もよくなったと思っています。そしてそれは、「好きな」仕事をしていたから出会いました。仕事じゃなくてもいいと思います!美味しいものを食べたり、ゲームしたり、空を眺めたり。小さいワクワクから、楽しむのもいいと思います。私の場合は、「好きな仕事」が、新しいステージに連れてきてくれました。昔の自分より、ステージが高くなれば、悩みも、俯瞰して見ることができます。すると、問題に対して解決できることもあるし、なんかもうどうでもよくなってることもあるし、私みたいに悩み事への捉え方が変わることもあります。自分の中に、気づいていない理由があったんだって。それで、私は「夫に嫉妬していた」ことに気づきました。夫に拒絶されることが「怖い」と感じるのも、当時は、なぜそう感じるのか気づかなかったけど本当は理由があったんですね。その「怖い」の感情の奥底には、隠れた気持ちがありました。ふと出てくる感情には、その奥底に理由があります。そこを見逃してしまうと…ただ「怖い」「嫌だ」という感情だけで終わってしまうと…大切なことを見逃してしまっていたかも知れません。あっぶね!!!でもこういうケース実は珍しくないんです。フリーランスママたちに取材して気づくことができました。「共働き夫婦の危機は珍しくない」。人に言い辛いから、抱え込んでしまいがちなだけで。それだけ、みんなギリギリのところで頑張ってるってことです。だけど、フリーランスママにとって、夫婦関係は、メンタルに大きく影響するところ。夫婦というのは、親子と違って、元々は他人。一緒にいられることは当たり前じゃないんですね。だから、私は夫と一緒にいるために、いろいろ工夫していることがあります!二人の時間を作るとか、家事シェアをすることか、詳しくは、『子育てしながらフリーランス』に書いたので、ぜひ読んでください。夫婦が仲良くすることってゴールはなくて向き合い続けないといけないので、このシリーズを掲載後にnoteでも書いて行きたいと思います。


⭐️『子育てしながらフリーランス』左右社
子育てしながらフリーランスで「いい感じ」で働くまでの赤裸々エッセイとフリーランスハウツーを詰め込んだ一冊。夫婦関係のことも赤裸々に書いてるよ。いい感じで働きたい人に届け〜!

⭐️『みんなの自己肯定感を高める 子育て言い換え事典』KADOKAWA
育児本だけど夫婦関係や仕事でも使える自己肯定感を高める子育て言い換え事典

⭐️『カワグチラジオ』Twitter
毎週Twitterスペースで、フリーランスやクリエイターの方と対談してます。
子育てフリーランスや日常のツイートもしています。気軽に絡んでね。

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川口真目(Masami Kawaguchi)
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