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コロナ禍における台湾への特別入境時の防疫システムについて

はじめに

私がなぜこの時期に台湾へ行くことになったのかについては、さほど興味もないでしょうから、ここでは現時点(2020年8月21日)の台湾の防疫システムについてのメモを記します。

COVID-19に対する台湾の水際対策

ご存知のとおり、台湾は世界的に見てもCOVID-19への対策が上手く行っている国だと思います。ただそれらは当初から全てが計画されて運営されているわけではなく、場当たり的な対応も含まれています。ウイルスは人間の都合で活動しているわけではないので、今のところ上手く噛み合っているという程度で認識しておくべきでしょう。

その意味でここではテクニカルな「仕組み」について紹介していますが、これを日本で模倣してよいわけではありません。台湾が初期の段階から対策が成功している理由は、これらの仕組みとは別のところにあります。

さて、台湾が選択した戦略は見出しにもあるとおり「水際対策」です。このあたりは最初から徹底していて、武漢で発生した初期段階の新型コロナウイルスを持ち込ませないように中国との交流を制限しました。以降、感染拡大の状況に応じて交流制限する国を減らしています。日本は2020年の3月から制限が始まり、私も台湾に行くこと(帰ること)ができなくなりました。

特別入境許可とPCR検査

私は生活の拠点を日本と台湾に置いています。台湾とは査証免除協定があり、短期で台湾にいるのならば(そして台湾で報酬を受けるのでなければ)ビザは不要でした。ところが台湾の水際対策の一環として査証免除の扱いが停止され、ビザがないと台湾に上陸できない取り扱いになっています。

ところがある理由をもって、特別入境許可という資格のビザが取れることが判り、そこで取得したビザがこちら。

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"SPECIAL ENTRY PERMIT FOR COVID-19 OUTBREAK" と書かれています。まぁ、これを機にARC(居留証)を取得しなさいということですか。ARCがあると今回のような特別入境許可は不要になります。

さて、日本の仕事のスケジュール調整なども含めて台湾に行く時期を検討していた矢先に取り扱いが変わります。「6月29日以降に台湾に上陸する場合には搭乗日3日以内のPCR検査陰性結果報告書(英文)の提示が必要」と条件が加えられました。(その後、搭乗日3営業日以内に変更)

自費ですので少々お高いのですが、PCR検査を受け陰性証明書を発行してもらったのが搭乗の2日前。ついでに抗体検査もしてもらいまして、これも陰性でした。これまでなんとなく熱っぽくて(平熱でしたが)息苦しいと思った日もあったのですが、全て気のせいでした。

搭乗から入国まで

台北代表処のWebサイト(例えば横浜分処のページ)にあるとおりなのですが、細かなところと注意点を補足しておきます。なお、これまでも台湾への往来は普通にしていたので、新たに加わった取り扱いについてのみ記します。

下記のスクリーンショットは8月23日時点のものです。内容は常に変更される可能性がありますので、最新の情報を得るようにしてください。

スクリーンショット 2020-08-23 9.54.44

1.PCR検査の陰性証明書は空港の航空会社のカウンターで提示します。
私の場合には特別入境許可のVISAも確認され、それぞれカウンターでコピーされました。

2.(ここは参考にならない部分)実はPCR検査で陰性が確認された段階でその後の手続は判っていたので、事前に日本から「入境検疫系統」サイトにパソコンでアクセスして必要事項を入力し、送信しておきました。
おそらく送信済みのエビデンスが必要だろうということでプリントアウトまでしておいたのですが、ここまでの一連の作業がちょっとしたトラブルを招きました。詳細は後ほど。

3.(ここも参考にならない部分)飛行機に乗り込んだ直後に私の携帯電話のショートメールで台湾の衛生福利部から「旅客居家検疫申報憑証」なるリンクが届いていたのですが、台湾についてから確認しようと思ってスルーしました。
後でこの「HOI先生」というのが自分のことだと気づきました(笑)私の名前の先頭と末尾の一文字、真ん中のOは "..." という意味のようですが、さすがにそれは雑な仕組みだと思います。誰だよ、ホイさんって。

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4.飛行機は非常に快適で(有り余るマイルを使ったビジネスクラスですし、ソーシャルディスタンスの関係なのか、隣もその隣も空いている)ぐっすり眠りまして、桃園空港に到着し、福利衛生部の関門がこちら。

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ここで、このQRコードからサイトにアクセスし、登録をしろということなのですが、こっちは「日本ですでに登録済み」だと思っていますので、話が噛み合わなくて苦労しました。まぁ、だいたいこのあたりから仕組みは判ってきたんですけどね。

5.元々、台湾で使う予定のデータ通信用のSIMは持っているのですが、この場で自分の携帯に差し替えるのは面倒だと思っていましたし、事前の情報で連絡のつく台湾の携帯電話番号が必要なのは知っていましたので、ここはスマホ操作に慣れない人のフリをして「QRコードが読めないのじゃよ(デジタルデバイド風)」と係員にヘルプをしてもらい、係員の私物スマホで改めて登録してもらいました。他の乗客も似たような感じ係員がフォローしていましたけどね。
ちなみに登録内容は、名前、パスポート番号、台湾に来た時の便名、座席番号、訪台目的、居宅検疫先の住所、そこまでの交通手段、そして台湾の携帯電話番号です。

6.ということで、「台湾の携帯電話番号がないのじゃよ(デジタルデバイド風)」と伝えると、そのまま連れて行かれたのが、

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「はい。いらっしゃ〜い」
「15日間有効のプリペイドのSIMがほしいのじゃが」
「700NTDです。じゃあセットアップしますね〜」
ということで、SIMを入れ替えてもらいました。

チラッと見てたら、電話の設定しかしてなくて、データ通信設定がされていない。けど、まぁいいや。電話つながるし。後でAPNだけ設定しておこう。

7.再度、登録を進めると、最後に台湾の衛生福利部からのショートメール(上記3.と同じもの)が私の台湾SIM携帯に届きます。このリンクをクリックして表示される画面に私のパスポート番号の末尾6桁を入れろとのこと。下記の画面はリンクをクリックした直後のものです。

第1位旅客 HOOOOOOOOOOOOOOOOI となってるでしょ? これは、HIROYUKI KAWAGUCHIの伏せ字です。ホーーーーーイではありません。

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8.ところが、実は上記の画面が開かない。なぜかと言うと、データ通信設定していないから。再び「ワシの携帯ではデータ通信ができないのじゃよ(デジタルデバイド風)」と伝えると、

空港のフリーWiFiを使ってね。

だって。それ、最初から言ってよー、とは口に出しませんでしたが。

9.ひとまずフリーWiFiを駆使して、目的の画面からパスポート番号を入れると、何やら画面が表示され、このスクリーンショットを撮れという指示が。

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なんだよ、スクリーンショットかよ。とは思いましたが、過渡期の運用としてはこんなもんでしょう。

10.このスクリーンショットを係員に見せて、入国審査ゲートへ。入国審査では別の便のベトナム人たちに紛れ込んだりしたのですが、そのあたりの話は省略。

振り返り

この後、14日間の居宅検疫として安心防疫旅館(Quarantine hotel)で過ごすのですが、その際にちゃんと自主隔離されているかを一日2回電話チェックされ、携帯の位置情報を把握されるという素敵な待遇を受ける際に、台湾の携帯番号が必須になることを考えると、常時台湾SIMを持っていない私の日本での事前登録にはあまり意味がないということが判りました。

どうせデータ通信用のプリペイドSIMは使う予定だったので、その代わりに15日間だけ電話番号付きのSIMを買ってしまうと考えればよいので、さっさと中華電信のカウンターに行くのが幸せかもしれません。

まとめ

繰り返しになりますが、台湾は水際対策の一環としてこのような措置をとっているので、市中感染が既に起こっている日本でそのまま適用するのがよいかは疑問です。やらないよりはマシかもしれませんが、ハッキリ言えば外の方が感染リスクは高いですからね。

今日の時点の「withコロナ」という社会は、「健康(感染リスク低)」と「経済活動」と「個人の私権(プライバシー等を含む)」のトレードオフになっていて、台湾は水際対策でゾーニングを掛けながら、そのゾーンの中で結果的に「個人の私権」を市民の合意を得ながら制限するという戦略をとっています。(腹の底では合意していないかもしれませんが、ひとまず受容しているのは事実。少なくとも外国人である私はこの段階で日本並みの人権を主張できる立場にない)

私自身は台湾のこれらの仕組みをさほど評価していません。やっぱり場当たり的な対策だし、説明もなく、内容もコロコロ変わる。その中でも評価する点があるのならば、人的フォローも含めてフェールセーフの枠はしっかりしていて、その中でショボい仕組みを組み合わせて運用していることだと思います。だって、WebフォームとSMS(ショートメール)とスクリーンショットですよ。私でも作れる仕組みですが、それだけ開発も容易だし、トラブル対応も早い。本人特定を携帯電話番号と位置情報の組み合わせで割り切るというのも携帯キャリアの協力さえ得られれば比較的容易でしょう(もちろんその前提として「個人の私権」は制限されている)。

絶対的な件数が少ないから成立している面もありますが、その意味で落とし所がうまいなーと思いますね。

居宅検疫期間中は静かにいろんなことができるので、仕事も捗ってしまうのですが、また明日以降にでも居宅検疫中のシステムについてご紹介したいと思います。ではではー。

台北市内のある安心防疫旅館の一室より。


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