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桂枝雀・佐々木裁き(佐々木政談)【落語あらすじ/解説】


佐々木裁きとは

「佐々木裁き(ささきさばき)」は、古典落語の演目です。別題には「佐々木政談(ささきせいだん)」、「佐々木高綱(ささきたかつな)」、「池田大助(いけだだいすけ)」があり、その原話は『一休咄』とされています。3代目笑福亭松鶴の作とされるこの話は、幕末期に実在した幕臣佐々木顕発を主人公としています。

あらすじ

名奉行の市中見回り

名奉行として知られる佐々木信濃守(佐々木顕発)は、ある日お忍びで市中を見回っていると、子供たちが裁判ごっこをして遊んでいる場面に出くわします。奉行役の子供が「佐々木信濃守」と名乗っていたため、佐々木は興味深く見守ります。その子供は他の子供たちの争いを理にかなった方法で解決し、佐々木を感心させます。

子供の素性調査と呼び出し

佐々木は家臣に、その子供の素性を調べさせ、高田屋綱五郎の息子・四郎吉であることを突き止めます。佐々木は高田屋父子を奉行所へと呼び出し、綱五郎は息子が何か悪さをしたのかと心配しますが、佐々木は先の件を話し安心させます。

四郎吉の機知

佐々木は四郎吉に様々な質問を投げかけますが、四郎吉は当意即妙な回答を次々と返し、ますます佐々木を感心させます。最後に佐々木が「座敷に飾られている衝立の絵の中の仙人が何と言っているか?」と尋ねると、四郎吉は「『佐々木信濃守は馬鹿だ。絵の中の人物が話すわけがないのに』と申しております」と答えました。

四郎吉の登用

この回答に感心した信濃守は、四郎吉を士分に取り立てることを決め、綱五郎に四郎吉を預けるよう申し入れます。四郎吉も武士になるにあたり名乗りが必要となり、四郎吉は「佐々木四郎高綱」と名乗ることを提案します。信濃守は「それは我が家の祖先の名前である」と返し、四郎吉は「いいえ、平家(平気)でおります」と答えます。

バリエーション

上方落語のサゲ

上方落語では、四郎吉が士分に取り立てられる場面で話が終わる人情噺のパターンもあります。

大岡政談としての演出

3代目三遊亭金馬はこの話を大岡越前(大岡忠相)を主人公とする大岡政談ものとし、小僧を池田大助とした「池田大助」という題名で演じています。

参考文献

  • 東大落語会『落語事典 増補』(改訂版(1994))青蛙房、1969年。ISBN 4-7905-0576-6。

  • 江國滋『古典落語大系』三一書房、1969年。

  • 相羽秋夫『現代上方落語便利事典』少年社、1987年。

佐々木裁き(演:桂枝雀)


【主な登場人物】

  • 西町奉行・佐々木信濃守

  • 松屋表町の桶屋、高田屋綱五郎のせがれ:四郎吉(しろきち・13歳)

  • 四郎吉の遊び仲間

  • 町役その他近所の住人

  • 西町奉行与力同心ほか


お奉行さんとは、江戸時代の奉行職のことだ。大岡越前守、遠山の金さんが有名だが、他にもたくさんの奉行がいた。その中で嘉永年間に大阪へ赴任してきたのが佐々木信濃守ささきしのののかみだ。

大阪は商業の町であり、お金の力が大きく働く。しかし、裁判事に金の力が働くのは芳しくない。原告も被告も賄賂を渡して裁判を有利に進めようとする。賄賂を受け取ると、奉行も人間だから判断が左右される。これが一番悪い。

佐々木信濃守は、この悪習を断とうと町中を見回りしていた。ある日、安綿橋の南詰で子どもたちが遊んでいるのを見かけた。子どもたちは二人を後ろ手に縛り、竹の棒で叩きながら「きりきり歩け」と言っている。三蔵が「これは小児の戯れ事にしては度が過ぎる」と言うが、佐々木信濃守は「上方ではこういう遊びが流行っているのかもしれない」と様子を見ることにした。

子どもたちは材木置き場に着き、二人を座らせる。別の子どもが材木の上に座り、「両名の者、面を上げよ。余は西町奉行佐々木信濃守である」と言う。佐々木信濃守は、自分と同姓同名の子どもがいることに驚く。


佐々木信濃守がさらに様子を見ていると、子どもたちは「往来の侍、吟味の邪魔だ、脇に寄れ」と言い、佐々木信濃守を追い払う。佐々木信濃守は苦笑しながら少し離れた場所から見守ることにする。

子どもたちは喧嘩の次第を説明する。喧嘩は「一から十まで「つ」が揃っているか」という問いから始まった。四郎吉が「十には「つ」がつかない」と反論し、喧嘩になったのだ。佐々木信濃守は「友達とは仲良くしなければならない」と説教し、特別に許すことにする。四郎吉は「一から十まで「つ」は揃っているのか」と尋ねるが、佐々木信濃守は「揃っている」と答える。

四郎吉は、佐々木信濃守に「十には「つ」がつかない」と言うが、佐々木信濃守は「とつとは言わないが、「とぉ」に「つ」をつけるべきだ」と説明する。これで一件落着となる。

その後、町役人が四郎吉を連れて西のご番所に向かう。町中が大騒ぎとなり、与力や同心たちが揃う中、佐々木信濃守が四郎吉に尋ねる。四郎吉は「住友の浜でお会いしました」と答える。

佐々木信濃守は「一から十まで「つ」が揃うという難題をよく解いた」と感心する。四郎吉は「お奉行さんは高いところに座っていると気持ちがいい」と言い、佐々木信濃守も「どんなことでも答えられるか」と尋ねる。四郎吉は「隣に座らせてもらえれば答えられる」と答え、佐々木信濃守はそれを許す。

四郎吉は、佐々木信濃守と一緒に座り、「星の数を知っているか」と問われる。四郎吉は「お白州の砂利の数はわからないが、星の数もわからない」と答える。佐々木信濃守は饅頭を出し、四郎吉に与える。四郎吉は「饅頭を買ってくれる父親と、小言を言う母親、どちらが好きか」と問われると、「どちらも同じだ」と答える。

佐々木信濃守は「与力の身分と心意気を知っているか」と尋ねる。四郎吉は、天保銭を使って「金のあるほうに傾く」と答える。これにより賄賂が横行していることを指摘する。佐々木信濃守は「以後、そういうことは言ってはならない」と警告し、さらに絵の仙人が何を話しているのか尋ねる。

四郎吉は「仙人が佐々木信濃守は馬鹿だと言っている」と答える。佐々木信濃守は怒るが、四郎吉は「絵に書いたものが話すわけがないのに、それを聞けというのは馬鹿だ」と説明する。佐々木信濃守は、四郎吉を十五歳まで親元に置き、十五歳になったら自分が引き取って養育すると決める。

後に四郎吉は有名な天満与力として出世することになる。この物語は彼の生い立ちの話である。


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