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【社会環境部会コラム】社会と環境について思うこと(18)ナラ枯れと森づくり

ナラ枯れの進む平地林

 緑の中を散策すると気持ちがよいです。私は時間があると(仮称)川越市森林公園計画地や飯能市の天覧山・多峯主山等の緑の森を散策します。ところが最近、ナラ枯れが原因の「倒木や落枝注意」の看板が見受けられ、散策の危険性が高まっているといいます。

 私は7年前まで務めていた会社で、飯能の社有林の管理を10年間にわたり従事しておりました。

 2014年8月、毎日散策とごみ拾いをしていただいているボランティアの方からナラ枯れの木がある、根本にフラスが落ちているとの連絡がありました。

 埼玉県の担当部局に調査依頼をしたところ、カシノナガキクイムシではなくヨシブエナガキクイムシであり、問題はあまりないのではないかとの回答でした。県の担当の一人は、新潟県の群馬県との境あたりがナラ枯れでたいへんだったが、今は新たな木に更新され青々しているとの話があり、ナラの木の自然淘汰と理解しました。

飯能市大字飯能 大径化したコナラ林と谷津田

 昨年ごろから、(仮称)川越市森林公園計画地ではカシノナガキクイムシによるナラ枯れ多く発生し、対策作業が行われております。ナラ枯れにより景観が変わり、「倒木や落枝」の危険性が増しております。

(仮称)川越市森林公園計画地
2014年8月 カシノナガキクイムシの調査

黒田慶子教授の講演と内容の概要

 2月2日午後に、三富地域農業振興協議会主催で「三富地域の平地林をナラ枯れから守るために」との演題で神戸大学農学部黒田慶子教授のお話がオンライン形式でありました。

 「本来の里山は人が管理する若い林」で農用林として管理されてきたが、林が1950年代のエネルギー革命で薪が石油に代わり、落ち葉(堆肥)が化学肥料に代わり、コナラ・クヌギの萌芽更新が行われず、高齢化・大径化した弱った木にカシノナガキクイムシが入り込み、一緒に病原菌が持ち込まれ、木を枯らす。ナラ枯れ対策のポイントは、萌芽更新か樹種の転換を図り、育った樹木を販売し土地所有者に経済的利益をもたらすようにすること。

 以上の内容でしたが、森林管理の業務を行っていた立場から見るとたいへん参考になる話でした。

おわりに

 1960年ごろまでは、山持ちは大変裕福でしたが、今は、山は山持ちにとって負担となっております。森林は、災害防止、環境、健康等の多くの重要な機能を担っており、財政難の折りですが、公共事業として持続的な保全の推進を望むものです。

(菊地三生)

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