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川越の生き物調査―5年間
1.概略
川越にはいったいどんな動植物がどれくらいいるのか? 最近は外来種ばかりが目立つけれど、在来種はどうなっているのか? 生き物調査はこのような疑問から始まりました。2016年3月に「第三次川越市環境基本計画」及び「川越市緑の基本計画」が策定され、その中に市民参加による生き物調査が位置づけられました。
かわごえ環境ネット自然環境部会は、2017年から環境政策課と協働して生き物調査に取り組むことになりました。一般市民と自然環境部会と合わせて20数名の調査員で進めてきて、ここで5年間が経過しましたので、中間まとめとして2021年10月末までの調査について報告書を出すことになりました。データ数は動植物合わせて21,000件ほど、川越市のメッシュコード数141のうち、ほぼ全域をカバーできました。
分類ごとの報告数(表1)を見ると植物が一番多く、次いで昆虫、野鳥と続きます。それ以外の魚類、爬虫類、両生類、哺乳類などは、出会う場所や季節が限られていたり、元々種類や個体数が少なかったりという難しさがあります。たまたま運よく(悪く?)ヘビに出くわしたとか、広い河原のやぶでひょっこりタヌキに出会ったなどの情報ですから、件数が少なくなります。
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2.植物
報告数は約12,000件、834種でした。埼玉県の維管束植物種が2,300種ですのでその36%にあたります。山や丘陵のない中でけっこうがんばったと言えるでしょう。報告件数100以上は表2のとおりです。絶滅危惧種は50種、科についてはキク科が81種でトップ、次いでイネ科、カヤツリグサ科と続きます。休耕田や道端、土手で繁茂している様子が浮かびます。
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3.昆虫
調査報告は4,216件でその種数は366種になり、内訳は14目、100科の昆虫が報告されています(表3)。川越市で観察された昆虫に対応する埼玉県に生息する昆虫は約10,717種です。川越市の調査結果が埼玉県の中でどの程度かを評価することは、市内での調査の妥当性を判断する基準と考えられます。種類数の少ない昆虫は、種類を網羅していると考えられます。観察を継続してきたチョウから見ると、埼玉県で見られる約40%になっており、市内の環境を考えるとこの程度は必要ではないかと考えられます。
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しかし、カメムシ目、チョウ(ガ)目、ハチ目、コウチュウ目、ハチ目は5%以下の観察で、市内の生息や分布を知るためには今後の観察が必要となっています。この結果は、専門家でない市民が5年間で観察した生き物としては大きな成果だと思います。また、次へのステップになると期待します。
4.付記
生き物調査の他の分野についても、オールカラーで50ページの報告書に詳しくまとめています。ぜひお手に取ってご覧ください。問い合わせは、環境政策課(Tel.049-224-5866)または自然環境部会会員まで。
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(賀登環)