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川越氷川祭#2-神幸祭 神輿行列の魅力・見どころ-
川越まつりといえば、最もよく知られているのは山車行事でしょうか。職人技が光る彫刻、鮮やかな刺繍が施された幕、そして上層に鎮座する精巧な人形たち……。
どれも見応えがあり、なかでも山車同士がすれ違う際に囃子で競い合う「曳っかわせ」は圧巻で、川越の長い歴史と豊かな文化が今も息づいていることを感じさせてくれます。
前稿では、川越氷川祭の由緒や歴史的な変遷についてお伝えしました。
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今回はそんな山車行事の陰に隠れがちな神幸祭に焦点を当て、お祭りにお越しの皆さまが事前知識を携えてより味わい深い体験になりますよう、その魅力や見どころをご紹介したいと思います。
【2024年のスケジュール】
10月14日 例大祭(11:00~)・祭礼始之儀(17:00~)
10月15日 神幸祭日程変更奉告祭(10:00~)
10月19日 神幸祭(13:00~)・山車行事
10月20日 山車行事・本殿彫刻特別拝観(14:30~16:30)
10月21日 祭礼納之儀(18:00~)
※今年は14日~21日までが祭礼期間です。
神幸祭の始まり
その前に、少し神幸祭の起源を振り返ってみます。約370年前の慶安元年(1648)。川越藩主である松平信綱が神輿・獅子頭・太鼓・法螺などを氷川神社に寄進し、江戸の天下祭に倣った祭礼を奨励したことが始まりです。
神幸祭は、神輿に乗られた氷川の神様が町内を巡行し、人々の幸福と町の繁栄を祈る儀式です。当初は御神幸に踊り屋台や仮装行列などが随行していました。
やがて江戸祭礼で山車が主役となると、川越でも山車が神輿に随行する形へと変化していきました。
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現在では、文政9年の「氷川祭礼絵巻」を再現し、神様をお乗せした神輿と、それを護る様々な所役の一行が町内を巡行しています。今では幻となった江戸の天下祭行列の姿がここに甦ります。
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それでは、神幸祭当日の流れに沿って、その魅力や見どころをご紹介できればと思います。
所役を与えられ、神輿とともに巡行する
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朝7時、社殿にて「御霊遷し(みたまうつし)」の神事を行います。御霊遷しとは、神様に神輿にお乗りいただく神事。「彦神」「姫神」の2基の神輿へお乗りいただきます。
少し補足いたしますと、本来は10月14日が例大祭、15日が神幸祭と日程が固定されていました。これには14日の神事であらたまった神様に翌日町内へ渡っていただき、ご神徳を仰ぐという意味が込められています。
しかし近年では、道路交通事情などの影響もあり、地域からの要望を受けて氏子総代会で協議し、毎年出御の日程を決めています。しばしば「第三土曜日」へと変更が続く状況ですが、当神社としては本来の15日に執り行うべきという姿勢を堅持しています。
そのため、神幸祭の日程を移動しなければならない場合には、事前にその旨を奉告する「神幸祭日程変更奉告祭」を厳修し、神様には当日朝に神輿にお乗りいただく流れになっています。
昼12時45分、御霊遷しの後は神幸祭行列の「召立て(めしたて)」の儀式を行います。神幸行列には、東西南北から来る魔物から神様を守護する「四神旗」や、魔よけの「獅子」、神様の渡御にお供して雅楽を奏でる「楽人」など様々な所役があるのですが、それらを神前で申し付けるものです。
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名前を呼ばれた奉仕者は「おお」と応え、神前に向かって一拝。このようにして総勢100人以上の召立てを執り行っていきます。
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いよいよ川越の町へ
午後1時、太鼓の音とともに神幸行列は神社を出発します。
行列の最後には一部の山車が随行。そのほかの山車は町内を曳行し、町のあちこちでお囃子と踊りを繰り広げながらお祭りを盛り立てていきます。
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神幸祭 神輿行列の見どころ
時代とともに変化してきた神輿行列の経路。現在は下図のオレンジ線のルートを巡行します。
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どの場所からでも行列の様子をお楽しみいただけますが、特に見どころなのは以下の2か所。
川越一番街商店街
直線道路のため、長い行列全体をご覧いただけます。蔵造りの町並みで電線などもないため、まるでタイムスリップしたかのような幻想的な光景が広がります(神幸祭行列、到着予定時間13時15分頃)。
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川越市役所前
川越市役所を川越城に見立て、神幸祭行列と山車が整列します。ずらりと並んだ行列を見ることができるのは、この場所のみ。全体をゆっくり見たい方におすすめです(神幸祭行列、到着予定時間13時40分頃)。
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「動く文化財」と呼ばれる豪華な山車はもちろんのこと、祭りの起源である神幸祭行列も川越氷川祭の大きな魅力のひとつ。数百年前の川越に想いを馳せつつ、その厳かな雰囲気をじっくり味わっていただければと思います。
最後に、各山車の動きはアプリで確認することができます。神幸祭行列の動きと併せてぜひご利用下さい。
<川越氷川祭シリーズ>
■川越氷川祭の由緒や歴史的な変遷について