【俳句小説】抜け殻からサナギ #3
あたりまえの日々奇跡かな有無日
季節は移ろい、日常は戻っていった。
友だち夫婦とご飯食べたり、旅行に行ったり、妊娠前と変わらないような日々を送っていた。
6月に入った頃、一人暮らしをしていた母が具合が悪いと連絡があり、わたしは病院へ付き添って行ったのだった。
検査をした後、わたしだけが先生に呼ばれたとき、
ドラマみたいだな
そんなことを思いつつ診察室のドアを開けると、先生の表情から嫌な予感がした。
お母さまは、膵臓がんです。手術は難しく、おそらく余命3ヶ月です。
どうしますか
と聞かれて咄嗟に、母に余命のことは言わないでくださいという言葉が出た。
子供のような感性の母は、怖がりでとても受け入れられると思えなかった。怖れはわたしが引き受ければ良い。
冷静でいられたのは、数年前の出来事を経たことで逞しくなっていたのかもしれない。ただ奇跡を待つしか無い、3ヶ月がスタートした。