今日の鴨川デルタ
京都に引っ越してきてこの春で2年になる。私のそばにはぐんぐん育ってゆく小さな娘と、お店でメニューと語り合う"くいしんぼう"な相方がいて、そして近所に鴨川デルタがある。
慌ただしい毎日。たとえば夕飯の買い物へ行く途中の10分や20分、少しでも時間ができるといつも橋の上に立っている。
デルタを見下ろしながらふぅーっと深呼吸して、川のせせらぎ、トンビのピーヒョロロロにじっと耳を澄ます。
大きな犬を連れた近所のおじさんが散歩をしている。八ッ橋の紙袋を下げた修学旅行生たちのグループ、楽しそうに遊ぶ子どもの笑い声、静かに寄り添う若い恋人たち、異国の空気をまとっている旅人など…。あの人はどこから来たのだろう、何をしているのだろう。
そんなことを考えながらデルタを行き交い、飛び石の上をすれ違ってゆく人々をひたすら眺めている。
少しだけいつもの"自分”を離れて、ここではないどこかをたゆたう。まるで旅の中にいるみたいに私は自由に呼吸をしている。
昔住んでいた懐かしい街やかつて旅をしたところ、まだ見ぬ場所に思いを馳せることもある。しばし時間や空間を超えてあちらとこちらを行ったり来たりする。
ふと、何かを見つけてシャッターを切る。できるだけ素直に淡々と写そうと思っているけれど、これがなかなか難しい。ときどき自分の興奮が写ってしまう。でもとにかく、まるで何かの儀式みたいにここに来たらシャッターを切る。そう決めている。
そしてそのままカメラをしまうこともあれば、デルタに降りて何十枚も撮ることもある。面白そうな人がいたら話しかけてみたりもする。
短い旅を終え、いつもの日常へ戻る。不思議とさっきより少し上を向いている。良い出会いがあったときは心もほくほくしている。
夕飯は何を食べようか。明日の朝食べるパンと卵はまだあったっけ。鼻歌を口ずさみながら近くの商店街へ買い物に急ぐ。
「今日の鴨川デルタ」はそんな私の日々の旅の記録である。
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