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毎日がクリスマスみたいだね。
ウソみたいな本当の話ですが、3週間ほど前に家が火事になりました。
火事になってからの毎日、それは「失ったもの」に気づき続ける日々です。
初日は、靴でした。
僕は「渋谷のラジオ」というコミュニティFMの番組「渋谷のテレビ」でパーソナリティをやっているのですが、あの日、火事のことを最初に伝えた友人は、xそこで一緒に出演している日本テレビの土屋敏男さんと@EKIDEN_Newsの西本武司さんでした。
出火したのは朝8時頃でしたがそれからは怒涛のような1日でした。会社への連絡、宿泊先の手配、警察の聞き取り、消防の現場検証などに忙殺され、ようやく一息ついたのは18時すぎでした。そのとき、なぜか2人に連絡しようとおもったんです。いつも連絡用に使っているFacebookメッセンジャーのグループに「家が火事になり、焼け出されました」と書き込みました。すると西本さんからすぐにこんなメッセージをもらいました。
「皆さんの靴のサイズを教えてください。手配します。」
一瞬なんのことだかわからなかったのですが、しばらくして「僕らは、靴が焼けちゃってないんだ」ということに気づきました。
出火した時、僕と妻はすでに家を離れていたので、その時履いていた靴がありました。しかし子どもたちはスリッパや、素足で、逃げており、それしか履物はありませんでした。玄関と靴箱にあった靴はすべて燃えてしまいました。焼け残った家族の靴は、僕と妻のたった2足だけでした。
火事で焼けだされたら、靴がなくて困るだろう、と看破した西本さん、本当にすごいと思います。実際に彼は翌日、家族5人分の靴と、とりあえずの服と、リュックを避難先のAirbnbに届けてくれました。
それからの毎日、暮らしのなかで「失われたもの」に気づいていきます。料理を作ろうとすれば調味料がない。ご飯を食べようとすれば、おはしがない、茶碗がない。出かけようとすればコートがない、財布がない。寝ようとすれば布団がない。生活をするために必要なものが一切ありませんでした。
今回の僕らの火事からの復興をサポートしてくれているFUKKO DESIGNの2人の理事、木村充慶さんと磯田さんは、そんな僕らの状況を見て、Amazonでウイッシュリストを作りましょう、といってくれました。炊飯器とか、ホットプレートとか、コップとか、そういう生活必需品が家族で吟味して、Facebookの友達限定のページに以下の文章をつけてアップしました。
厚かましいとは思いましたが、Amazonでリストをつくりました。値段が高いものも入っていますが、いつの日かあの家で暮らせる日が来た後も、ずっと使い続けられるものをと、選びました。ここに順次、必要な物をアップしていきます。
「なにかできることがあったらいってね」と火事のあと、よく言われるのですが、なかなか「じゃあこれをお願いします」ってなかなかいいにくい。でもウイッシュリストであれば、家族で欲しいものを吟味して、その都度上げていくことができます。
しばらくは生活必需品でしたが、生活が少し落ち着きはじめると今度は、心を満たすものが足りていないことに気づき始めます。
子どもたちが大好きだった絵本、みんなで遊んだボードゲーム、中学高校とバスケットをしてきた長男のバスケットボール、妻がよく弾いていたピアノの楽譜、僕のランニングシューズ...そういうものの「喪失」に日々気づき、家族で話し合い、ウイッシュリストにあげていきました。それは火事に失われた「家族の記憶」を回復していく作業でもあります。
また焼けた家が再建されるまでの間、僕らは仮住まいをすることになるわけですが、仮住まいだからこそ、必要となるものもあります。例えば小学生の娘たちのスマホです。彼女たちは学区をこえて小学校に通うことになりました。我が家ではスマホを持たせるのは高校生になってから、という暗黙の了解がありましたが、さすがに遠距離を登校するにはスマホが必要だろうということになりました。それは親しい人に「使っていないスマホがあったらください」と呼びかけました。
すると日本テレビの土屋敏男さんが、iPhone6plusをおくってくれました。箱をあけると隙間にぎっしりとチョコレートが詰まっていました。このスティーブジョブズばりの演出に、箱をあけた時の娘は大喜びでした。
そんなわけでありがたいことに、仮住まいにはほぼ毎日なにかが届きます。ウイッシュリストからのものあれば、友人知人からの贈り物のこともあります。
そんなある日、娘がぽろっといいました。
「パパ、毎日がクリスマスみたいだね」
多くのものを失ったことに向き合うことは辛い作業です。でも沢山のひとたちとともに、その喪失を回復していくことで、僕らの家族は新しい歴史を紡いでいるのかもしれません。人を思いやる心のありがたさを痛感しながら、ひとつひとつ暮らしを取り戻す日々です。
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