はだかの王様
4年前のことだが、あるプロジェクトを手伝ってほしいと呼ばれ、打ち合わせに参加した。参加者は4人。その部署を統括する部長が、ひとり熱弁を振うミーティングだった。やれやれ、これは打ち合わせというよりは、独演会だな、そう思いながらぼくはリュックからパソコンを取り出した。大事なことをメモしようと思ったからだ。
その人の話を聞きながら、パチパチとキーボードを打っていると、その人が突然、怒鳴り出した。
なぜだかわかりますか?
その人は、こう怒った。
「人が話をしているときに、パソコンを打っているとは失礼じゃないか」
最初、何を言われているのかわからなかった。そしてまもなく理解した。その人はパソコンではなく手帳を使う人だった。周りの人たちは忖度をして、ミーティングでパソコンを使ったりしなかったのだ。しかしその頃からノートパソコンでミーティングに臨むのは、僕にとっては当たり前だったし、テレビでみる首相の記者会見でも、記者たちは皆、爆音でキーボードを叩いていた。
ただ、その人にとっては「失礼な行為」だったのである。
反論する気にもならず、パソコンをリュックにしまい、ちょっとお役に立てる自信がないので失礼します、とその場を立ち去った。後ろから、その人罵声が聞こえてきたが、無視した。
この人は、ふたつの意味で不幸だ。
ひとつは、世の中の変化を捉えきれていないこと。
もうひとつは、周囲の人から教えてもらえなかったことだ。
これでは「裸の王様」だ。
世界がアップデートされるスピードは、ますます早くなっている。
大きな組織では、いまだ年功序列が根強い。それはそれで否定しないが、年齢を重ねると、”価値基準”のアップデートは難しくなる。またその組織のなかで、地位が高くなり、それに胡座をかいていると、社会の常識から大幅にズレてしまう可能性が高い。
そのズレがSNSに晒されれば容易に炎上する。政治家の発言がたびたび炎上するが、それがいい例だろう。
それを避けるのは、どうすればいいのか。
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