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川端堂おすすめの書籍

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東京・神保町のシェア型書店「SOLIDA」の棚主「川端堂」です。気に入った本をこちらのマガジンでご紹介します。随時更新していきます。既に売れてしまった本や、手放すのが惜しく販売し…
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#写真集

カメラ目線の写真に魅かれた『旅をひとさじ』

私たち「川端堂」の最近のおすすめ本は『旅をひとさじ』(文・写真:松本智秋)です。 この本は写真が多くて、いっそ「写真集」と言ってもいいと思うんですが、被写体の人たちがしっかりこちらを見ているのが素晴らしいです。 内容はというと、ユーラシア大陸各地のイスラム系の街を訪ねた一人旅の記録なんですね。 コロナ前の数年間に中国、中央アジア、イラン、レバノン、シリア、ブルガリア、ロシアなどを巡っています。政情不安な地域も多いので、いまでは行きづらい場所も。 現地を散歩し、現地の人と会話

盛岡・中津川の今昔を比べてみました (薗部澄の写真集『北上川』より)

岩手県盛岡市の真ん中を流れる中津川は、地元市民にも観光客にも愛される美しい川です。川沿いに遊歩道があり、周辺には小さな喫茶店やギャラリー、書店や雑貨屋なども多く、散歩にはちょうどいいです。 東京の古書店でだいぶ前に手に入れた『北上川』(平凡社)という写真集に、1950年代の中津川らしき風景が載っていました(中津川は北上川の支流です)。さすがにビルも少なく、お馬さんが歩いてたりしてのどかです。たぶん「上の橋」のあたりから写したものではないでしょうか。 左上に見えるのは東北電

木々が語り掛けてくるような写真集: 畠山直哉『津波の木』

今年3月に出た畠山直哉氏の写真集『津波の木』をすぐに買いました。東日本大震災で津波に遭っても残った木々の姿を撮影したものです。岩手、宮城、福島の沿岸を巡ったそうです。 枯れたものもあれば、元気に茂っているものもある。枯れ木はまるで白骨のようにも見えます。 ページをめくるたびに、いろんな木の写真が現れる。立ち姿はさまざまです。1本だけで何かに抗うように屹立しているものもあれば、何本かが集まって身を寄せ合っているような木々もある。まるで夫婦のように見える2本の木もあります。