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条文学習のやり方ー司法試験・予備試験対策

第1 はじめに(問題の所在)


令和3年予備試験と令和4年司法試験に合格した者です。

司法試験の勉強を進めていく中で、「条文が大事!」「条文から考えろ!」「条文の素読をしろ!」と言ったアドバイスをよく耳にします。

しかし、思考停止の状態で抽象的な条文を読んでも、情報が右から左へ流れるだけであまり有効な対策にならないことが多いように思います。

実際、私自身も、受験生時代、条文や基本書を読んでも、情報が右から左に流れ、あまり理解できないまま時間だけが過ぎてしまうというような時期がありました。

そこで、今回は、条文を使ってどのような学習をしたらいいかについて私自身の経験を踏まえて紹介できればと思います。

第2 条文学習のやり方

1 条文が生まれる背景

そもそも、法律は、実社会で現実的に発生した問題を解決するために存在します。条文が生まれた背景には、必ず具体的な場面があるのです。

例えば、平成29年に民法は大幅な改正がされましたが、改正前には具体的な事件とそれを解決した判例があり、かかる判例が改正民法として条文化されました。

2 条文学習のやり方

つまり、条文が生まれる前段階として、具体的な事件が発生しているのです。そこで、条文を読む際には、条文が生まれるきっかけとなった具体的事件をイメージするようにしましょう。

例えば、民法95条の錯誤を例に見てみましょう。
まず、条文を読んで、要件に当てはまる事案がどのような場合かを考えます。

私だったら、

「私は、神戸市で新駅の開発計画があるという噂を聞き、将来、神戸市の新駅付近の土地が値上がりすると思って、新駅付近の土地を購入することにした。不動産業者に対しては、新駅の開発計画があり土地が値上がりするから購入したい旨伝えた。そして、私は不動産業者から土地を購入した。しかし、実際に神戸市では新駅の開発計画は存在しなかった。」

という事件をイメージします。

その上で、以下のように、条文の要件に事件を当てはめていきます。

「神戸市で新駅の開発計画がある」=「表意者が法律行為の基礎とした事情」(民法95条1項2号)

「実際に神戸市では新駅の開発計画は存在しなかった」=「その認識が真実に反する」

「私は新駅の開発があると思っていた」=「錯誤」

「不動産業者に対しては、新駅の開発計画があり土地が値上がりするから購入したい旨伝えた」=「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた」(同条2項)

(なお、「錯誤が重要であること」(同条1項柱書)と「取消しの意思表示」は省略しています。)

このようなプロセスを経て、ようやく条文を使う場面を具体的に想定することができ、司法試験や予備試験で類似の問題文を見た際に、条文に気づくきっかけになるのです。

もっとも、最初は、条文を見ても、具体的な場面をイメージするのは難しいと思います。そこで、旧司法試験や予備試験、司法試験、法科大学院入試等の問題を演習する中で、具体的な事件をストックしていきましょう。具体的な事件と条文の要件との行き来を繰り返し、事件のストックが貯まっていけば、そのうち条文を見て瞬時に問題文の内容を想起できるようになるはずです。

もう一つ注意するべきことは、司法試験はほとんどの場合が、条文が想定している具体的な場面と少し異なる内容になっているということです。受験業界では論点と言われたり、事案の特殊性と言われたりします。しかし、論点や特殊性にいきなり飛びつくべきではなく、まずは、条文が想定する具体的な場面を想定し、かかる原則とどの点がズレているか、あるいは異なっているかを分析することが重要です。

このように、条文の想定する具体的な場面をイメージできるようになるためには、同じ問題を何度も繰り返して解き、条文と具体的な事件を行き来する必要があります。私自身、受験生時代は、予備試験や旧司法試験の過去問を5回から6回ほど繰り返し解いていました。同じ問題を何度も解き掘り下げることで自然と身についていくのではないかと思います。

第3 終わりに


条文を見た際に、条文が想定する具体的な事件を想起することを意識するのが1つの条文学習だと考えます。

もっとも、この条文学習が唯一絶対的な答えではなく、他にも様々な勉強方法があることはご承知ください。

今回の記事で参考になりそうな点だけを自身の勉強法に取り入れていただければと思います。

最後まで見てくださりありがとうございます。

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