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法律答案から逆算した勉強法についてー司法試験・予備試験対策

1 はじめに

 はじめまして。

 今は司法修習生で、令和3年司法試験予備試験、令和4年司法試験に合格した者です。

 最近、受験生の司法試験対策をする機会が多く、司法試験や予備試験の勉強法について言語化する機会があったので、これを機に記事を書こうと思いました。

受験生の方やこれから司法試験の勉強を始めたい方は是非とも参考にしてみてください。

2 司法試験の目的



 結局のところ、司法試験の究極の目的は、法律実務家としてコミュニケーションができるようになる、すなわち、法律答案を作成できるようになるということに尽きます。
 そうだとすれば、司法試験対策も、法律答案を作成できるようになるのかといった観点から検討するべきです。


3 法律答案から逆算した勉強法



 ここからは、法律答案を作成する中で辿ることになる思考プロセスを明らかにしながら勉強法を検討していきます。

⑴  条文



 法律答案を作成するためには、まず、当該事案において問題となる条文を探せるようにならなければなりません。

 ここで問題となる条文というのは、当該事案を解決できる法律効果を持つ条文です。

 例えば、民法でいえば、X がお金を欲しているような事案においては、売買契約に基づく代金支払請求権(民法555条)や、債務不履行に基づく損害賠償請求権(民法415条1項)、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)など、特定の相手方に対して金銭の支払請求ができるという効果を持つ条文を探していくことになります。
 憲法でいえば、表現の自由(憲法21条)、職業選択の自由(憲法22条)のように、特定の法令が特定の自由を侵害する場合に違憲になる条文を探していくことになります。

⑵  要件


 問題となる条文を探すことができれば、次は、当該条文の持つ効果が発生するかを検討することになります。

 法律効果が発生するためには、当該条文が求めている要件を満たす必要があります。

 基本的には、要件は条文に網羅的に規定されていますが、なかには条文に規定されていない書かれざる要件というものも存在します。

 また、法律効果が発生するためには、要件を過不足なく満たしている必要がありますから、法律答案を作成する際にも、要件は過不足なく記載しておく必要があります。

 そこで、予備校テキストや基本書を読む際には、法律効果が規定されている条文は何法の何条にあるのか、当該条文の要件は何か、条文に明文で規定されている要件以外に書かれざる要件はあるのかといった観点に注目するのがいいかと思います。

 窃盗罪(刑法235条)を例にすると、窃盗罪の成立という法律効果が刑法235条に規定されているな、次に、窃盗罪の要件は、条文を読むと「他人の財物を窃取」することだな、ただ、予備校テキストや基本書を読むと、他にも、窃盗罪の故意(刑法38条1項本文)や不法領得の意思が要件になるのだな、といった形で基本書や予備校テキストを読み、知識を整理するといいです。
 そうすれば、「当該行為に、窃盗罪が成立するか。窃盗罪の構成要件は、①他人の財物を②窃取すること、③窃盗罪の故意、④不法領得の意思である。本件では~」というように答案の骨格を作れるようになるわけです。

 このように、基本書や予備校テキストを読む際にも、法律答案を書くために必要な知識は何かといった観点を意識しましょう。


⑶  当てはめ(と論点)


 答案に書かなくてはいけない要件が分かったとして、次にその要件に事実が当てはまるのか判断しなければなりません。

 もっとも、ここでの判断は感覚的なものになってしまいます。

 例えば、上記窃盗罪の例でいえば、友達が所持している時計というのは感覚的に「他人の財物」に当たるといえそうですし、この時計を無理やり力で奪ったとすれば「窃取」したといえそうです。
 他方で、ベンチに置き忘れた時計を数分後に勝手に持ち出した事案のように、一見すると「窃取」したといえるか明らかではない事案も存在します。こういった場合、つまり、要件と事実の距離が遠い場合、抽象的な「窃取」の意義を感覚的に当てはめられる限度にまで解釈していく必要があります。

 典型的な事案であれば、基本書や予備校テキストにも解釈の内容が記載されていると思います。
 「窃取」であれば、他人の占有する財物をその意思に反して自己または第三者の占有に移転することという意義に解釈されています。

 「窃取」の意義については判例や学説にそこまで対立はありませんが、場合によっては、定義や規範の意味について対立がある場合もあります。これが論点と呼ばれるものです。

 大抵の論点は、条文の文言が曖昧であるために、感覚的に条文の文言に事実を当てはめることができない場合に問題となります。
 そこで、基本書や予備校テキストを読む際には、当該論点がどのような過程で問題になるのか、つまり、問題の所在が何かを意識するといいです。

 また、判例の相場感というものに留意するとさらにいいです。判例が要件に事実を当てはめ、あるいは規範に事実を当てはめて肯定方向の結論を導いているのか、否定方向の結論を導いているのかにも注目すると、判例の相場感、つまり、裁判官の感覚に近づいていき、採点官にセンスが良いと思われるような妥当な結論を導けるようになってきます。考慮要素と呼ばれることもあります。


⑷  結論


 事実を当てはめ、全要件を充足すれば、法律効果が発生し、最終的な結論を出すことになります。


⑸  まとめ


ここで法律答案を書くために必要な知識をまとめると、①条文、②法律効果、③要件、⑤論点を抽出するために必要な問題の所在、④定義や規範(さらに、定義や規範を導くために必要な理由付けも含む)、⑤要件や定義、規範に事実を当てはめる際の考慮要素といったものが挙げられます。

 これらの知識は、予備校テキストや基本書を読むことで身につけていくのが基本ですが、個人的には、予備校の講師や合格者の書いた参考答案や再現答案を分析して身につけていくことを推奨します。というのも、このような答案は、ここまで説明してきた法律答案作成のプロセスに沿って分かりやすく書かれていることが多いからです。

4 終わりに

 いかがでしたか?

 予備校や大学の講義で知識を学ぶことも大事ですが、それと同じくらい、その知識をどのように使っていくかといった思考プロセスを意識することも重要です。

 今回は法律答案を作成するための思考プロセスに焦点を当てて勉強法を検討してみました。

 勉強の参考にしてみてください。

 それでは!

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