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依頼者の生の主張を法律構成する力-司法試験・予備試験対策

弁護士の仕事の出発点は、依頼者の法律相談です。
そこでは、まず依頼者の生の主張を法律構成する作業を行います。

例えば、いきなり人に殴られ、怪我をしたという相談であれば、弁護士の頭の中では、民法上は不法行為責任(民法709条)、刑法上は傷害罪(刑法204条)、職場のケースであれば、使用者責任(民法714条1項)、労働災害補償などの法律を想起します。
その上で、かかる法効果が発生するかについて、各要件を検討したり、証拠を検討したりするなどして調査をしていくことになります。

このような頭の使い方は、予備試験や司法試験においても変わりません。問題文を読んで、まずは依頼者の生の主張を法律に引き直すことになります。

しかし、実はこの部分が意外と難しいのです。というのも、生の主張を法律に引き直す作業は感覚的に行われていることが多いからです。感覚的に引き直すからこそ事案とズレた法律構成をしてしまうリスクが高いのです。私自身、予備試験論文式に落ちた年は、この法律構成に引き直す部分でまとはずれな法律構成をしてしまった結果、F答案を量産してしまいました。

このため、少しでも生の主張を法律構成に引き直す精度を高めていき、本番でズレた法律構成をしないようにしていく必要があります。


この点につき、私は以下の対策を行いました。

①過去問演習の反復継続

第1に、旧司法試験や予備試験、司法試験の過去問を何度も演習することです。最初は、ズレた法律構成になってしまいますが、何度も演習しているうちに、特定の事実から法律構成を抽出できるようになってくると思います。おそらく、要件に問題文の事実を当てはめる作業を行ったり来たりするうちに、無意識レベルで、問題文の事実と要件及びその効果(法律構成)が結びつき、法律構成が思いつくようになるのではないかと思います。これを言語化するとすれば、例えば上記のケースでは、人を殴り他人を怪我させたことが、「故意又は過失によって他人の権利利益を侵害した」という不法行為の要件を満たしていそうという判断がなされているのだと思います。

②初見の問題演習

第2に、模試や演習書で初見の問題を解く中で、生の主張から法律構成に引き直す練習をすることです。たとえ見たことがない問題であっても、条文を駆使してなんとか生の主張を法律構成に引き直せるようにするのです。というのも、意外にも、初めて見る事実と条文を結び付けるのは難しいのです。

私が合格した年の予備試験論文式の民法では、高級ワインの売買契約において、引渡し前に高級ワインが飲用に適さない程度に劣化してしまったという事案でしたが、私自身、高級ワインが飲用に適さない程度に劣化したというケースは初めてのことだったので、条文を見ながら今回のケースに合致する条文を探していました。そして、この事実から履行不能に基づく解除(民法542条1項1号)という条文を引き直す必要があるのですが、私は本番で民法542条1項5号に引き直して検討してしまいました(微妙にズレた法律構成です)。


上記を実践し、正確に生の主張を法律構成に引き直せるようになれば、他の受験生と大きく差をつけれるようになります。多くの受験生は、定義や規範などの知識をストックしていますが、それを必要な場面で使えないからです。正確に生の主張を法律構成に引き直さないと、ストックした知識の出番がこないのです。

是非とも問題演習をする際には、今回の観点を意識してみてください。

それでは!


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