2050年の川崎市に向けて 〜私たちが提案する脱炭素アクションアイデア〜
脱炭素社会に向けて、2050年二酸化炭素排出実質ゼロに取り組むことを表明した地方公共団体が増えつつある今、ここ川崎市も「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」を2022年3月に策定。そこで、2050年に40代、50代を迎える若者の皆さんに、今からでも取り組める脱炭素アクションアイデアを聞きました。シェアリングエコノミーやエコグッズについても伺った、川崎まりあさん(宮前区/慶應義塾大学大学院)、内山恵太さん(多摩区/専修大学)、小林ひろなさん(川崎区/玉川大学)の3名が再び登場です。
脱炭素アクションには”楽しくて嬉しい”エンタメ要素が必要
——脱炭素アクションに取り組んでいる人たちを見て、皆さんはどう感じますか?
川崎さん:脱炭素アクションって、簡単に言うと節電もそのひとつですよね。私の周りには節電を意識している子がわりと多いですし、私自身も太陽光発電などの自然エネルギーに目を向けるようにしているので、脱炭素アクション=意識が高いというイメージは、そこまでないかもしれません。
小林さん:私の場合は、積極的に脱炭素アクションに取り組んでいるわけではないので、企業や行政がそういったサービスを提供してくれるなら、これからも気付かないうちに私たちを脱炭素アクションへ誘導してほしいという気持ちが強いです。
内山さん:「脱炭素アクションに取り組んでいます!」と意識して大々的に言うのがいいのか、さりげなく提示するのがいいのか、それってめっちゃ難しい問題だと思うんですよ。今の社会の流れを見ると絶対に必要なことではあるけれど、どこまで声を大にして実行すべきなのか分からなくて。でも、高津区で『脱炭素アクションみぞのくち』という取り組みがスタートして、それがきっかけで脱炭素に興味を持つ人が増えることを考えると、分かりやすいアクションって大事なのかもと思いますね。
——完全に自分ごとにするのは、今の時点では難しいということでしょうか?
内山さん:そうかもしれません。脱炭素アクションと一口に言っても、再生可能エネルギー、資源循環の取り組み、シェアリングエコノミー、電気自動車・燃料電池自動車、食品ロスの削減と様々ですよね。脱炭素という言葉が先行してしまうと難しく感じてしまうのですが、前にお話した“脱炭素×シェアリングエコノミー”は自分たちにとって馴染み深いものなので、そこから積極的に始めてみるのも良いんじゃないかなと思います。
小林さん:シェアリングエコノミーみたいに「実はこれも脱炭素に関係しているんだよ」って自然に誘導してもらうほうが、私たち若者世代は抵抗がないですよね。
川崎さん:気付かないうちに脱炭素アクションを起こしていることもあると思うんです。例えば、宅配を置き配にすることも脱炭素アクションのひとつですし。
小林さん:置き配のように、お互いのささいな気配りがまずは必要で、小さなことから無理なく始めるのが良いのではないかな、と。あと、私の家では食材の廃棄がないように気を付けながら母親が料理をしてくれるのですが、食へのこだわりも強くて、オーガニックな食品や国産の食品を使ってご飯を作ってくれるんです。知らないうちに自分のなかに環境への配慮が根付いていることを考えると、家庭環境も大事だなと思いますね。
——環境への配慮については、学校での学び以外に、家庭環境も深く関係があるということですね。
川崎さん:そう思います。私が地産地消を意識するのも親の影響ですし。
小林さん:親や周りの友達も含め、誰かが環境に配慮した行動をとっている事例が身近にあるって大事ですよね。
内山さん:あとは”エンタメ要素”があると、より良いんじゃないかなと思います。楽しいと思える何かがないと続かないし、どんなアクションも“楽しくて嬉しい”こそだと思うので。ちょっと良いことがあるだけで、それをきっかけに人って動くじゃないですか。
川崎さん:確かに。私がタンブラーを使うのも、割引があるからというのが大きいですしね。嬉しい要素も絶対に必要だと思います。
小林さん:お得な上に気持ち的にも幸せになる、その充足感って絶対に大事。あとは、ひとりで行動するのではなく“みんなと一緒に”というのが私のなかでは結構重要です。
——スマホひとつで何でも解決する時代なので、人との繋がりは、そこまで重要ではないと思っていました。
小林さん:コロナ禍で人との関わりが遮断されてしまったことが大きいんですよ。高校の卒業式も大学の入学式もなくなってしまって、1年間大学に行けなかったんです。人との繋がりが希薄になったぶん、繋がりを求めている若者が増えているのではないかと思いますね。
川崎さん:私は心理学を学んでいるのですが、大学2〜3年生の後輩たちは“コロナにおけるひとり行動と鬱”といった研究テーマの子が多くて、そういったところからも、人との繋がりを必要としている子が多いんだなということを感じます。
内山さん:自分も大学に入学して1年間は楽しかったのですが、コロナが始まった2〜3年生の時はキツかったですね。その経験から、リアルでの繋がりって絶対に必要なんだと感じて、登戸で「ちょいマル」というマルシェを始めたんです。
小林さん:周りの人が楽しそうだから自分もちょっとやってみようという気持ちが脱炭素アクションに繋がることもありますよね。そういう意味では、イベントの開催は分かりやすくて良いと思いますし、さらに言うと、スタバのタンブラーみたいに、アクションを起こすことによって得られる特典があれば、なお嬉しいです。
印象的だったのが「楽しくて嬉しいことが大事」という言葉。それこそが若者にとって重要なキーワードなのだと感じました。脱炭素を無意識に意識することができている彼らが40代、50代を迎えた時、果たしてカーボンゼロは達成できているのでしょうか・・・。次世代へ良いバトンを渡せるように、彼らを上手く巻き込みながら、脱炭素社会に向けて無理なくアクションを起こしていきたいですね。
※参照元:川崎市「脱炭素戦略『かわさきカーボンゼロチャレンジ2050』策定」
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書いた人・佐藤季子
編集プロダクションを経て、音楽誌や演劇誌などエンタメ系の雑誌でライターとして活動。地元・川崎市では、麻生区の地域情報サイト「ロコっち新百合ヶ丘」、小中学生で結成された「麻生区SDGs推進隊(一般社団法人サステナブルマップ )」の運営メンバーとして活動中。