旅行記モンゴルへ 2・なにか燃やせ
キャンプ場に到着し、私たちはゲルへ案内された。
既に時刻は23時を過ぎていて、夕食に渡されたのは極めて薄味のしっかりした歯ごたえのあるハンバーガーだった。
あまりにも歯ごたえがありすぎて、素材の味を感じる前に私と友達は挫折してしまったけれど。
ゲルの中は華やかな装いで、アジア圏特有のデザインだった。
骨組みや家具は朱色やオレンジ色で花の模様が描かれていた。
そしてその真ん中に大きな薪ストーブが1つ。
キャンプ場の従業員のお姉さんが、たくさん薪を持ってきて
手早く火をつけてくれた。
暖かいを通り越して暑くなるくらい、薪ストーブの威力は凄まじい。
そしていよいよ深夜。初めてのモンゴルということもあって興奮は冷めなかったけれど、さすがに起きている訳にはいかない。
本当はもっと友達と語らいたかったけど、明日は馬に乗る予定ということもあって早めに休むことに。
そのまま朝まで……といければ良かったのだけれど、そんなにスムーズにはいかなかった。
深夜と明け方の狭間である3時過ぎ。
尋常ではない寒さに私は目を覚まして、ストーブを見て愕然とした。
薪ストーブの薪が全て燃え尽きていて、火が消えている。
しかも火をつけるマッチは、どこにも無い。
あるのは僅かな炭の火種だけ。
ここからどうにかして火を起こし、薪の代わりをみつけ朝まで暖を取らねばならければ寝る所ではない。
さて、まずは何を燃やすか。
いきなり旅行初日に放火魔へジョブチェンジしなければならないとは思わなかった。
生憎これまでキャンプとは無縁の人生。
文明の機器を使わない火の起こし方なんて知らなかった。
ただ1つ残念なことに、友達は寒さにめっぽう強かった。
おそらくマイナス10℃を超えていたが、彼女は全く起きない。
つまり孤独との戦いでもあった。
友達が爆睡してるのを後目に、兎にも角にも暖を取るため燃やすものを探し始める。
真っ先に見つけたのは、食べきれなかったハンバーガーの包み紙。これなら紙だし、炭火でも燃えるかもしれない。
早速入れてみるものの……
あっという間に燃え尽きた。なるほど、紙は燃えるのが速いのか。
なら数で勝負しよう。
ともかく紙ナプキンを入れまくり、ハンバーガーを入れ、日本からうっかり持ってきたレシートを入れた。
それからスーツケースについてた荷物整理のシールを入れ、紙袋を入れ、メモ帳をくべた。
少し火が強くなったのを確認してから、薪ストーブの入っていた入れ物に残る木の皮を入れた。さらに火が強くなる。
さらに増やして火種を強化し、外に出て落ちてた小枝をともかく拾う。
松ぼっくりから、小枝、果てはそこそこ大きな枝まで持ってきては入れた。何とかなりそうだった。
ただこの時点で既に明け方を迎えており、友達はまだ寝ている。
いきなりの洗礼に、私は既に半泣きだった。