(365)[安重根 死刑執行状況 報告 件]②
(365)[安重根 死刑執行状況 報告 件]① の続きです。
[要旨]
①では本文書に「別紙一」として添付されていた統監府通訳官の園木末喜による「死刑執行報告書」を紹介した。②では安重根が近親者らに宛てた最期の書簡のうち、弟たちに宛てた「別紙二」と、母親の趙マリアに宛てた「別紙三」の写しを紹介する。これらの書簡は関東都督府法院の用箋に筆写されたものであり、吏員が原文を日本語に翻訳してペン字で書き写したものと推定される。現代日本語訳では、適宜、原史料にはない改行を入れた。
別紙二 【定根·恭根ニ與フルノ書 兄書】
(現代日本語訳)
(私がお前たちに)送付する6通の信書をそれぞれの宛先に転送してくれ。いつの日にか天国(永遠の福地)で喜握*することを期待して、ここに最期の言葉を伝えるだけにする。 * 喜握=再会することか?
(ウェブサイト公開翻刻文)
送付スル所ノ信書六通ハ各其ノ本處ニ傳送スヘシ焉更ニ後日永遠ノ福地ニ於テ喜握セムコトヲ期待シ茲ニ終言スル耳
(ウェブサイト公開韓国語訳)
송부하는 바의 서신 6통은 각자의 本處에 전송할 것이며, 다시 후일에 영원한 福地에서 기쁘게 손을 마주잡을 것을 기대하며 이에 말을 끝낼 따름입니다.
別紙三 【母主前上書 子 多默* 自】
* 多默は安重根の洗礼名「トーマ」のこと
(現代日本語訳)
キリストを賛美する不肖の私は、あえて一言を母主の前に申し上げます。
伏して希わくば、私の甚だしい不孝と、定省[昏定晨省=子の親に対する敬愛の心]を欠いたことをお許しください。
この露にも似た虚しい世において、六情[喜怒哀楽愛悪のこと]にお勝(た)えになり、この不肖の子のことを余りお思いにならず、後日に霊の源である天堂でお目にかかれることを願い祈ります。この現世のことはみな、主の命にかかるところですから、お心を安んじられることを伏して望むだけです。
プント[安重根の長男]のことは、将来は神父にさせることを望みますので、(そのことを)後々もお忘れにならず、天主に特に捧げられますように教養を身につけさせるようにしてください。
以上は、その(私が言い遺したいことの)大要で、ほかにも申し伺いたいことはたくさんありますが、いつか後日に天堂で嬉しくお目にかかり、縷々申し上げましょう。
一統上下の皆様には(私の)安否も届きかねるでしょうから、必ず必ず、主教[カトリック]を専心して信仰し、後日に天堂で嬉しくお目にかかりましょうとお伝えください。この世のことは、(弟の)定根と恭根にお聞かせになるよう、必ず必ず、お心配りはお避けになって、お心を安らかにお過ごしになってください。
(ウェブサイト公開翻刻文)
耶蘇ヲ讃美ス 不肖ナル子ハ敢テ一言ヲ母主前ニ上ラントス伏テ希クハ子ノ莫甚ナル不孝ト定省ヲ闕キタルノ罪トヲ許シ給ヘカシ此ノ露ニモ似タル虛シキ世ニ於テ六情ニ勝ヘラレ此ノ不肖ナル子ヲ餘リニ思ヒ給ハテ後日靈源ナル天堂ニ於テ相見ンコトヲ願ヒ且ツ祈禱ス此ノ現世ノ事タルヤ皆主命ニ係ル所ナレハ御心ヲ安ンシ給ハンコトヲ千萬伏望スルノミ「プント」 ハ將來神父タラシメランコトヲ望ヲ以テ後日ニ至ルモ忘レ給ハテ天主ニ特ニ捧クヘク敎養シ給ヘカシ以上ハ其ノ大要ニシテ尙申伺ヒタキ言ハ許多アルモ何レ後日天堂ニ於テ嬉シク御目モシノ上縷々申上ヘシ一統上下ノ皆樣ニハ問安モ届キ兼ヌルヲ以テ必ス々々主敎ヲ專心信仰シ後日天堂ニ於テ嬉シク相見ンコトヲ傳ヘ給ヘカシ此ノ世ノ事ハ定根並ニ恭根ニ就テ聞カセ給フヘク必ス々々配意ヲ厭ハセ給ヒテ御心安カニ過コサセ給ヘカシ
(ウェブサイト公開韓国語訳)
예수를 찬미합니다. 불초한 소자는 굳이 한 마디 말씀을 어머니께 올리고자 합니다. 엎드려 바라옵건대 소자의 막심한 불효와 아침저녁으로 부모님의 안부를 물어서 살피지 못한 죄를 용서하옵소서. 이 이슬과도 같은 덧없는 세상에서 六情을 이기지 못해 이 불초한 소자를 너무나도 생각해 주셨으니 후일 靈源한 천당에서 서로 만나 뵙기를 바라며 또한 기도드립니다. 이 현세의 일이야말로 모두 主의 命에 관계되는 바이므로 마음을 편안하게 가져주실 것을 千萬伏望할 따름입니다. 芬道(금년에 6세 되는 장남의 이름)는 장래 신부가 되게 하시기를 바라기 때문에 후일에 이르더라도 잊어주십시오. 天主에게 특별히 바치기 위해 교양시켜 주시옵소서. 이상은 그 대요로 더욱 말씀드리고 싶은 말은 허다하지만 아무래도 후일 천당에서 기쁘게 만나 뵌 다음 누누이 말씀 올리겠나이다. 하나로 합쳐진 상하 여러분에게는 문안도 드릴 수 없기 때문에 반드시 天主의 가르침을 전심으로 신앙해 후일 천당에서 기쁘게 서로 만날 것을 전해 주옵소서. 이 세상의 일은 定根 및 恭根에게 타일러 들려주시고 반드시 배려를 아끼지 말아 주시며 마음 편하시게 지내주시옵소서.