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第62回 24時間換気は意味あるのか?

東京に戻ったあとも、いくつかの疑問が残った。なぜ洗面室に24時間換気用換気扇があるのか?なぜスイッチがなかったのか?じっくり、24時間換気について調べてみることにした。

もともと日本の家屋は隙間が多く、隙間風などで自然に空気が出入りしていた。しかし戦後、マンションの普及とともに隙間は減り密閉性は高まった。それと同時に、化学系の新建材も増えていく。そして、新建材に大量に含まれていたホルムアルデヒドなどの揮発性有害化学物質による、「シックハウス症候群(めまいや頭痛などを発症する)」が大きな社会問題となった。そのためシックハウス対策として2003年7月に建築基準法が改正され、住宅への24時間換気の設置が義務付けられた。(建築基準法28条の2)。そこには、1時間で部屋全体の空気の半分以上が入れ換わっていることが必要と定めらている。24時間換気だから、換気扇は24時間365日回り続けなければならない。

また、換気とは別に、建築材料に含まれるホルムアルデヒド発散速度を4等級で示し、その等級に応じて使用制限がかかった。0.005mg/㎡h以下のF☆☆☆☆が最高ランクであり、それには使用制限はかからない。ちなみに、今回の住宅は、F☆☆☆☆の建材のみ使用している。

戸建住宅の密閉性能も高まっているため、この規制にはマンションと戸建の区別はない。

僕はこれまで、マンションならともかく木造の戸建住宅には24時間換気はさほど必要だと思っていなかった。逆に24時間換気によって、冷暖房の効率が落ち好ましくないと思っていたほどだ。

木造戸建住宅も密閉性が高いとしても、なぜ24時間換気が必要なのか?調べてみると、有害物質の排出以外にも以下のような効果が期待できるという。

1)建物の呼吸
密閉した建物に長時間にわたって複数の人間が居れば、当然二酸化炭素が増え酸素が減っていく。室内の人間の健康にとっていいはずはなく、建物自体が二酸化炭素を吐き出し(理想的には二酸化炭素濃度700ppm以下が望ましい)、酸素を吸入するという呼吸を常時すべきで、それを実現する。

2)結露対策
人間が暮らしていれば、調理したりお風呂に入ったりすることで、必然的に湿度は上昇する。人間も湿気を発している。冬季に内外の温度差が高まり、窓の内側周辺の湿気が外気で冷やされて結露が発生してしまう。結露は木材を腐らせたりカビを発生させ病気の原因にもなる。

結露を発生させないためには、過度に内外の温度差が高まらないようにすることと、湿気が溜まらないようする必要がある。そのためには、常時室内に空気の流れをつくっておくとよい。

3)生活臭やハウスダストの予防
空気の循環が悪いと、どうしてもその家独特の生活臭が発生してしまう。また、換気が悪ければハウスダストも室内に多く溜まってしまう。それらを防ぐ。

4)外気からの汚染物質からの遮断
窓を常に開けておけば上記の問題の多くは軽減できるだろう。しかし、そうすると外気に存在する、花粉・PM2.5・黄砂などの汚染物質も室内に流入してしまう。

ましてや、冷暖房効果を考慮すれば、窓を長時間開けておくことは難しい。当然ながら、網戸で遮断することはできない。現代において恐れるべきは、蚊よりも汚染物質だ。24時間換気で設置される吸気口には、高性能のフィルターを付けることになっている。このフィルターによって、そうした汚染物質をある程度遮断しながら、きれいな空気を室内に取り入れることができる。


室内有害物質除去以外にも、24時間換気にはこれだけの効果がある。気になるのは電気代だが、条件によって異なるものの、月100円程度のようだ。

ここまでの話を整理しておこう。おもに以下3つの目的達成するのに、現在最適な方法と考えられているのが計画的(常時)換気システムだ。

目的1)冷暖房効率の向上を目指す
 (断熱性向上+)密閉性アップ →換気必要性高まる →窓開け換気では不確実+冷暖房効率が大幅に低下してしまうリスク高い →計画的換気(=常時換気)の必要性アップ (計画的換気により冷暖房効率は低下するものの窓開けよりも影響は少ない)
              
目的2)室内空気の質を高める
 室内&外部汚染物質リスク高まる →隙間風や窓開閉では管理不能 →計画的換気の必要性アップ (密閉性が高ければ、小さな吸気口と小さな換気扇付排気口だけで、空気の出入りの流れを効果的につくることができる。ストローで簡単にジュースを吸い上げられるのは、ストロー内が密閉されているから。それと同じ理屈)

目的3)結露を防ぐ
 機密性アップ →結露が発生しやすい →室内空気の常時循環必要性アップ →計画的換気の必要性アップ

もちろんこうした常時(24時間)換気とは別に、局所換気も必要だ。局所換気とは、コンロの上の換気扇、トイレ内や風呂内換気扇といった、特定のタイミングで強力な換気が求められる位置に設置される。常時換気と局所換気は全く異なる目的なのだ。

さて、ここまでの知識を得た上で、図面を確認してみた。

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規則では建物の端から外気を取り込み、もう片方の端から外部へ排気する必要がある。上図面右上の「in」と書かれたところと寝室1左下の→マークに換気口(吸気口)があり、そこから自然吸気する。

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つまり洗面室内の換気扇は、単なる洗面室用の換気扇(局所換気)ではなく、建物全体の空気を24時間排出するための機械排気用換気扇なのである。だから、洗面室と寝室1、それぞれの扉の下には以下写真のように、約1cmのスペースが開けられ、扉を閉めてもそこから空気が通るようになっている。

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だから、もともとスイッチがなかったのは正しい。とはいえ、スイッチがあってはいけないとも言えない。栗原さんが、「設計の立場からは、24時間回し続けて欲しいんですけど・・」と言った意味がよくわかった。

僕は、24時間換気の重要性を初めて理解し、プッシュ式吸気口(レジスターというらしい)を常に開けておき、また排気用換気扇も24時間回しておこうと思った。僕には、知っておくべきなのに知らないことが、まだまだたくさんあると再認識した。

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