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ゴジラ誕生70周年で考える怪獣と言うキャラクター

 2024年11月3日は1954年(昭和29年)に東宝の特撮怪獣映画「ゴジラ」の上映が始まった日だ。今年はその日から70年周年の節目を迎えている。
 現在の最新作である山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」が今年の米アカデミー賞の視覚効果賞をアジアの作品で初めて受賞するまでに「ゴジラ」は日本を代表する作品となっている。
 ゴジラは怪獣と言うキャラクターを確立した。東宝はゴジラ以外にラドンやキングギドラなど新たな怪獣を登場させ、大映はガメラを主役にしたシリーズを作り、円谷プロは怪獣と戦うヒーローであるウルトラマンのシリーズを作った。
 日本のカルチャーに「怪獣」が定着した。

 そして現在、漫画で近年では怪獣を題材にした新作としてアニメ化もされた「怪獣8号」(著:松本直也)や怪獣と戦う自衛官が主人公の「怪獣自衛隊」(著:井上淳哉)に、怪獣と怪獣の出現を忘れまいとする少女を主軸に描いた「大怪獣ゲァーチマ」(著:KENT)が連載作品として続いている。
 また最近では戦国時代の合戦に怪獣が乱入する「戦国怪獣記アイゴラ」(著:志名坂高次 ・星野泰視 ・ 丸山浩)の単行本が発売されている。
 どの作品も怪獣は大きな敵として描かれ、主人公は大きな敵である怪獣と戦う、または怪獣と共闘して別の怪獣と戦うと言うストーリーになっている。
 ゴジラ誕生から70年を過ぎても怪獣は強大な敵として描かれている。これは読者の側にも強大な敵と言う認識が共有されているからだ。
 ある意味で近年のサメ映画のようなアイコン化しているようにも感じられるが、今でも怪獣は作品のメインとして立てる存在感を持っている証であろう。

 メインになれる存在としての怪獣、「シン・ゴジラ」も「ゴジラ-1.0」も人類に対して容赦ない鬼として描かれながらも愛されるキャラクターでもある。これはホラー映画におけるジェイソンやゾンビに近いものがある。
 鬼や悪魔として描かれ恐れられながらも主人公に倒される敵役を引き受ける器の大きいキャラクターなのだ。

 またそれは第1作目「ゴジラ」のラストで倒されたゴジラに思いを馳せた山根博士(演:志村喬)が「人類が核実験を続ければ、きっと第二・第三のゴジラが現れるだろう」と締めくくる台詞がある。
 「ゴジラ-1.0」でも倒したゴジラへ静かに皆が敬礼を送るシーンがある。ゴジラを倒して「やったー!」「万歳!」と喜ぶのではなく、慈しむ様子が描かれている。作中のゴジラと戦う登場人物たちはゴジラによって親類や友人を失っていると思われるが、復讐を果たして喜ぶ訳では無い。
 この敵を倒して終わりにしない演出が怪獣のキャラクター性をただの悪役に留まらせない存在感を持たせている。その死にも意味を持たせるから怪獣は現在も生き続けている。

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