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アニメ「SHIROBAKO」に見る原作者と映像化の苦悩

 漫画「セクシー田中さん」のテレビドラマでの製作について話題となり、最悪の出来事になる騒動となってしまいました。
 X(旧Twitter)では原作者と映像化するスタッフとの問題やテレビ局や出版社についても色んなコメントが業界を知る人からも出ています。
 果たして作品の裏側でどんな事が原作者と映像化作品のスタッフで起きているのか?
 それを垣間見える作品があります。
 アニメ「SHIROBAKO」です。
 「武蔵野アニメーション」に入社した宮守あおいを主人公に仕事をテーマとしたアニメ作品です。
 その「SHIROBAKO」で原作者との問題が起きる展開がります。
  ※今回は「SHIROBAKO」の第15話と第23話のネタバレも含みます。


キャラクターデザイン問題

「SIROBAKO」内で武蔵野アニメーションが製作する「第3飛行少女隊」



 「SIROBAKO」の後半で武蔵野アニメーションは野亀武蔵原作の漫画「第三飛行少女隊」をアニメ化するストーリーになります。
 木下監督をはじめ、スタッフは静岡県浜松市にある航空自衛隊の広報施設であるエアパークに行き「第三飛行少女隊」のメカである戦闘機について取材するまで熱意を持って製作に臨みます。
 しかし、第16話で主人公のアリアのキャラクターデザインについて野亀からリテイクが出てしまいます。
 第三飛行少女隊でキャラクターデザインの担当をする井口裕未は、アリアのデザインを直しますが野亀からのOKが出ません。

キャラクターデザイン担当の井口


 この野亀からのメッセージは漫画「第三飛行少女隊」を出版している夜鷹書房の茶沢を経て武蔵野アニメーションに届きます。
 茶沢は野亀の担当者でもあり、「野亀先生はGOD(神)だ」として野亀の言うことを絶対であると武蔵野アニメーションへ押し通します。
 何度も修正しても野亀からNGが出てリテイクとなる。
 武蔵野アニメーションから茶沢へリテイクの方向性を聞こうとするものの、茶沢は野亀の言う事が絶対だと取り合わない。
 とうとう井口は行き詰まってしまいます。
 原作者のOKが貰えない事と、間に入っている出版社との意志疎通が出来ず苦悩する武蔵野アニメーション
 この原作者によるOKが出ないが為に製作は進みません。
 新たに井口が直したデザインで、何としても原作者のOKを貰うべく、プロデューサーは電話で適当にしか対応しない茶沢のところへ直に行き、ようやく原作者のOKを貰います。

最終回にNG!?

夜鷹書房で野亀を担当している茶沢



 第23話で野亀からアニメ最終回のストーリーに対してNGが出てしまいます。
 原作の「第三飛行少女隊」はまだ連載中で、最新のストーリーでは主人公のアリアは仲間の死にショックを受けて戦闘機に乗らないと言ってしまう展開になっています。
 そこでアニメ版を終わらせるのは良い締め方ではないとして、オリジナルストーリーでの最終回を作る事に決めていた武蔵野アニメーションでしたが、原作者はそれを認めませんでした。
 プロデューサーは夜鷹書房へ行き、茶沢や編集長へオリジナルストーリーでの製作を認めて欲しいと頼み込むものの、相変わらず「GODの言う事は絶対」と言い取り合わない。
 それでも原作に沿ったバッドエンドでの最終回にする事に抵抗がある木下監督は、野亀へメールを送り直に話し合いを求めます。
 野亀は木下の求めに応じ夜鷹書房で会います。

「第3飛行少女隊」原作者の野亀(右)とアニメ版の監督である木下(左)


 ここで原作通りを求める野亀に、木下はアニメでのオリジナルストーリーについて語り、野亀は自らも意見を出して意気投合、野亀はアニメのオリジナルストーリーを許可します。
 また野亀と武蔵野アニメーションとのコミュニケーションが上手く出来ていないのが間に入る茶沢が適当にしていたせいだとも露見します。
 こうして武蔵野アニメーションは「第三飛行少女隊」を作り上げる事ができました。
 

SHIROBAKOで書かれた原作者との問題



 「第三飛行少女隊」の製作を巡り原作者とアニメ製作側の問題は、夜鷹書房の編集である茶沢による不真面目な仕事ぶりのせいでした。
 茶沢が木下監督や武蔵野アニメーションの意見を野亀に伝えていれば、良かったものの
 茶沢の適当さで野亀のNGが具体的にどうなのか分からず、武蔵野アニメーションの井口が手探りでOKを貰えるように頑張る事態になってしまいます。
 作中ではキャラデザ問題でアニメ製作が1ヶ月止まってしまいます。
 困った武蔵野アニメーションの中では、原作者のOKを待たずに進めて、後で原作者のOKしたデザインで作画監督修正をするべきとの意見も出ます。
 最終回問題だと、最終回そのものをイチから作り直すようなピンチになってしまいます。
 原作者の作品に対する情熱と愛情は大きく、異なる形になってしまう事に耐えられないのは理解できます。
 しかし、その一方で限られた時間に追われる製作側の苦しさもあります。
 コミュニケーションと同意が「SHIROBAKO」で書かれた原作者との問題でした。
 原作者と制作側で何が起きているかの一例を見るには良い作品です。
 (SHIROBAKOは作品そのものがお勧めです)

 しかし、原作者と製作側の問題は色々とあり、関わる人の多さが場合によって問題を複雑化させます。
 「SHIROBAKO」では、原作者が納得する良い展開になりましたが、現実はなかなかそうは行きません。
 一例を挙げると、1969年版のアニメ「ムーミン」が原作者のトーベ・ヤンソン氏から不評であった為に現在では再放送もソフト化もされていないと言われています。
 原作者と映像化する制作側の問題は、今回の「セクシー田中さん」問題のような悲劇や、1969年版「ムーミン」のように作品そのものが封印されてしまう結末にもなってしまう。
 創作の情熱と愛情に、製作する側の考えや予算などが絡み合うから起きるこの問題は今後も起きるでしょう。
 その問題で「セクシー田中さん」で起きたような悲劇が繰り返されない事を願うばかりです。
 

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