現実に近い非現実を見せた映画「シビル・ウォー~アメリカ最後の日~」
10月5日にTジョイ東広島で映画「シビル・ウォー~アメリカ最後の日~」を見ました。
主役がジャーナリストであるものの、ミリオタな自分としては満足した内容でしたね。ジャーナリストだからこそ、移動して色んな場面を見る行動が出来る。だから限られた映画の時間で現代アメリカの内戦状態を見せられた良い作品になっていた。
架空戦記としての良さと、現実に近い非現実を見せた良い作品でしたね。
(内戦から離れた姿勢で暮す街がしっかり守られている描写やクリスマスソングとシャボン玉が流れる中での狙撃手同士の戦いのカオスな演出が結構好き)
見易い作品
この作品は現代アメリカでの合衆国政府と合衆国政府に反発して分離した西部勢力との内戦状態が舞台だ。
主役はベテランの記者であるリーに、駆け出しのカメラマンであるジェシーだ。リーは14カ月も取材を受けていない合衆国大統領へのインタビューをしようとワシントンD.Cに記者仲間であるジョエルや古参記者であるサミーと共に向かう。ジェシーはジョエルに頼み込んでリーに同行する。
ニューヨークからワシントンD.Cまでの、危険を極力避ける為に西から大回りをしての道中は内戦状態のアメリカをリーやジェシーを通して描かれるロードムービーとして演出されている。
何より見易くなっているのは、リーやジェシー、ジョエル・サミーの4人の思想が強くない事だろう。主張するのはあくまでジャーナリストやカメラマンとしての立ち振る舞いや危険地帯での行動についてだ。
だからこそ、リーもジェシーも内戦状態のアメリカを映すカメラになれるのだ。
ミリオタとして見て
内戦状態の現代アメリカと聞いてミリオタとして興味を持つ内容だ。
正直ジャーナリストが主役と聞いて戦闘シーンや軍隊のシーンは期待していなかった。あくまで雰囲気の添え物かなと思っていました。
これが見てみると結構よく出来ている。
民兵による室内戦闘、シャーロッツビルにある西部勢力のキャンプ、ワシントンD.Cでの戦いどれもミリオタとして見応えがある。
民兵の戦いは慣れていないような様子での戦いで描かれているし、シャーロッツビルのキャンプは場面の入りで小型ヘリとハンヴィーが並走する場面が川の背景と合わせて見栄えがあるし、CH-47チヌーク輸送ヘリがよく出て個人的に良し。
何よりも終盤のワシントンD.Cの戦いはたまらない。
政府軍が降伏して僅かな残党とはいえ、対空砲火を打上げ近づく西部勢力軍に狙撃や携帯対戦車火器で激しく応戦するワシントンの防衛隊
西部勢力はAH-64戦闘ヘリで容赦なく機関砲やミサイルを撃ち込み、M1戦車が障害物を踏み越え敵が陣取る見張り台へ砲撃を叩き込む。
火力で圧倒しながらも、敵の銃撃を避けながら進む歩兵達の緊張感も伝わるような演出は戦争映画として素晴らしい場面だ。この戦闘場面だけでもミリオタ的には映画館で見る価値がある。
現在の先に描かれる内戦
作中で合衆国から離脱するのはカルフォルニア州とテキサス州だ。この2つの州を中心に西部勢力が形成される。更にフロリダ同盟やパンフレットに載っている地図では「NEW PEOPLE`S ARMY」(日本語訳だと新人民軍か?)と言う勢力がアメリカ北西部に存在するようだ。また作中では毛沢東主義の勢力もあるとも語られなかなかの混沌ぶりだ。
史実では1861年から1865年の南北戦争では13の州が合衆国から離脱し、南北に分かれての内戦となった。アメリカ内戦は過去にはあった。
現在のアメリカは多様な考えによる意見の対立が起きている。その対立が大きな事件となったのが2021年のアメリカ議会襲撃事件だ。
トランプ支持者など800人がワシントンD.Cの国会議事堂へ押しかけ侵入した。意見を訴えるデモや反対意見に対する攻撃に留まらず、国や政府へも攻撃する一線を越えてしまった。
NHKのEテレでは「米議会襲撃が再び起きたら~シミュレーション緊迫の6時間~」を9月に放送していた。番組では大統領をはじめ閣僚や統合参謀本部議長などの役に政治家や軍人がなりきって架空の議事堂襲撃事件に対応すると言う内容
政府役に対して議事堂を襲撃する過激派役も居る。過激派側はフェイクの動画や画像も使い扇動して事態を悪化させる。この番組の中で驚いたのは米軍内で過激思想を持つ者の存在が示唆されている点だろう。また実際の過激派にしても民兵集団を組織して武装革命を目指すと公言している動画も流れていた。
シュミレーションでは過激派に同調する兵士が基地を占拠し、過激派側に立つ将校が兵士に賛同を呼びかけると言う深刻な状況も展開された。
シュミレーションの結末は連邦軍が治安維持に出動できる反乱罪を適用せず、州兵と警察で事態を鎮静化させた。
この番組と映画「シビル・ウォー」を見ていると、思想に留まらず暴力による分離や分断が起き内戦になるのではないかと思ってしまう。
そうした危機にならなようにアメリカではFBIなど治安当局が日々努力をしている筈だ。悲劇となる動乱はフィクションにだけ留めて欲しい。