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【ネタバレあり】映画「ブルーサーマル」感想
今回は映画「ブルーサーマル」を見ての私の感想になります。
ネタバレで感想を書いて行きますので、まだ見ていない方は映画を見た後でこの記事を読む事をお勧めします。
「この世界の片隅に」を思い出す
本作の主人公である都留たまき(作中、つるたまと呼ばれている)長崎県出身者なので、九州弁をしゃべるキャラクターである。
段々と見ているにつれて、たまきが「この世界の片隅に」のすずさんに見えて来る。
それは何の自覚もないまま、流されるように新しい環境に置かれてしまった姿が似ている様に思えたからだ。
すずさんはよく分からないまま、広島市から呉市へ嫁入りに行きます。そこから嫁いだ北條家で慣れない家事に苦戦し、義理の姉である径子に厳しく当たられて凹んだりします。
そこから北條家に馴染み、径子とも打ち解けるようになり、すずさんは北條家に自分の居場所ができます。
これと「ブルーサーマル」のたまきも同じだと思えた。
グライダーを傷つけた弁償にと、よく分からないまま入った航空部
雑用係から倉持によって空中での才能を見出され、グライダーの操縦士になるたまき
そこから選手としての才覚も開花して終盤の全国大会では頼られる存在になる。
才能を認められた事で青凪大学航空部に居場所が出来たたまき
また、大きな溝があって疎遠となっていた姉の矢野ちづるとの和解も径子とすずの関係を思い出させたり
居場所と和解、この部分においてたまきとすずの置かれた状況が似ていると思えたのです。
主人公が魅力的
主人公のたまきは最初は航空部のグライダー破損と雑用係、入部したてて右も左も分からないで空知大介と口喧嘩はするものの、抑えた様子になっています。
それがソロでグライダーに乗れるようになり、新人戦で活躍してから様子が変わります。
自信を持った事と、ライバル鳥羽楓との出会いで都留たまき本来の性格が解放された感がありました。
元気で人懐っこい性格が出て見ているのが楽しい主人公に中盤から変わった。
新人戦の表彰に出て来ない鳥羽に「おもしろくない」と煽る様に言うたまきが面白かった。
この中盤からたまきは倉持や空知のアシスト無しに自立し、青凪の頼れる選手のような立ち位置になるのが見ていて気持ち良かったですね。
倉持・空知の存在
終盤の展開、倉持がドイツへ行き、青凪のエースが欠けてしまう。更にドイツで倉持が事故を起こした事を知った南葉良平が不調になってしまい、たまきが青凪が優勝するかどうか決まる飛行の順番を担当する事になります。
たまきが青凪の勝敗を背負う展開は燃えるし、たまきも自信を持って勝負に向かう。それがまた見ていて気持ちいい。
ラストはドイツで行方知れずになった倉持を探しに行き、日本から持ち込んだグライダーでたまきが飛ぶ。それによって倉持は見つかり、たまきに空を飛ぶ道へ導いた倉持を救済したと言う終わり方は綺麗にまとまったと思えます。
たまきが空知と倉持どちらに恋心を抱いているのか?と言う疑問は見ている側にあると思います。しかし、限られた100分でそこまで踏み込むのは不可能だと思えますし、空知と倉持はたまきが航空部のエースになるまでアシストをした良き先輩ポジションで留まった描写や演出になっているように見えました。
たまきの人間関係における問題は姉のちづるとの再開もあるので、倉持と空知の三角関係も描くとたまきが常に不安定な精神状態になってしまう。
その上でソロフライトから新人戦の活躍、全国大会での大役を受ける姿に矛盾が出てしまう。1年生部員同士で「どうなっているの?」とたまきが尋ねられるぐらいで良かったと思います。
足りないのは用意された尺
映画「ブルーサーマル」は原作5巻を100分の尺でまとめたとの事
そのせいか駆け足気味に見える展開にはなっていましたね。
もう少し、グライダーで飛ぶシーンが欲しいなと思えたし。たまきや同じ1年部員達との場面も見たかった。
100分じゃ足りない。もっと見たかった、青凪航空部の姿をもっと!と言うのが本作の不満な点だろう。
パンフレットで橘監督は50分を編集でカットしているとありました。ディレクターズカット版とか完全版とかでカットされた50分を追加編集したのを公開して欲しいなあと思うのです。
この100分と言う限られた時間で駆け足の展開、よくまとめられたと思います。作品の焦点をあくまで都留たまきが航空部のエースになると言う意味ではよくまとまっていました。